相次ぐ事業所の閉鎖―障害者就労、「悪しきA型」とは何か? (2017/12/26 日本財団)
事業者の収益意識などめぐり議論
就労支援フォーラムNIPPON2017
障害者の就労継続支援事業のうち、近年、相次ぐ事業所の閉鎖で障害者が職を失い、「悪しきA型」の声も出ているA型事業所問題が今月9、10両日、東京・新宿で開かれた日本財団の「就労支援フォーラムNIPPON2017」でも取り上げられた。事業所の閉鎖は、障害者の就労に対し支払われる給付金(支援報酬)の運用基準を厚生労働省が厳しく見直した影響が大きいと見られているが、一方で収益をどう高めるか、事業者の意識の低さを指摘する声も多く、フォーラムでは企業の参入の是非も含め活発な議論が行われた。
障害者の就労支援施設には「就労移行支援事業」、「就労継続支援A型事業」、「就労継続支援B型事業」の3タイプがあり、問題となっているA型事業所では、通常の事業所での雇用が困難な障害者が能力や知識の向上訓練を受け、一般就労への移行を目指す。2015年現在の全国の事業所数は約3100、ここで働く障害者は約5万3000人に上る。
営利法人が設置する事業所が年々増加、昨年は過半を占め、障害者は雇用契約を結び最低賃金制の適用を受ける。一方で事業者には障害者1人につき1日約6000円、月額12~18万円の給付金が払われ、仮に障害者の労働時間が1日1時間であれば事業者は1時間分の最低賃金を支払えば済み、給付金からこの分と事業経費を差し引いても採算が取れる計算になる。
現実にA型事業所で働く障害者の平均賃金も、2006年の11万3000円から15年は6万8000円と大幅に減少しており、事業所が障害者の就労時間を短縮することで帳尻を合わせている実態もうかがわれる。閉鎖した各事業所には、それぞれに固有の事情があったと見られるが、今年4月の省令改正で給付金からの賃金支払いが禁じられた点が大きく影響したと見られる。
こうした背景を受け、フォーラムで「報酬改定はどうなる?~よりよい施策のための行政と事業者の試行錯誤~」のパネルディスカッションに出席した厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の内山博之障害福祉課長は来年度の障害福祉サービス等報酬改定の基本方針として、一般就労への移行実績や平均就労時間に応じた基本報酬を設定する方針を説明、「障害者が週35時間働く事業所と10時間しか働かない事業所は違う」と指摘した。
フォーラム参加者からは、新しい商品や販路の開拓など収益アップに向けた意識改革の必要性を指摘する意見が多く出され、「一部の“悪しき事業者”のせいで、頑張っている事業者まで誤解されている」といった声も聞かれた。
また「時代に求められる就労継続支援A型の役割」の分科会には、収益性を重視した事業所運営で利用者の賃金アップを目指す社会福祉法人・共生シンフォニーや一般企業、特例子会社、A型事業所の相互連携を目指すベネッセグループの関係者も出席、運営方針などを説明。会場からは「組織を運営する以上、収益は必要」、「障害者就労の職場を確保する上でも企業の参入は欠かせない」といった声が出された。
●はたらくNIPPON!計画(日本財団公式ウェブサイト)
●はたらくNIPPON!計画 ウェブサイト
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