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【地方議員座談会「当選1回議員」/私たちの街の現状と抱えている課題】

<甲府市の課題>人口減少社会に対応したまちづくりへのシフト(2012/06/15 甲府市議会議員 神山玄太)

 政治山では、5月24日に行った当選1回の新人議員座談会の議論を受け、自治体ごとの現状と課題を比較するために、参加した5議員から「私たちの街の紹介」と題したコラムを寄稿してもらった。それぞれが所属する自治体の「人口規模」「予算規模、財政状況」「高齢化率」「これからの人口の推移」「現在、抱えている課題」「若年層の課題」を提示してもらい、課題に対して議員・議会・自治体が取り組んでいることを紹介していただいた。第1回は、山梨県甲府市会議員の神山玄太氏の記事をお届けする。

[関連ページ]【地方議員座談会「当選1回議員」】新人議員たちは、何を考え、どう行動しているのか

◇        ◇        ◇

愛宕山の県立科学館から、甲府盆地を一望 愛宕山の県立科学館から、甲府盆地を一望

 甲府市は、山梨県の県都として1889年に人口約3万1,000人で市制を施行しました。1981年に住民登録人口が初めて20万人を超え、2000年11月に特例市(注1)に移行しました。しかし、1986年をピークに減少し続け、現在の人口は19万6,386人です。山梨県のほぼ中央に位置し、南北に縦長の地形をしています。森林の占める面積が大きく、市域の約64.2%を占めます。海抜は、一番低い甲府盆地の底の部分で250m、一番高い金峰山の頂上で2,598mと高低差が2,348mもあります。産業別就業人口は、平成22年の国政調査で、第一次産業2.6%(そのうち農業が2.5%、林業が0.1%)、第二次産業23.1%、第三次産業72.0%となっています。

財政は健全だが、少子高齢化と人口減少が進行中

 次に、将来推計人口の推移をまとめた表1からは、現在、20万人弱の甲府の人口が今後、減少し続けていくことが分かります。2025年には人口が約1割減、2035年には人口が約2割減少します。しかも、15歳未満の年少人口と15歳以上65歳未満の生産年齢人口が減り、65歳以上の老年人口が増えるという少子高齢化の傾向を顕著に現しながら、甲府の総人口が減少していくのが明らかです。人口減少の推移を構成割合で見ていくと、老年人口割合(いわゆる「高齢化率」)は現在すでに約25%です。これが今後15年で約5ポイント、25年で約10ポイント増えていくと予想されています。

 市の財政状況ですが、現在執行している平成24年度一般会計予算(表2)は、当初予算額で総額750億5,955万4千円となっています。内訳を見てみると、医療費助成や保育所運営費、高齢者福祉費などの「民生費」が257億8,594万7千円で、全体の約34%を占めています。

 また、甲府市が発行した市債の状況ですが、一般会計における市債残高は、3月31日現在で607億2,903万円となっています。ここ数年、新庁舎建設費などのために発行した合併特例債(注2)や国の地方交付税の財源が不足しているために発行している臨時財政特例債(注3)によって、市債残高が増え続けています。甲府市は、地方公共団体の財政健全化を示す指標が良好であるとはいえ、今後の少子高齢化の進展と人口減少を考えると、市債が増えていくことには心配があります。

 そこで、私は3月議会で開かれた予算委員会で、今後の市債の発行の見通しについて質問し、臨時財政特例債の発行が終了する平成25年度が市債発行のピークだとわかりました。今後、確実に人口が減っていき、市債を償還する世代も減っていくことから、市債発行がピークとなる平成25年度以降は、市債残高を減らしていくように対応していくべきだと考えています。

いまから人口減少に対応したまちづくりへシフトを

 これからの甲府のまちづくりは、顕著な少子高齢化と人口減少が同時に進むなかで行っていかなくてはならないという、難しい局面に立たされています。どのように将来を見据えてまちづくりを行っていくかが、甲府の抱えている課題の1つだと思います。そして、若年層の課題は、このような社会を生き抜かなくてはならないことです。いままでと同じようなまちづくりを続けていけないことが想定されるなか、人口減少社会に対応したまちづくりに私は取り組んでいきます。

