【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第22回「自治体間競争を勝ち抜くには、徹底した行財政改革が必要不可欠」(2013/2/6 三重県四日市市議会議員 森智広/LM推進地議連運営委員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第22回目は、四日市市議会議員の森智広氏による「自治体間競争を勝ち抜くには、徹底した行財政改革が必要不可欠」をお届けします。
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議会改革先進議会・四日市市議会
三重県四日市市は人口約31万人。県下最大の人口を有し、四日市港コンビナートを抱える、全国有数の工業都市です。
四日市市議会では2010年度に「四日市市議会基本条例」が制定され、翌2011年度から市議会では全国初となる「通年議会」が導入されました。通年議会の導入により、1年を通して継続的に委員会が開催されるようになり、委員会の開催回数も大幅に増加するなど、議会活動のさらなる活性化を目指した取り組みが行われております。
また、議会基本条例の制定により、議員が文書により執行部に対して質問できる「文書質問」も可能になりました。制度ができて2年に満たない段階で、すでに20件近くの文書質問がなされています。文書質問で出された議員からの質問書と市長からの答弁書は、市議会のホームページに全文が掲載され、市民の方々にご覧いただけるようになっています。各議員が、議会の一般質問以外にこのような公の場で質問の機会を有しているということは、議員調査権の拡大という観点から、とても意味のあることと言えます。
私は、2011年4月の市議会議員選挙で初当選を果たし、同年5月から市議会議員としての職に就いています。先に述べた四日市市議会基本条例の施行が2011年5月からですので、「議会基本条例」とともに誕生した議員とも言えます。議会改革先進議会である四日市市議会の議員であるとの誇りと、今後も絶え間なく議会改革を推し進めていかねばならないという使命感を持って、現在、議員活動を行っています。
公認会計士の経験を生かし「行財政改革」に取り組む
私は、市議会議員になる前は公認会計士として、企業経営や企業会計の現場で働いていました。国・地方の膨れあがる借金の現状。なぜ、民間企業では至極当たり前の「経営」という概念が、国・地方自治体では欠如しているのか。行政や政治家は、経営、資金繰りというものをどこまで理解しているのか。仮に理解しているとすれば、なぜそれを実行しないのか。私の疑問は日に日に大きくなり、葛藤に変わっていきました。そして、他人任せにするのではなく、自らが実際に政治の場に飛び込み、現状を打開していくという思いに至り、市議会議員への道を選びました。
議員就任後は、これまでの公認会計士としての経験を生かし、「四日市市の行財政改革を推し進めていく」という考えの下、行政の無駄や非効率な仕組みの改善について、重点的に取り組んでおります。
行財政改革においても「縦割り行政」の弊害が存在
行財政改革への取り組みの例として、私が市の施設の決算書を入手し施設ごとの経営分析を行った際の話です。その経営分析から、「行財政改革」においても縦割り行政の弊害が存在するということが分かりました。
例えば、本庁舎は総務部、図書館は教育委員会など、市の施設はそれぞれ所管の部局が維持管理しています。従って、同じ市の施設であっても部局をまたぐと、施設間の連携・情報共有がまったくなされていないのです。つまり、ある施設で行われている有効なコスト削減施策がその施設内での施策に留まり、ほかの施設に展開されていないのです。
これは一例ですが、同じ中央監視システムを導入している2つの施設があり、それぞれの施設で施設運転管理業務の委託方法が異なるのです。一方の施設では、施設運転管理業務すべてを中央監視システムメーカーに一括随意契約。もう一方の施設では、中央監視システムメーカーとは必要な保守管理業務に限定して随意契約を締結。ほかのどの業者でも対応可能な業務については、一般競争入札で業者を決めています。後者の施設では、随意契約を施設運転管理業務全体の1割程度に抑えることができ、大幅なコスト削減につなげているのです。
このことで私は、市の施設間でのコスト削減施策共有化の必要性を痛感しました。
これからの議員に求められるもの
「議員は敵をつくってはいけない」という言葉があります。これは果たして、正しい言葉なのでしょうか。
既存の政策や制度に、新しい行政サービス・政策を加えることを提言するのは容易です。現行の行政サービスは維持したままなので、不利益を被る利用者はいないからです。しかし、人口減少が進み、税収の落ち込みが予測される中、既存の政策や制度を再構築して新しい仕組みづくりを行う必要があると考えます。ただ、これには既存サービスの廃止・縮小が伴うので、少なからず不利益を被る方が出てきます。
選挙のことを考えると、議員は行政サービスの拡大に傾きがちですが、市の将来を本当に考えるのであれば、行政サービス・制度の再構築を目指すべきではないでしょうか。私が行財政改革に重きを置いているのは、そのスタンスがあるからです。
選挙に縛られた活動は、市全体の利益に決してつながりません。しかし、多くの議員は、有権者の負担になることには及び腰です。少なくとも私は、「自治体間競争を勝ち抜くには、徹底した行財政改革が必要不可欠」という信念に基づいて行動していきたいと思っています。
- 著者プロフィール
- 森 智広(もり ともひろ):1978年5月27日生まれ。三重県四日市市出身。立命館大学理工学部卒業、早稲田大学大学院公共経営研究科修了。中央青山監査法人、あらた監査法人、プライスウォーターハウスクーパース株式会社。公認会計士。2011年四日市市議会議員に初当選(現役最年少)。
HP:森ともひろオフィシャルホームページ
ブログ:森智広のブログ