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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第13回「評論よりも行動を!~議員の資質向上のための3つの処方せん~」(2012/11/28 松戸市議会議員 山中啓之/LM推進地議連運営委員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第13回目は、松戸市議会議員の山中啓之氏による「評論よりも行動を!~議員の資質向上のための3つの処方せん~」をお届けします。

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松戸市議会議員・山中啓之氏 松戸市議会議員・山中啓之氏

 千葉県松戸市は、東京に隣接した人口48万人を抱えるベッドタウン。市議会の議員定数は44人。市内に20を超える鉄道駅があり、そのアクセスのよさから多くの住民が都内へ通う。住民たちは「千葉都民」と揶揄(やゆ)され、地域への関心の低さや低投票率が問題視されている。

政治をあきらめている市民に告ぐ!

 市民が現在の政治腐敗や政治家のレベルの低さを嘆くのは簡単だが、それは時間のむだである。現状は何も変わらないからだ。では、変えるためにどうするか。政治を変えるためにはまず、政治家を変えなければならない。選挙で文字通り議員を「とりかえる」のも1つの方法であり、有権者が政治家を成長させることで、議員の「中身を変える」ことも1つである。

3つの処方せん

 ここでは、私から実践を伴う3つの具体的な方法を提示したい。

(1)情報公開

 政治家が行うべき最も基本的なことは、「納税者に対する情報公開」だと考えている。その地域の問題がどこにあって、行政はそれに対してどのように対処しているのか、といった基礎的な情報はもちろん、最も大切なのは、議員がそれに対してどういう態度を示しているか、という点である。私は議会でもこの点に力を入れている。

 平日昼間に開催される議会を傍聴できる住民はそう多くない。肝心な部分が、市民に知らされていないのだ。そこでまず、インターネット中継が必要になる。松戸市も遅まきながら取り入れ、今では多くの地方議会で導入事例が増えているネット中継だが、市民から取り入れてほしいという陳情(注)が寄せられた当初、賛成した議員は私と本郷谷議員(現・市長)の2人のみだった。
(注:平成19〈2007〉年度陳情第32号「インターネット議会中継の生中継を求める陳情」)

 次に、個々の議員が議案に対し、どのように賛成・反対したかを議会だよりや議会ホームページで掲載することだ。これはもはや、多く説明する必要はないだろう。市民は、議員が彼らにしか与えられていない「議決」という権利をどう行使したかを知る権利がある。有権者は、議会や会派に1票を投じていない。特定の1議員(候補)に期待して投票している以上、その議員の決定的な態度が市民に伝わってこそ、住民の意思が政治に反映されるサイクルが成立するのである。

(2)選挙

 有権者ができる最も有効な手段、それはいうまでもなく選挙である。選挙が近づくと「○○市を豊かに!」「あたたかい街○○!」という“似たりよったり”のキャッチコピーが並ぶ。これでは候補それぞれの主張の違いが分からず、選びようがない。周囲に聞くと、「人に頼まれたから」「ポスターがカッコよかった(美人だった)から」などの理由で選ぶ有権者が、実は結構いる。

 選挙で候補を選ぶ際に重要なことは、ポスターやビラのよし悪しではない。その人がどんな人生を歩み、何を考え、何をしてきたかを知ることである。実績や結果は決してうそをつかない。1週間程度の選挙期間で分かる情報は、極めて限られている。新人ならば政策(マニフェスト)を、現職ならば実績を問う。

 私は2期目の選挙に当たり、自分のマニフェストを通信簿にして配布した。人に指摘する立場として自分自身にも辛口で評価したため、実現できたことよりも完全にできなかったことの方が多かったが、効果的な内省作業となり、何より有権者に正直に伝えることの意義を強く感じた。残った課題に対しては、市民とともに次の一手を考えて打てるのだ。

(3)不断の市民の政治参加

 そして、議員と市民がともに手を携えて行うべきことが、不断の政治参加である。1期目の4年間を「1人会派」で活動してきた私にとって、この点は特に「数の力」が必要だと痛感している。ベッドタウンに住む市民の多くは、地域にあまり関心を持たない。しかし、それで利するのは既存の大組織などである。そこに気づいたとき、個々の市民の行動が始まる。

政治研究会の様子 政治研究会の様子

 とは言え、投票用紙の書き方1つも学校で教えない、という日本の政治風土である。私は数年前に、議会の基本的な仕組みや制度の概要、市民の持つ権利などを「市議会入門講座」としてまとめ、市民センターで講義を行った。インターン生の成長の目的で行ったわずか2時間の4回連載講座だったが、予想以上の好評を博し、より多くのニーズがあると確信した。そこで2012年、市民を対象とした「政治研究会」を個人で立ち上げ、より実践的な内容の研修会を月1回行っている。有料講座ながらも老若男女20名以上の熱意ある参加生が集まった。市議会はもとより市内外の議会や行政の情報を提供し、市民目線で議論し、互いの資質を高め合う場となっている。

 また同時に、広く政治に関心を持ってもらうために、先に挙げた個々の議員の議案などの賛否を、市議会レポートで自ら公表し配布した。インターネットにも常時公開している。

 議会活動としても現在、常設型住民投票条例の設置を会派「市民力」のメンバー全員で一丸となって目指している。言うまでもなく、市民が議会や行政に声を上げる権利をより補強するためだ。

 上に挙げた3つの処方せんは、あくまで基礎的な部分のいわゆる「条件整備」であり、議員の能力向上には今後、議員力検定やマニフェスト大賞などの「外部評価」が必要になってくる。この流れはいずれ、大きな潮流となることは間違いないだろう。しかし、今でもこれだけは断言できる。それは、政治家の資質向上のすべては、市民のレベルアップにかかっているということだ。なぜなら、すべての政治家は市民の中から選ばれるのだから。

 市民の力は、そのまま議員の力になる──。これだけは覚えておいていただきたい。

著者プロフィール
山中啓之(やまなか・けいじ):1979年5月28日生まれ。千葉県松戸市出身。早稲田大学(政治経済学部政治学科)卒業後、サラリーマンを経て、松下政経塾へ。2008年、無所属で松戸市議会議員に初当選(最年少)。現在2期目。会派「市民力」幹事長。
HP:山中放送局
ブログ:けいじの政治
Twitter:@yamanakakeiji
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