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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第16回「議会不信からの巻き返し──『チーム大村市議会』の着実な歩み」(2012/12/19 大村市議会議員 村崎浩史/LM推進地議連運営委員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第16回目は、大村市議会議員の村崎浩史氏による「議会不信からの巻き返し──「チーム大村市議会」の着実な歩み」をお届けします。

◇        ◇        ◇

 長崎県の県央に位置する大村市は、空港と高速道路を擁している。2022年には新幹線開通が予定されており、3大交通インフラがそろう。長崎県にしては珍しく平地が多く、風光明媚なロケーションのため、人口は増加している。競艇発祥の地ということもあり、584億円におよぶ一般会計への繰入金が、市民生活の福祉向上に充てられてきたことも、市政発展の要因の1つと言えよう。

市民と議会のつどい『語ってみゅーか』開催

市民と議会のつどい『語ってみゅーか』の様子 市民と議会のつどい『語ってみゅーか』の様子

 まずは、私が議会に参加した、2007年以降の議会の動きについてまとめていきたい。市民から議員定数削減を求める直接請求(定数6名減)が出され、当時の議会は3名減の結論を出したのが2006年で、そのような経緯もあり、2007年の改選後に誕生した議長は「議会不信の打破」を掲げ、市民との対話や、議会活動を公開する機会を設けることから着手した。その結果、2008年2月から、市民と議会のつどい『語ってみゅーか』を開催することになった。

 1回目を開催してみての感想は、「大荒れ」のひと言に尽きるだろう。参加者からは、さらなる定数減や議員報酬減、政務調査費減を求める声ばかり。政策課題について議論するというより、感情的ないら立ちをぶつけられてしまった。ベテラン議員がつぶやいた。「『語ってみゅーか』ではなくて『叱られてみゅーか』ばい」

 前回の経験を踏まえ、2回目以降の開催から、議長を除く24名の議員を4つのグループに編成。各グループが市内8地区を2日間で担当した。担当地区は開催ごとにローテーション形式で運営することで、議員が一部の地域にとらわれず、市全体の課題に意識を持たせるようにしている。開催時期は3月定例会、9月定例会後の年2回。グループは会派、所属常任委員会、期数などを勘案して、会派長会で決定する。2012年10月が直近の開催で、これまでの開催回数は10回におよぶ。

 回数を重ねるごとに変化が生じる。顕著なのは議員報酬、定数削減の話題が減少したことである。むしろ、そのような質問をする参加者に対して、別の参加者が質問を制するようなシーンも見られた。議会で修正可決した補正予算の審査経過を説明し、市民に理解を求めたこともあった。私が体験した中で驚いたことは、中学校給食導入をめぐって若い主婦が質問をしたときに、高齢の女性が意見を主張し、市民同士の活発な議論が始まったことだ。もちろん、いいことばかりではない。参加人数がゼロだった会場もあり、ある新聞社から「閑古鳥が鳴く議会報告会」と書かれたこともあった。しかし、参加人数を集めるため各グループが事前に町内会長会、地域に出向き、参加を呼び掛けるなど、「チーム大村市議会」としての取り組みは発展し続けている。

 10回目の開催において、ある市民から提案があった。「今回で10回目の開催。区切りでちょうどいいから、今まで市民から出てきた要望と、解決したことをまとめた資料をつくったらどうですか? 議会がちゃんと解決してきたことをアピールせんともったいなかですよ」

 予想外の言葉だったが、この言葉にこそ希望を感じる。市民と議会の間に信頼関係、協働関係が醸成されつつあることを予感させる、シンボリックな出来事ではないだろうか。

積極的な「反問権」の活用

大村市議会議員・村崎浩史氏 大村市議会議員・村崎浩史氏

 それからもう1つ、議会基本条例の中に規定している「反問権(=議員の質問に対し、争点や論点を明確にするために、首長や自治体職員などが質問できる権利)」についても触れておこう。ある研究者から、「日本でもっとも反問されている議員は君じゃないか」と声をかけられるほど、反問権の活用が積極的になされていることを強調しておきたい。松本崇市長との意見の違いから、何度も反問される機会があった。市民からは、論点が明確になるためおおむね前向きな評価であった。また、2012年9月定例会においては、ベテラン議員と市長の間で反問権を行使した激しい応酬が見られた。大村市議会は、反問権に関しては「生きた条文」であることを補足しておきたい。

 2011年改選以降の新たな取り組みとしては、議会活動を検証する3つのグループを設置がある。これは、(1)議会運営(2)政策提言(3)広報の観点から、議会基本条例の理念に沿った活動がなされているのか、内部検証を行うというもの。この取り組みの成果はこれからである。

 大村市議会は、会派、常任委員会、市民と議会のつどい運営グループ、議会活動検証グループ(ほかには広報委員会をはじめ、特別委員会)など、組み合わせの異なる複数のグループが存在する。それゆえ、自分が所属する会派以外の議員や、考え方・スタンスが異なる議員とのコミュニケーション量は必然的に増えることになる。会派間対立、世代間対立という従来的な議会価値観を突き抜けた次元で議論を行い、プロジェクトを着々と進めている(もちろん政策をめぐる意見の対立はあるが)。

 幸いなことに大村市議会は、経験豊富で柔軟な長老議員、バランス感覚がよく理解のある中堅議員、アイディアを出す若手議員がそろい、それぞれで役割分担がなされている方ではないだろうか。『チーム大村市議会』の取り組みは、先進的な議会に比べると華やかさに欠くであろうが、活動のレベルを地道に向上させようと奮闘している。

 最後に個人的な活動について紹介をさせていただきたい。2012年11月から、議会一般質問の第三者評価を行うことにした。東京大学大学院で研究されている方にすべての議会質問をチェックしてもらい、地元の支持者(支持者でない市民も含む)向けに評価の報告会を行った。アカデミックな第三者評価と、市民の率直な反応や指摘が融合することで、自分の足りない部分が明らかになる。選挙以外に議会活動の評価を受けることで、自分のアウトプットの精度を高めることが狙いである。議会としても、議員としても、取り組みたいことはまだまだ山積している。1つひとつ取り組んでいくことを宣言して、本稿を締めさせていただきたい。

著者プロフィール
村崎浩史(むらさきひろし):1980年2月21日生まれ。長崎県大村市出身。立命館大学経営学部卒業。ベネッセコーポレーション、日本酒蔵経営再建を経て、2007年、無所属で大村市議選初当選(最年少)。2009年からNPO法人ドットジェイピー理事を務める。2012年、第7回マニフェスト大賞優秀政策提言賞を受賞。現在2期目。
HP:大村市議会議員 村崎浩史 ホームページ
Mail: omura_at_murasaki-hiroshi.jp
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facebook:hiroshi.murasaki
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