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【LM推進地議連連載/リレーコラム47~地方議員は今~】

第14回「真の地方分権時代に向け、いま議会・議員に必要なこと」(2012/12/05 藤沢市議会議員 有賀正義/LM推進地議連運営委員)

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟 連載・コラム

 政治山では、政策立案を行う「政策型議員」を目指す地方議員らで構成される「ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟」(略称:LM推進地議連)と連携し、連載・コラムを掲載します。地域主権、地方分権時代をリードし、真の地方自治を確立し実践するために設立された団体のメンバーが、それぞれの実践や自らの考えを毎週発信していきます。9月からは、全国47都道府県の議員にご登場いただき、地域の特色や問題点などを語っていただく「リレーコラム47~地方議員は今~」を開始しています。第14回目は、藤沢市議会議員の有賀正義氏による「真の地方分権時代に向け、いま議会・議員に必要なこと」をお届けします。

◇        ◇        ◇

湘南の海に開かれた藤沢市

 「神奈川県藤沢市」と聞いても、ピンと来ない方も多いかもしれません。でも「江ノ島」と言うと大抵の方から「あぁ」と返ってきます。さらに、江ノ島といえば湘南のイメージですが、湘南はサザンオールスターズで一躍有名になった茅ヶ崎や、世界遺産を目指す古都・鎌倉、石原慎太郎氏の小説『太陽の季節』で舞台となった逗子・葉山などでも有名です。実は、江ノ島は藤沢市にあり、藤沢は湘南の中核的な都市なのです。

 人口は、神奈川県内の政令市以外では最も多い41.7万人。時宗総本山遊行寺の門前町として、江戸から50㎞、6番目の宿場町として栄えた歴史のある町で、年間1,300万人を超える人が観光や海水浴、マリンスポーツを楽しみに訪れます。特に、海越しに望む富士山は大切にしたい風景です。

湘南海岸公園から冬の富士山を望む 湘南海岸公園から冬の富士山を望む

 ここで、藤沢市の財政状況に触れてみましょう。自主財源比率は約70%で、全国でも上位に入ります。人口推計では今後10年近くは増加傾向。再開発事業もほぼ計画通りで、市税収入はしばらく横ばいが続く、と予想されています。2011年度に51年ぶりに交付団体に転じましたが、その額は約3億円。財政への影響度は非常に小さい、という状況です。

 しかし、社会保障費の上昇は急カーブを描き、震災により築60年の本館庁舎が議場含め使用不能となり、100億円近い規模の建て替え事業が迫っています。さらに、老朽化施設の更新など、今後20年間に2,500億円必要との試算もあり、財源確保や将来負担の議論が白熱化しつつあります。

藤沢市議会基本条例の制定に向けて

震災後、本会議は仮設の議場にて開催 震災後、本会議は仮設の議場にて開催

 2000年の地方分権一括法の施行以来、「地方の時代」と言われながらもなかなか進まなかった議会改革ですが、ここにきて急速に、多くの議会が危機感を持ってきたと感じます。強力なリーダーシップを発揮する首長の出現と、議会に対するスタンスにより、住民も議会に対し、厳しい目を向けるようになったのです。そこで、多くの議会は改革の先例に注目するようになりました。感情的な議会不要論が、間接民主主義の中で「いかに自己矛盾であるか」ということを示す必要性に駆られたのです。

 私は「議会基本条例」に、そのための力強いツールになることを期待しています。ここで市民にしっかり認識してもらいたいことは、議会は合議制の機関であり、そこで議決を得なければ、執行機関は「お金をびた一文使えない」という強い力を持つということです。その機関としての力を発揮する決まりごとが、条文で整理されています。

 藤沢市では現在、2013年4月の議会基本条例制定に向けて、「素案」に対するパブリックコメント募集を行っています。私も検討会の委員に手を挙げて、条文づくりに1年ほど携わってきました。ここで特に注目しているのが、「議員間討議」と「議会報告会」です。

 「討議」といっても一方的な議員の意見表明にすぎず、「採決では賛否の理由がよくわからないままいつの間にか決まっている」という印象を市民が持つ場面が多々あったと思います。そこが「議会の不透明化」につながっていました。

 しかし、「議会報告会」により、機関としての説明責任が果たせます。ここでは「私は反対したのに……」という理屈は通用しません。議会として決めた以上、その先を「議会報告会」で示すことが大切です。

 検討会の議論の中では、「報告だけでは面白くない」「市民の意見を聞く場のほうが重要」という意見も出ました。しかし、意見を聞いて民意を吸い上げるのは1人ひとりの議員の役目であって、それを議場で議論するというのが「議員の筋」である、と私は考えています。議会報告会を丁寧にやることで、「執行機関と議決機関の関係」が市民にも見えてきて、2元代表制の中での、議会の意義や重要性が理解できるのではないでしょうか。

そして次なるアプローチ

 議会基本条例により「議会のあり方」が整理されると、それを構成する「議員のあり方」が問われてきます。藤沢市議会基本条例の中では「議員の活動原則」として、合議制である議会の中でのあり方や、市民代表としてのあり方がうたわれていますが、それは地方議員の身分を明確化してこそ生きてくるものと考えています。

 現在地方議員は、地方公務員法上、市長や副市長などと同じ「特別職公務員」とだけ定められています。報酬についても、各種審議会委員などと並列の「非常勤」扱いです(例外的に議員の月額制が認められている)。地方分権時代の担い手としての活動が身分的に保証されているのか、非常に疑問を感じています。議会内でも自分たちの身分についての解釈がまちまちで、例えば、一部で「名誉職」の意識が残っていると、機関としての合議が前提である基本条例が生かされません。実は、この議員の身分に関する議論は6年以上前から行われていますが、遅々として進んでいないのです。第30次 地方制度調査会会長の講演においても消極的姿勢が示され、残念に思いました。専業議員として活動する法的うしろ盾について、再度強力にアピールしていく必要があると考えています。

ローカル・マニフェスト推進地方議員連盟(LM地議連)に再度参加して

藤沢市議会議員・有賀正義氏 藤沢市議会議員・有賀正義氏

 LM地議連の立ち上げ当初から参加し、第1回マニフェスト大賞に会派マニフェスト「立志の会八策」で応募。高い評価を受けたのですが、私自身が再選に失敗し、4年間のブランクを作ってしまいました。その間、藤沢市議会も様変わりし、議会改革に向けて進み始めているものの、その入り口の選挙を変えていこう、という機運は下がってしまったように感じています。

 今回LM地議連に再度参加し、以前から頑張っている方や新しく参加し熱く燃えている方にお会いし、自分自身の気持ちを奮い立たせることができました。気が付けば年長の部類に入ってしまいましが、気持ちは若く、分権時代にふさわしい地方議会の実現に向けて頑張りたいと思っています。

著者プロフィール
有賀正義(ありが・まさよし):東京都練馬区出身。1980年早稲田大学理工学部卒。いすゞ自動車で23年間、おもに車両の開発実験に従事。2003年藤沢市議会議員に初当選。2007年次点。不動産会社にて新たな経験を積みながら町内会長、学校評議員などを務め、2011年2期目当選。2012年LM推進地方議員連盟運営委員に参加。ビオトープ計画管理士。趣味はサーフィンで、辻堂の海岸で30年以上のキャリア。56歳。
HP:有賀まさよしオフィシャルウェブサイト
ブログ:有賀まさよしオフィシャルブログ
facebook:masayoshi.ariga / Twitter:@m_ariga
LM推進地議連の連載コラム
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