【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】
第20回「せっかくの機会ですので、福島県の風評被害について」(2013/1/23 福島県郡山市議会議員 川前光徳/LM推進地議連運営委員)
政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第20回目は、郡山市議会議員の川前光徳氏による「せっかくの機会ですので、福島県の風評被害について」をお届けします。
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2010年までは、関西方面に行くと福島県の位置を知らない方に時折お会いしましたが、今、福島県を知らない方は日本中、いや世界中を探しても、さすがにいらっしゃらないでしょう。
福島県の中央に位置する郡山市は、面積757平方キロメートル、人口32万8,000人ほどの中核市です。福島県内においては「経済県都・郡山」という表現をされますが、その言葉通り商工業が発展しており、東西南北に発達した交通網によって交流人口も多く、東北地方南部の流通の要衝として、昔から栄えてきた地域です。また、農業も盛んで、お米や野菜、果物、畜産など、多種多様な農産物を生み出しており、農商工のバランスのとれた町と言うことができます。
議会は定員40名。私の所属する自民党系の創風会が最大会派で17名、ほかの自民党系、公明党系を合わせると40名中26名となります。議会のさらなる活性化策や、情報開示をどのように進めていくかが、郡山市議会の大きな課題だと考えています。定数削減も課題の1つで、46名から3期かけて6名減らした議会のさらなる削減、もしくは適正な議員定数を探る取り組みを始めなければなりません。
さて、ご存じの通り、郡山市も原発災害と震災に襲われました。議会も行政も今、全力でこの問題に取り組んでいますが、福島県で起きている原発災害を分析すると、2つの地域に分けることができます。
ひとえに降り注いだ放射線量によるものですが、1つはもちろん、それが多く、人体に与える影響を考えると住むこともできず、避難生活を余儀なくされている地域。そしてもう一方は、放射線量が少なく、年間に日本人が通常浴びるとされている線量とほとんど変わらず、除染などの人的努力も手伝って、今まで通りの生活ができている地域です(当時の風向きや、雨の具合で微妙に変化していったことを考えると、幸いというほか思い浮かばないのですが)。
もちろん「今までどおり」と言っても、そこにはそれぞれの市民1人ひとりがどの程度安心できるか、という“心の問題”があるのですが、それはまた別の機会にお話させていただくとして、郡山市を含む後者の「今まで通りに生活を送れるレベルの地域」での最大の問題が、“風評被害”なのです。
郡山市の産業で、農業の占める割合は決して小さくありません。郡山市や福島県は2012年来、生産物の安全性を担保するために万全の態勢を敷いてきました。出荷される作物の徹底した検査を行った結果、基準値以上の放射線を含んだ食品が出荷されることはまったくありませんし、2012年秋には米の全袋検査も行われ、安全性は増しています。それでも、価格の下落や販売不振が起こっています。
最近、整った検査体制を象徴する出来事が起こっていますので、ここに紹介いたします。郡山市では、出荷される農産物ばかりではなく、市民の食の安全にも万全の体制で取り組んでいて、水道水の検査や市民が簡単に計測できる検査場の設置など、およそ考えられることは何でもする方針です。また、給食については、特に子どもたちのことなので、無謀ともいえるほど厳しい基準で検査を行っています。
まず材料の時点で放射線量が10ベクレル(1キロあたり。以下、/㎏)以下のものだけを使い、でき上がった給食をさらに、こちらも10ベクレル/㎏の基準で検査。その結果を、ホームページで毎日公表しています。この厳しい検査体制に、むしろ県外産の食物が引っ掛かるのです。もちろん100ベクレル/㎏の国の安全基準を超えるようなものはありませんが、現場では「福島県産の安全性」が見直される皮肉な結果となっています。これほど徹底した体制を整えたフクシマを、みなさんにぜひ見直していただければと願っております。
そもそも冷戦以降の相次ぐ核実験で、放射性物質は世界中にばらまかれました。東京電力の原発事故以降、われわれは“放射能”というものを意識せずにはいられなくなりましたが、放射性物質は今回の事故以前から存在したものであり、福島だけではなく全人類の問題なのだということに思いを留めて、冷静に対処していただければ幸いです。
郡山市は、福島県の自治体の中では除染が最も進んでいます。4年間で10万戸除染の当初計画や、農地の除染計画をスケジュールどおり実施できる、唯一の自治体となるのではないでしょうか。また原正夫市長が2013年の年頭あいさつで、震災復興のための取り組みとして郡山市役所に県庁移転推進係を設置することを発表し、注目されています。
安全と安心のギャップを埋めていくさまざまな取り組みについては書くスペースがありませんでしたが、全市一丸となって放射線対策に取り組んでいる、郡山市の現状をぜひ見に来ていただければ、と思っております。
- 著者プロフィール
- 川前光徳(かわまえみつのり):1966年11月8日郡山市生、東京経済大学卒、1989年、家業の株式会社川前商店入社(酒屋)。JC(日本青年会議所)に長く在籍。2011年9月、震災後初となる郡山市議会議員選挙に立候補し初当選。現在1期目。フェイスブックやツイッターで市政情報発信中。
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