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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第15回「地域政党・長崎ちゃんぽん党!?」(2012/12/12 長崎県議会議員 松島完/LM推進地議連運営委員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第15回目は、長崎県議会議員の松島完氏による「地域政党・長崎ちゃんぽん党!?」をお届けします。

◇        ◇        ◇

“地域政党・長崎ちゃんぽん党”の誕生

 民主党、自民党の一部、社民党、そしてわれわれ無所属の県議が政策による連携を図った。その政策による連携が大連立を生み、“連立会派”の結成につながる。2011年6月、長崎県政史上初の連立会派が誕生した。県議46名中、連立会派は過半数を占めた。誕生して1年半余りしかたっていないが、県議会は大きく様変わりした。まさに激変である。

 私は、政党にかかわらず能力ある方々が一堂に会したこの連立会派を、具材が何でも入っている長崎ちゃんぽんに例え、“長崎ちゃんぽん党”と表現した。そしてまた、中央政党の意思よりも、長崎のための視点を優先していることから、“地域政党”のようなものだと表現している。つまり、この長崎県の連立会派とは“地域政党・長崎ちゃんぽん党”なのである。

長崎ちゃんぽん党の軌跡

 「そんな大連立がよくできたな」とよく聞かれる。大連立誕生のきっかけは、自民党内部の権力闘争であった。その闘争によって、内部分裂が起こったのである。そもそも長崎県政は、自民党の一党支配がずっと続いていた。それが、総与党化した県議会を生んでいた。総与党化した議会は談合政治であり、“ないない”議会と化していた。「質問原稿書かない」「議論がない」「建前しかない」といった“ないない”議会であった。議員の主戦場である公式の場でのやり取りが、建前化し形骸化する一方で、非公式の場での口利きが主たる仕事になってしまっていたのである。

 自民党の内部分裂を好機ととらえ、自民党議員の一部と、民主党議員、社民党議員、そしてわれわれ無所属の議員が政策協議を重ね、地域主権の推進、議会改革の推進、震災復興対策の推進で政策協定を結び、大連立へと至り、連立会派の結成となった。長崎県大改革への夜明けであった。

長崎ちゃんぽん党の成果

長崎県議会議員・松島完氏 長崎県議会議員・松島完氏

 「われわれ議員とは何ぞや」から始まった。県議会議員の責務・役割とは何なのか、ゼロから議論を始めた。「条例化の必要なし」とするベテラン議員との闘いもあったが、結果、全会一致で生まれたのが「長崎県議会基本条例」だった。私が素案を書いたのだが、全国的には後発ながら、やっとここまできたのかという喜びを隠しきれず、書いている最中に身震いしたのを、今でもはっきりと覚えている。制定ももちろん大切だが、その制定までのプロセスこそがもっとも大事で、今の長崎県議会に影響を与えている。ゼロからの議論は多くの議員に「われわれ議員とは何ぞや」の問いを芽生えさせ、議論を生んだ。立ち位置を見直したのは、これが初めてであっただろうと思う。これが不可欠である。ここからスタートした。

 そして議会基本条例によって、さまざまな改革が連動してきた。

(1)「会期とは何ぞや」の問いから始まった議論は、都道府県では全国初となる通年議会の導入につながった。議長による招集や十分な審査日程の確保が可能となり、原則として、知事専決処分もなくなった。議会の主体性を明らかにした。結果的に、談合議会ならぬ談合委員会であったものから、議論が飛び交う委員会へと変ぼうした。常任委員会の審査日数が4日間から10日間となり、通常の議案審査のほかに、迅速に必要な現地調査や集中審議も日程的に可能となった。また、県民の方々に出席いただいて意見を求める参考人招致の制度活用も、ひんぱんに行われるようになった。今後の課題として、時間的な量よりも内容の質を問われ、質を高めて成果につなげていくことが求められる。

(2)「議員の役割とは何ぞや」の問いから始まった議論は、協議会という1つの形を生んだ。議員の役割は、監視機能だけではなく、政策立案機能もあることを再認識した。中でも議員立法の再認識をし、それによって、“条例検討協議会”が立ち上がり、現在は県民の方々も巻き込んで、障害者差別禁止条例を議論し、制定の検討をしている。

(3)「県議は何をしているのか見えない」という県民の方の声がきっかけで、広聴広報機能の充実を議会基本条例で明記し、“広聴広報協議会”が立ち上がった。インターネット中継の充実や、新聞などあらゆる媒体を駆使した情報発信と情報共有を協議している。

(4)「議会は学芸会ではないか」という県民の方の怒りがきっかけで、一問一答方式の導入を実施した。これによって、議会の議論が分かりやすくなるとともに、議員側に質が求められるようになった(ただし、これは義務ではないため、従来型の一括質問のままの議員も、連立会派以外では一定数いる)。

長崎ちゃんぽん党のこれから

 この原稿を書いているのが、2012年の11月下旬である。12月には衆院選がある。第三極の動きが活発になり、国政も大きく変わりそうである。国政の動きによって、県議会も影響を受けるのは必至である。今回の衆院選で目につくのは、コロコロ変わる政党である。候補者は、政策よりも選挙に勝つための行動を優先し、自身の所属政党をコロコロ変えている。ドタバタ解散は、コロコロ政党を生み、選挙後もコロコロするだろう。長崎県議会だけは、コロコロしたくない。

 確実に言えることは、長崎県議会で自民党一党支配があのまま続いていたならば、議会基本条例も通年議会も広聴広報の改革も生まれていない。自民党の良し悪しや議員個人の良し悪しではなく、やはり改革とは内部から生まれにくいのではないか。談合政治から脱却した長崎県議会は、次のステージへ進まねばならない。真価が問われるのはこれからである。

著者プロフィール
松島完(まつしまかん):1979年長崎県南島原市生まれ。明治大学(政経学部)卒、英国ブラッドフォード大学大学院(公共政策専攻)留学、早稲田大学大学院(公共経営研究科)修了。27歳で長崎県議会議員に初当選。現在、2期目。無所属。第6回マニフェスト大賞優秀コミュニケーション賞受賞。著書『経済成長から社会再生の時代へ―長崎県へ”人と人とのつながり(ソーシャル・キャピタル)を豊かにする政策”の提言―』文芸社(2010)。
HP:長崎県議会議員 松島完 オフィシャルウェブサイト
facebook:kan.matsushima
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