【地方議員座談会「当選1回議員」】
新人議員たちは、何を考え、どう行動しているのか2/6ページ(2012/06/05 政治山)
井上・草間議員が語る、会派の勢力と議会の緊張感
井上 航(いのうえ・わたる)
1979年東京都生まれ。転勤により東京、名古屋、広島、兵庫などで生活。95年、阪神大震災に被災、政府や自治体の対応に問題を感じ、「人の暮らし・命を守る政治家になる」と決意。2002年、立命館大学法学部を卒業。福祉系人材派遣会社勤務を経て、07年に埼玉県和光市議選で初当選。11年、埼玉県議選に挑戦し、民主党現職を破って初当選。市議4年間の経験を経て、県議会議員の立場から「住み続けたいまち」和光市をよくするため活動中。
HP:埼玉県議会議員 | 井上わたる
神山 井上航さんの埼玉県はいかがでしょう。
井上 埼玉県議会は、定数が94人と大人数なので、会派制度をとらないと収拾がつかなくなります。私は、政党は無所属、会派は「刷新の会」という9人の会派に所属しているのですが、議会構成は、自民会派が過半数を占めています。会派への所属の有無すら問われなかった和光市議会と比べて、県議会には「会派規模重視」という独特の風土があるように思います。
神山 議会のチェック機能という意味ではいかがでしょうか。
井上 和光市議会議員のときは、22人の定数で、そのなかに4人の会派が4つありました。こういう勢力図だと、二転三転というのがあり得ました。委員会で可決した議案でも、本会議最終日の採決でひっくり返る可能性があるので、最後の最後までいい意味で緊張感がありました。4年の任期の中で議案の修正も予算の否決も経験があるので、ただの「追認機関」ではなく、チェック機能という意味での議会の役割を果たしてきたという思いがあります。
では、県議会はどうか。議会構成でいうと、第一党の自民会派が過半数をとっているので、委員会の時点で結果が出ている。その場での質問回数も3回までと決められているため、チェック機能としては改善の余地があると思います。議員個人としての緊張感には変わりありませんが、議会全体の緊張感という意味では、「大きな第一党がある埼玉県議会」と、「本番でひっくり返る可能性のある和光市議会」では違いますね。
神山 横浜市議会も自民会派が最大会派ですね。会派運営やチェック機能の面はどうでしょうか。
草間 剛(くさま・つよし)
1982年、神奈川県横浜市生まれ。2004年、青山学院大学法学部卒業(地方自治法ゼミ)。同年、早稲田大学大学院公共経営研究科に入学し、岩手県江刺市(現奥州市)の議員提案条例制定に尽力。そのときの経験から政策提案を行う議会の実現をライフワークとする。06年、同研究科を修了後、早稲田大学マニフェスト研究所入所。09年、国会議員秘書を経て、11年、横浜市議会議員に初当選。
議会および議員の立法機能に着目し、歴史ある横浜市議会を『立法型』に変えることに重きを置いて活動をしている。毎週木曜22時からインターネットTV「日の出TV」で政策を発信中(第7回マニフェスト大賞受賞)。
HP:横浜市議員 くさま剛 公式サイト
草間 まず、意識的には会派に危機感がないといけないですよね。議会が議論をして1つの答えを出す合議体である以上、1人の意見がかなわない、実現できないというのはあって当然だと思っているんです。370万人の横浜市から86人の議員が選ばれて、1人は4万~5万人に選ばれている責任がある。だからこそ、1人ひとりがどうやって1つの意見にたどり着くか、この「公論の形成」というプロセスが重要で、だからこそ、議会の情報公開は大前提だと思っています。
神山 どうやって情報公開していますか。
草間 選挙のときのマニフェストで約束した政策ごとに、会派で8つのプロジェクトチームを動かしていて、情報公開をしているんですよ。1人ひとりの議員が発信し、会派として発信していく。自民会派はこう思っているけど、では、他の会派はどうなのか、という形で切磋琢磨できています。「いろんな考え方の人がいて、議論でこんな考え方ができました」そこに説明責任を果たして行こうというスタンスは、会派としても年齢が上の人たちも共有していると思います。
神山 自民会派が最大会派として過半数を握っている。その状況のなかで、他の党の意見をどう議会内で反映させていくのでしょうか。
草間 他の会派の人も、委員会で議論ができるから、そこで1つの答えが出ますよね。あと、今、例えば自民会派がちゃんとやらなかったら、次は負ける。最大会派じゃなくなる。そうなると、橋下さんのような人が出てくると思うんですよね。横浜市議会は、実は議会の施設がすごい狭いんですよ。だから直接、市民の方が傍聴できない。議会中継を、インターネットを使って配信したりして、負託された議員が何をやっているのかを積極的に出していくことが重要ですね。
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