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【早大マニフェスト研究所連載/マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ】

第6回 未成年模擬選挙で「地方政府」を担う次世代を育てる ~学生団体「選挙へGO!!」の取り組み~ (2013/9/12 早大マニフェスト研究所)

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5月からスタートした早稲田大学マニフェスト研究所による新コラム「マニフェストで実現する『地方政府』のカタチ」の第6回です。地方行政、地方自治のあり方を“マニフェスト”という切り口で見ていきます。掲載は、毎月第2木曜日。月イチ連載です。今回は、『未成年模擬選挙で「地方政府」を担う次世代を育てる ~学生団体「選挙へGO!!」の取り組み~』をお届けします。

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選挙の低投票率の問題

 7月に実施された参院選の選挙区での投票率の全国平均は52.61%、前回2010年の57.92%を5.31ポイント下回り、戦後3番目の低さを記録しました。昨年の12月に行われた衆院選の小選挙区での投票率も59.32%と戦後最低の記録を更新しました。また、8月に実施された横浜市長選挙の投票率は、初めて30%を割り込み、29.05%と過去最低になりました。当選した林文子市長は全体の8割の票を獲得したものの、有権者全体の支持は23%と、これが横浜市民の総意といえるのか疑問も残ります。

 マニフェストは、政策中心の選挙を目指す運動であり、マニフェスト、政策で投票する賢明な有権者を増やす運動です。自立した真の『地方政府』を実現する上でも、政治や行政に主体的に関わる市民を増やしていくことは重要です。選挙の低投票率、市民の政治離れは大きな問題です。

マニフェスト大賞の受賞を三村申吾知事に報告する「選挙へGO!!」のメンバー

マニフェスト大賞の受賞を三村申吾知事に報告する「選挙へGO!!」のメンバー

 こうした選挙の投票率、特に若者の低投票率の問題の解決、積極的な政治参加を促すために、青森県内を中心に活動しているのが、学生団体「選挙へGO!!」(代表・福田貴宏 青森中央学院大学4年 以下「選挙へGO!!」)です。「選挙へGO!!」は、2011年6月に結成、青森県内8大学25人で構成されています。これまで、政治家と学生による「居酒屋トーク」、居酒屋トークを踏まえた弘前市長への政策提言、弘前市の成人式における模擬投票、学生による議会傍聴キャンペーン「議会ヘGO!!」、インターネット上での政治家動画サイト「政治家tube」などの事業を展開し、第7回マニフェスト大賞市民部門優秀マニフェスト推進賞を受賞しています。今回は、賢明な有権者を増やすために、「選挙へGO!!」が実践している未成年模擬選挙の活動について考えてみたいと思います。

未成年模擬選挙の必要性

 未成年模擬選挙の必要性に関しては、政府の文章でも触れられています。文部科学省、中央教育審議会の「第2期教育振興基本計画について(答申)」(2013年4月)では、「未来の有権者たる子どもたちに、主権者として国や社会の問題を自分の問題として意識し、自ら考え、自ら判断し、行動する力を育成することが求められる」として、その実践例として、学校現場での地域の選挙管理委員会と連携した模擬投票などが挙げられています。総務省、「常時啓発事業ありかた等研究会」の最終報告書(2011年12月)でも、若い有権者の政治意識の向上、将来の有権者の意識の醸成のため、「実際の選挙について児童生徒が模擬投票を行う未成年模擬選挙の普及、社会を観察し、課題解決に向けて発言し行動する訓練としての子ども議会の普及」の必要性などが訴えられています。

 全国の教員などのメンバーでつくる「未成年模擬選挙ネットワーク」は、約10年前から、国政選挙などの実際の選挙において、未成年による模擬選挙の実施を呼び掛けてきました。今回の参院選においては、全国の小中高校、街頭、ネットを活用して、過去最高の1万1113人が未成年模擬選挙に参加しました。同ネットワーク事務局長の林大介東洋大学助教は、未成年模擬選挙の効果に関して「未来の有権者は模擬選挙で投票することを通じて、テレビやネットの世界の遠かった“政治”を身近なものとして感じている。また、家族と友人と話すことで、これからの社会について考える機会が生まれている。」と話しています。

