トップ    >   連載・コラム    >   LM推進地議連連載    >   新しい日本の再構築を──3つの提言

【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第19回「新しい日本の再構築を──3つの提言」(2013/1/16 愛媛県議会議員 黒川洋介/LM推進地議連会員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第18回目は、愛媛県議会議員の黒川洋介氏による「新しい日本の再構築を──3つの提言」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 地方政治と中央政治とのギャップ、そして政治と国民の信頼関係が、日増しに希薄となることに危機感を持つのは、私だけではないと思います。まさに今、新しい日本を再構築せねばならないときであると考え、政治山へ寄稿させていただくことといたしました。以下、「マニフェストの大切さ」「地域の成長戦略」「四国をサイクリングの聖地へ」の3点を提言させていただきます。

マニフェストの大切さを痛感

愛媛県議会議員・黒川洋介氏 愛媛県議会議員・黒川洋介氏

 2012年12月に行われた衆議院議員選挙は、まさに「マニフェストの大切さ」が問われた選挙であったと思います。2009年の衆院選のときには、私はマニフェストに期待し、日本は先進国のリーダーとして国際的にも飛躍するもの、と思っておりました。そして、各党がマニフェストを発表し、国民はその約束に対して新たな党を選択。その結果、民主党政権が樹立されました。

 しかし、マニフェストの重要な部分が多数実行されず、検証もされないまま総理が交代することで時間ばかりが経過。その結果、国民の不安や不満が積もり、ついに政治不信へとつながりました。マニフェストを選挙に勝つための道具として使用した“つけ”が回ったのだと思います。

 私は、国民と政治は「車の両輪」でなくてはならないと思います。そのためには、いま一度しっかりとしたマニフェストを作成し、検証を繰り返しながら目標に向かい、着実に前進しなければならないと思います。そして、国民の政治に対する信頼が取り戻せるものと確信いたします。

黒川洋介の地域成長戦略

 私の住む愛媛県新居浜市は、古くは瀬戸内のどこにもある農漁村でありましたが、約300年前に銅鉱脈が発見され、爆発的に人口が増加。その後、新居浜地域を中心に化学コンビナートが建設され、現在に至っております。新居浜市は企業城下町として、鉄工業をはじめとし、ものづくりの地域として発展してまいりました。平成22(2010)年工業統計調査確報によれば、四国全体の製造品出価額8兆5,000億円に対し、愛媛県東予地区3市(新居浜・西条・四国中央)だけでも2兆円にのぼります。このことから分かるように、東予地区は四国を代表する工業地帯です。しかし、円高や経済不況、電力の安定需給不安、製造業の海外移転など先行きが不透明であり、雇用の受け皿も不安定となり、このままでは町の衰退につながりかねません。

 そこで、喫緊の地域課題として、安定した電力需給の確保が挙げられます。

東京電力袖ヶ浦発電所(LNG基地)視察 東京電力袖ヶ浦発電所(LNG基地)視察

 2012年11月、愛媛県議会経済企業委員会の県外視察で、エネルギー需給の本丸である経済産業省資源エネルギー庁と、総出力360万kWの東京電力袖ヶ浦LNG火力発電所の施設を視察しました。発電所の現場では、電力の安定供給に使命感を持ち、懸命に取り組む職員の姿が印象的でした。この視察研修で現場の最前線を見て痛感したことは、政治の停滞であり、何も決められず、ただ時間だけが空しく過ぎている日本の現状です。「国民脇役、国会主役」の現状を1日も早く打破しなければ日本は沈没するのではないか、と感じているものは私だけではないと思います。

 電源別発電シェアは、1960年代半ばには水力が全体の50%でしたが、2009年にはわずか8.2%に。また、70年代には石油が占める割合が最大で70%を超えていましたが、オイルショックにより減少するなど、時代とともに変化しています。

 福島第一原発事故以前は、原発の安全神話のもと、CO2に関して削減効果があることも考慮し、資源の乏しいわが国においては、原発の依存度を増す計画でありました。しかし、事故発生以降、日本の電力需給は大きく変化しました。全国にある原発の中で、現在は関西電力大飯原発(福井県)のみが稼働中であり、事故発生から2年近くが経過するにもかかわらず、原発に関する国の安全指針が示されないまま、時間だけが経過しています。

 エネルギー政策や電力需給問題は、大局観に立った確かな選択が求められるものであり、国民の間で議論が分かれる中、性急に結論を求めることは難しいとは考えます。しかし、資源のないわが国において電力の安定供給は、国の根幹に関わる問題であり、最大限優先すべき事項であることは論を待ちません。

 そこで、次世代エネルギーの「核」として期待されるのがLNG(液化天然ガス)による発電です。LNGはもともと日本が最初に手掛けた技術であり、石炭や石油に比べ二酸化炭素の排出量が少なく、最もクリーンな化石燃料として導入されました。日本のLNG発電は、まず高温で爆発的に燃焼させたガスでタービンを回し、その排ガスを熱源として蒸気を発生させ、蒸気タービンを回すコンバインドサイクル発電の開発により、熱効率59%を実現しています。これは、他国の火力発電所平均の1.5~2倍の熱効率があり、まさに技術立国日本の「スゴ技」が生きていると感心しております。沖縄県では水力発電や原子力発電がないため、CO2排出が石炭の5割で済むLNGを燃料とする発電所を建設し、2013年度までに50万kW、全体の30%をまかなう計画です。

