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【地方議員座談会「当選1回議員」】

新人議員たちは、何を考え、どう行動しているのか6/6ページ(2012/06/05 政治山)

若くして議員を務めている意味とは

神山  最後にまとめとして、議員になってよかったなというところや、若くして議員をやっている意味、やりがいといったことを皆さんに伺っていきます。

井上  私は「県議になってよかった」という視点で、水道事業の話をします。市区町村が基礎自治体、県が広域自治体という構図になっていますが、市区町村は県から県営浄水場で管理するきれいな水を買って、それを市民に売る。市民は使った分だけ水道料金を払うわけです。

 県議として県の水道事業を良くしたいというときにどうすればいいか。それは、市区町村に卸す価格を上げればいい。そうすると、たしかに収入が増えるのですが、一方で、市区町村からすると水道事業の負担が増え、大変になるということです。いきなり県議に当選した人だと、こういうことがわからないんですね。

神山  一面的な見方しかできないということですね。

井上  私は市議会議員としてそういった実態も仕組みも見てきたので、市区町村に卸す価格を上げることは、市民、県民の水道料金が上がることにつながると理解しています。市議会議員を経験したからこそ、こういったことを提案できるんだなと思います。県議としての1年、県に地元の課題を伝えて、市町村の視点にも立って県政を見るということができていると感じています。

鈴木  江東区の議員の年齢構成は30代の女性議員は私1人だけで、女性議員のなかでは最年少です。43人の区議会議員のうち、30代は私のほかに男性2人しかいない。子育て世代の議員が子育て支援の大事さを訴えることができるのが、議員になって良かったと思うことです。IT関係の会社で働いていたこともあり、区の事業でITが適切に活用されているか、IT関係の予算の金額が果たして妥当なのか、そういう議論を自分のバックグラウンドからできるというのは、自分が議員としてやっていく意味があると思います。

草間  いま、古紙などの資源ごみが持ち去られている問題が委員会の議論でなされています。この対策を委員会提案で議員立法して、間もなく本会議で上程されるんです。どこの議会でもそうですが、こういうことをしていると、議員の意識が変わる瞬間が見られるんですね。横浜市議会も、意識が変われば変わるんだなということを実感できています。

 地方分権一括法から約10年、ようやく地方議員が活躍できる環境が揃ってきました。最大会派だからといって、自分が緊張感をなくして腐ることなく(笑)、情報公開をすすめ、政治主導で横浜市を支えていきたいと思います。

菊池  昨年の選挙で、20代が2人当選しました。その他も40代、50代、60代……70代も3人いるという議会に、若い人がぽんと入ってきた。それは「弘前市が変わらないといけない」という有権者の意志だと思っています。今年から、弘前市は一般質問がネット中継されます。これまで保守的だった議会も、若い人たちの意見を取り入れ、変わろうとしている。そしていまはどんどん変えていけるチャンスだなというふうに思っています。

神山  それは甲府でも感じます。

菊池  もう1つは、今、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)が再度、脚光を浴びていると思うのですが、隣近所・地縁・血縁があることで、「お金がかからないけど暮らしやすいまち」というのが可能なのではと思っています。いま、腕にバンドをしていますが、これは弘前市民が応援できる市民球団を作ろうということで作った野球チームのバンドです。市民が参加するサッカーチームもできました。そういう機運がいろいろな分野で出てきて、若い人が社会に参加しようとなっている。そういう状況を、政治的にバックアップして、その団体が発展していくように応援し、弘前を盛り上げていくという役割をやっていきたいと思っています。

地方議員座談会「当選1回議員」

神山  2011年に28歳で当選しました。甲府市では56年ぶりの20代の議員で、戦後最年少議員だそうです。若さ、という面でいうと、地方議会においては「世代交代」よりも、幅広い世代の代表が集まることこそ重要だと感じています。

 若い世代というのは、これから人口が減って辛い状況になっていくときの当事者だということです。私たちが現役でまちづくりができる立場にいるのだから、今のうちにいろいろな人を巻き込んで、未来を変えていけるように意志決定をしていきたいし、問題意識を共有した仲間も増やしていかなくてはと思っています。そういう意味でも、若くしてやっているというのは、将来に責任があると、良い意味でプレッシャーを感じているということでもあります。いまの世代の声を伝えていくという仕事に、やりがいを感じています。

政治山  皆さん、お忙しいなか、本当にありがとうございました。さて。実は今回の企画、座談会で終わりではありません。1つのテーマについて、議員の皆さんに寄稿していただき、それぞれの自治体の状況や取り組みの相違点をあぶり出したいと思っています。

 今回は最初ということもあり、テーマは「私たちの街の紹介~自治体の現状と抱えている課題」です。「人口規模」「予算規模、財政状況」「高齢化率」「これからの人口の推移」「現在、抱えている課題」「若年層の課題」といった内容を入れていただいて、皆さんが所属する自治体がいまどのような状況なのかを整理したいと思います。

 本日はありがとうございました。

一同  ありがとうございました。

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