学生団体「選挙へGO!!」の未成年模擬選挙の実践

青森市長選での未成年模擬選挙

青森市長選での未成年模擬選挙

 「選挙へGO!!」が初めて未成年模擬選挙の事業を行ったのは、2013年の4月に実施された青森市長選です。実施するにあたり青森市選挙管理委員会から本物の投票箱を借りて、選挙期間中の4日間、市内の商業施設に許可をもらい、市内の高校生を対象に実施しました。299人の高校生が参加して、実際の選挙公報を参考に投票してもらいました。写真やキャッチフレーズなどを見て直観的に選ぶ生徒もいましたが、時間をかけて選挙公報に書かれた政策を見比べて投票する生徒も多数いました。どちらにしろ、選挙の投票はどのようにするのか、実体験を通して理解することが出来たと思います。開票は、公職選挙法で禁じられている「人気投票の公表」に触れないように、投開票日の翌日に実施しました。結果は本番の選挙と同じく、現職の鹿内博市長が有効投票数の70%を超える票を獲得しました。

参院選街頭での未成年模擬選挙

参院選街頭での未成年模擬選挙

 次に「選挙ヘGO!!」が未成年模擬選挙の事業を行ったのは、7月に実施された参院選です。参院選では、前回の青森市長選と同様に、選挙期間中の3日間、青森市内の商業施設で選挙公報を参考に、投票は比例区に届け出た政党名として、148人の高校生に模擬選挙を体験してもらいました。投開票日の翌日に実施した開票の結果は、本番と同様に自民党が第一党になりました。投票用紙のアンケートでは、自民党を支持する理由に「アベノミクスに期待」「憲法9条改正に賛成」などが挙げられた他、「原発反対」を理由に共産党を支持した生徒もいました。

北辰中学校での未成年模擬選挙

北辰中学校での未成年模擬選挙

 このほか、参院選では、弘前市の選挙管理委員会、教育委員会に全面協力してもらい、弘前市立北辰中学校の3年生の社会科の授業を活用し、42人の生徒が参加して 模擬選挙を行いました。当初は参院選比例区に届け出た12党で投票を行う予定でしたが、中学生が短時間で比較して投票先を決めるのは難しいと判断して、まず「選挙へGO!!」のメンバーがファシリテーター(調整役)となり、今回の参院選の争点に関するワークショップを行い、そのあとに架空の政党4党のマニフェストを見比べて投票してもらいました。

 実際の選挙で使われる記載台、投票箱を使用して、より本物に近い環境で実施しました。後日行われた開票に際しても、実際の開票に近い形で弘前市選管職員が行う開票作業を、投票に参加した全生徒に見てもらいました。参加した生徒たちからは、「今まで政治とかニュースに無関心だったが関心を持てた。選挙に参加出来る年齢になったら参加したい」などの前向きな感想が多く聞かれました。

投票率の向上は地道な主権者教育から

 「選挙へGO!!」の福田代表は、「将来の有権者に政治に関心を持ってもらうために、未成年模擬選挙は有効なツールになる。特に学校など教育機関が、この取り組みを率先して行ってほしい」と話しています。

 選挙の投票率の向上は一朝一夕に成果が出るものではないと思います。未成年模擬選挙など地道な常時選挙啓発の取り組み、社会の形成者たる主権者としての自覚と社会参画の力を育む主権者教育が重要になると思います。

 教育現場では、教育の政治的公平性、中立性を欠く恐れがあると、未成年模擬選挙の実施を躊躇(ちゅうちょ)する自治体も多いです。しかし、選挙期間中に行われる模擬選挙で、生徒に臨場感を与えて、現実の課題や争点を自分なりに考えさせることは重要です。神奈川県の教育委員会は、2013年の参院選に合わせ、県内すべての県立高校と中等教育学校146校で、実際の選挙を対象とした模擬選挙を実施しました。この取り組みは2010年の参院選から始まり、今回が2回目です。将来的には、こうした取り組みを実践する地域としない地域では投票率、ひいては地域の発展に大きな違いが出てくると思います。

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佐藤淳氏

青森中央学院大学 経営法学部 専任講師
早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員
佐藤 淳
1968年青森県十和田市生まれ。早稲田大学商学部卒業。三井住友銀行での12年間の銀行員生活後、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。現在、青森中央学院大学専任講師(政治学・行政学・社会福祉論)。早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員として、マニフェスト型の選挙、政治、行政経営の定着のため活動中。

■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。
関連リンク
早稲田大学マニフェスト研究所ホームページ
Twitterアカウント(@wmaniken)
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