京都・錦市場で障害者就労モデル構築へ―地域福祉と食文化をつなぐ料亭「斗米庵」 (2017/6/30 日本財団)
地域福祉と食文化をつなぐ料亭「斗米庵」
日本財団「はたらくNIPPON!計画」の一環
京都の台所・錦市場(京都市中京区)に、障害のある人が働く料亭を来年1月、開設することになり6月7日、現地で記者発表が行われました。店名は「京都錦市場 斗米庵(とべいあん)」。新たな食文化体験を可能にし、地域の福祉と食文化をつなぐ新しい施設です。一般就労で働く障害者が、一流の料理人の指導の下に、立派な料理人として育ち、他の店舗に人材として輩出される展開も志向しています。日本財団「はたらくNIPPON!計画」モデル構築プロジェクトの一環で、障害者就労の重要なモデルとなり得る試みです。
日本財団の助成を受けて京都錦市場商店街振興組合、NPO法人京都文化協会が連携。京都の有名料理店「祇園さゝ木」、国立京都工芸繊維大学、京都府、京都市が協力する一体となった事業です。現在、築140年以上の京町家だった既存建物(中京区東魚屋町)の一部解体工事などに取り掛かっており、2018(平成30)年1月の開設を目指しています。施設は木造2階建て延べ床面積約160平方メートル。1階28、2階14、計42の客席を設け、6~8人の障害者を雇い、障害者の就労を支援します。
メニューは「祇園さゝ木」の主人・佐々木浩氏のプロデュースのもとに創り出し、錦市場で仕入れた食材を用いながら、京都や全国の料理人とも協力して、次々と新しい斗米庵レシピを生み出していく方針です。建築設計・ブランディングは京都工芸繊維大学にお願いしました。併せて料理人やサービス提供者として障害者を積極的に雇用し、料理人希望の人には実際に、佐々木氏の指導のもと京料理の神髄の技を習得してもらいます。一定期間を終えた研修者は各地方で就職活動を行い、同施設での継続的就労も可能となるように取り組みを進めていく考えです。
「斗米庵」は江戸時代を代表する絵師・伊藤若冲の別号にちなんだ名前です。若冲は錦市場の青物問屋の長男として生まれ、錦市場が閉鎖に追い込まれそうになった事件の解決に自ら奮闘し、市場を救った中興の祖としても知られています。
京都錦市場商店街振興組合の公式ウェブサイトによると、錦市場は「京の台所」として400年以上の歴史がある日本で最も古い市場の一つです。京都の目抜き通り四条通の一本北に位置し、390メートルにもなる商店街の両側に、野菜、京漬物、湯葉、うなぎ、つくだ煮、かまぼこ、干物、乾物から、茶、菓子、寿司、豆腐に至るまで、さまざまな商品を扱う約130もの商店が軒を連ね、地元の人だけでなく多くの観光客が訪れています。
当日の記者発表では、日本財団国内事業開発チームの竹村利道・チームリーダーが「福祉と食文化をつなぐ取り組みについて」と題してあいさつし、日本財団「はたらくNIPPON!計画」の中でも今回は非常に大きい額を助成したことを強調。その上で助成を決めた理由について「一つはこの事業が、京都の文化を守ることにつながること、もう一つは障害のある人が、これまでの福祉施設とは一つも二つもステージが高い現場で働き、地域活性化に貢献できる、と判断した点だ」と指摘し「今までのような助成事業とは異なり、積極的に日本財団が事業構築に関わることで、地域に根差したモデル事業を構築し、障害のある人の『働く』を全力で支えていきたい」と強調しました。
これに先立ち、京都文化協会の田辺幸次・代表理事は「伊藤若冲が振興した錦市場の文化を守っていくため、錦市場の食材を使い、祇園ささきの技を組み合わせて、ランチ・ディナーを展開。ツアー形式で錦市場を案内し、ツアー客が購入した食材を使い、2階の料理教室でコース料理を提供する」と斗米庵の概要を説明しました。
また同組合の宇津克美・理事長は「この事業には二つの意味合いがある。一つには錦市場の振興、400年を超える京の台所としての魅力を高めること。もう一つは障害者も健常者も関係なく同じ一員として働ける社会をつくり、おいしい料理を提供することだ」と述べ、佐々木氏は「料理人として斗米庵で担う役割について」と題してあいさつしました。
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