 人口減少社会のまちづくりは、まずは市民と危機感を共有するところから始まると思います。これから少子高齢化と人口減少が進んでいくことは分かっていても、それが生活にどのような影響を及ぼすのか、私たちは具体的に理解できているでしょうか。危機感を共有したうえでまちづくりを進めていかなくては、限られた財源や人的資源を適切に未来のまちづくりのために配分することができません。

 では、この危機感を市民のみなさまと共有するにはどうしたらいいか。私は、市民のみなさまに情報を提示できるように「人口減少社会の中で未来をどう見据えるか」を1つのテーマとした勉強会を今年の4月から立ち上げました。人口減少社会に対応していくために、先進国や先進自治体の政策などを調査し、財政課題なども人口減少と関連付けて議論していきます。この勉強会でこれから1年をめどに結論を出し、議会の場で明らかにしていくことで市民のみなさまと危機感を共有していく。そして、新しいまちづくりにシフトしていかなくてはならないと感じています。

(次回は埼玉県議の井上航氏の「私たちの街の紹介」です)

甲府市議会議員 神山玄太
神山 玄太(かみやま・げんた)
1982年、山梨県甲府市生まれ。高校生のとき、政治・行政による地域づくりに興味を持ち、政治家を志す。2006年、金沢大学法学部を卒業。08年、早稲田大学大学院公共経営研究科修了後、10年までネットメディアで記者として勤務。同年に国会議員政策担当秘書資格を取得。11年の甲府市議選で初当選。議員となってからは「人口減少社会の中で未来をどう見据えるか」という課題に立ち向かっている。甲府市は、現在の約19万7千人の人口が今後15年で1割(約2万人)減るとされており、まちづくりにおいて大きな意識転換が必要との危機感を持つ。生産年齢人口が減り、老齢人口が増える状況で、いかに答えを導き出すかをテーマとしている。
HP:神山玄太のホームページ

(注1)特例市:人口20万人以上の都市で、指定されると都道府県が持つ事務権限の一部が移譲される。[記事へ戻る]
(注2)合併特例債:市町村合併に関連した公共施設の建設費などに充てることができる地方債のこと。[記事へ戻る]
(注3)臨時財政特例債:地方自治体の財源不足を補うために、特例的に認められる地方債のこと。国の地方交付税減額が背景で、地方の財源不足を地方債の発行で一時的に穴埋めする。償還費用は後年度、国が地方交付税で全額負担する。[記事へ戻る]

【表1】甲府市の将来推計人口の推移 [記事へ戻る]

  2010年 2015年 2025年 2035年
人数 割合(%) 人数 割合(%) 人数 割合(%) 人数 割合(%)
総人口
割合は2010年=100
196,454 100 191,605 94 178,562 91 162,853 83
年少人口 24,289 12.4 21,672 10.5 17,878 10.0 15,558 9.6
生産年齢人口 123,308 62.8 116,436 60.0 106,148 59.4 91,999 56.5
老年人口 48,857 24.9 53,497 29.5 54,535 30.5 55,296 34.0

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の市区町村別将来推計人口(平成20年12月推計)」

【表2】甲府市の平成24年度一般会計予算(項目別) [記事へ戻る]

平成24年度当初予算額
(千円)
構成比(%)
議会費 576,040 0.77
総務費 13,290,098 17.71
民生費 25,785,947 34.35
衛生費 10,688,678 14.24
労働費 829,701 1.1
農林水産業費 1,024,178 1.36
商工費 1,015,627 1.35
土木費 5,994,137 7.99
消防費 3,189,708 4.25
教育費 5,972,741 7.96
災害復旧費 4 0
公債費 6,445,210 8.59
諸支出金 227,485 0.3
予備費 20,000 0.03
歳出合計 75,059,554 100

(出典:甲府市 一般会計歳入歳出予算款別一覧表)

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