 現在、一般電気事業者のLNG火力発電施設は、稼働中のものが約135基で約6,000万kWを発電。計画中のものは36基で1,350万kW近くを発電する予定で、原発の代替エネルギーの核となりつつあります。東京電力では、現在の63基からさらに17基を追加する計画なのだそうです。四国電力におきましては、すでに2基稼働している坂出火力発電所で、1基追加して合計3基にする計画です。また、経済産業省の専門委員会の報告書では、大都市間をパイプラインで結び、災害時にも対応できる「広域天然ガスパイプラインネットワーク」の整備基本方針が提示され、代替エネルギーの必要性が示されています。

 ただ現在は、原発事故の影響で需要が大幅に増え、2011年度の日本のLNG輸入量は世界最大で、韓国の約2倍です。その結果として価格が高止まりする状況が続けば、今後は家計やものづくりにも、電力料金の値上げによる負担が大きくなるでしょう。特に企業では、国際競争力の低下が懸念されます。しかし、世界各国でLNGの開発が急ピッチで進んで価格も安定すると予測されており、日本の技術力を持って熱効率を上げればコスト面の課題もクリアできるものと考えます。

 今後のエネルギー政策において、中長期的代替エネルギーとしてLNGは欠かせないものであり、LNGを含めた多様な電源を併用するベストミックス(=火力・水力・原子力などの組み合わせ)を目指さなければなりません。特に、四国では、分散型のエネルギー・ベストミックスの必要性が高いと考えます。

 南海トラフ巨大地震が発生した場合、地震により高知県内の水力発電所が、津波により徳島県の火力発電所が被災し、運転停止・電源喪失となれば、とても四国の経済、住民生活を支えることはできません。また、巨大地震が起きなくても、伊方原発1号機、2号機はそれぞれ、運転からそれぞれ36年と31年が経過。40年の廃炉基準を考えれば、4年後と9年後には、その代替電源の確保が必要です。そこで、LNG発電所を、津波による影響の少ない、瀬戸内海側で、電力消費地である都市部及び工業集積地に立地すれば、安定的で、コスト的にも有利なエネルギー供給基地になるのでは、と考えます。

 国からのエネルギー基本計画の発表は、いまだにされていません。国の指針のみに頼るのでなく、愛媛県として電気事業者と次世代エネルギーの安定確保に向け検討を行うことが必要と思います。

四国を「サイクリング界の聖地」に!

花蓮での出発式(上、11月10日)。4日目には体もサイクリングに慣れ、絶好調(下、11月13日) 花蓮での出発式(上、11月10日)。4日目には体もサイクリングに慣れ、絶好調(下、11月13日)

 私は、サイクリングを趣味としています。始めたきっかけはダイエット。以前は体重が85キロあり、4カ月後に15キロ減らすという目標を立てました。その結果、食生活の改善とサイクリングにより成功しました。ダイエット成功後もサイクリングを続けています。

 そして2012年、台湾1周自転車祭に日本チームの一員として参加しました。東海岸の花蓮から西海岸の台中まで約400キロを、11月10~13日の4日間で走破します。鉄道や自動車では体感できない、自転車ならではの風のさわやかさや草木の香り、小鳥のさえずり、沿線の人々の情に触れる、貴重な体験でした。

 台湾ではすでに、サイクリングによる国内一周が根付いております。四国には恵まれた気候と環境があり、ゆったりとしたときを楽しむスローライフが可能です。人と人、人と自然の共存・共生を目指し、四国自転車1周が実現できれば、日本国内だけでなくアジアをはじめ全世界から、多くの人たちがこの素晴らしい四国の自然を満喫しに来ていただけるものと確信いたします。四国が世界のサイクリングの聖地になりえる可能性を十分秘めている、ということを今回の台湾ツアーで実感いたしました。2013年秋に予定されている「瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリングプレ大会(仮称)」を大きな第1歩として、“四国サイクリングアイランド”に向け、経済発展や観光促進、また環境面や健康面で取り組むメリットは大きいと思います。

著者プロフィール
黒川洋介(くろかわようすけ): 1952年3月4日、愛媛県生まれ。日本大学工学部卒。団体職員を経て、1996~1999年、新居浜市議会議員。その後、愛媛県議会議員に転身。現在3期目。経済企業委員会委員長を歴任。大切にしたい言葉は「夢は見るものではなく叶えるものでなければならない」
HP:黒川洋介ホームページ
LM推進地議連の連載コラム
第18回「毒まんじゅうとマニフェスト」(熊本県議会議員 大西一史)
第17回「崖っぷちの日本、まずは埼玉から変える!」(埼玉県議会議員 沢田力)
第16回「議会不信からの巻き返し──「チーム大村市議会」の着実な歩み」(大村市議会議員 村崎浩史)
ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(LM推進地議連)連載コラム一覧
関連ページ
「第7回マニフェスト大賞 全国先進事例を学ぶ研修会」開催(2012/11/05)
第7回マニフェスト大賞 最優秀賞に『倉敷市議会 青空市民クラブ』など(2012/11/02)
第7回マニフェスト大賞授賞式・フォトギャラリー(2012/11/03)
第7回マニフェスト大賞 優秀賞38件が発表 優秀賞一覧表(2012/10/02)
ページトップへ