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倉敷産の地ビール製造所オープン―障害者と地域を繋ぐ拠点に (2017/6/20 日本財団)

NPO岡山マインド「こころ」
障害者と地域を繋ぐ拠点に

精神障害者の支援に取り組むNPO法人・岡山マインド「こころ」は、岡山県産の大麦を使い、倉敷産の地ビールを製造する「新マインド作業所」を完成させ5月24日、同県倉敷市真備町で開所式を開きました。日本財団は障害者就労支援「はたらくNIPPON!計画」の一環として、作業所の開設を支援しています。開所式には伊東香織・倉敷市長、ビール大麦開発者の佐藤和広・岡山大資源植物科学研究所教授・センター長、日本財団の佐藤英夫常務理事らが出席し、障害者と地域を繋ぐ拠点のオープンを祝いました。

障害者全員で歌を合唱。左端は多田NPO代表理事

障害者全員で歌を合唱。左端は多田NPO代表理事

岡山マインド「こころ」は、地域で暮らす心の「病」を抱えた当事者と家族が、安心して生活できる仕組みをつくろうと2002年に設立されました。会員は多田伸志代表理事を含め30人で、そのうち20人が精神障害者です。6年前からグループホーム(8カ所、21部屋)の運営と共に、地ビール醸造販売事業を開始しました。ヨーロッパ産の麦芽(ビールの原料)を使った地ビールは「真備竹林麦酒醸造所」で製造され、倉敷市内のほか、JR西日本車内でも販売され、好評を得ています。

新マインド作業所の全景

新マインド作業所の全景

新設された作業所では、岡山県産の大麦から麦芽を製造し、地ビールの製造・販売を行います。国内のビール類は約9割が輸入麦芽を使用していて、大麦の栽培から醸造まで一貫して地域で行うのは珍しいことです。さらに、岡山県産のドライフルーツを製造するほか、障害児向けの食事を提供する「子ども食堂」、防音の貸しスタジオなども設置する計画です。

開所式は雨の中で行われ、来賓、障害者、家族など約80人が出席しました。多田代表理事の司会で始まり、佐藤日本財団常務理事が「障害者の働く環境はまだまだです。工賃をアップさせるため、拠点を決めて全国的に支援していきます。まず、この作業所を良い事業所にしたい」と挨拶しました。

挨拶する佐藤日本財団常務理事

挨拶する佐藤日本財団常務理事

続いて伊東倉敷市長が登壇し、「きょうは障害者の皆さんが、仕事としてビール製造を成功させるスタートの日です。倉敷で製造されたビールは、G7教育大臣会合でも提供され、高い評価を受けました。ますます頑張って社会に貢献していただきたい」と激励しました。

ビール大麦を開発し、ビール製造の指導をしている佐藤教授は「これまで日本の技術ではできなかったことを色々試しながら、真備町でしかできないビールをつくりたい。それができるのはここだけです」と述べました。同教授は米国から製麦機を購入する際、販売元のベンチャー企業との仲介役を務めました。

挨拶する伊東倉敷市長

挨拶する伊東倉敷市長

製造法などについて語る佐藤教授

製造法などについて語る佐藤教授

この後、多田代表理事が事業内容について説明。「県産の麦を栽培し、ビールにして届けるプロジェクトが『くらしき物語』です。精神障害の人たちが堂々と胸を張って歩けるまちづくりをしたい。地域の方たちに、一生懸命生きている姿を見ていただくことが、彼らを変える一番の原動力になると思います」と述べました。

最後に、精神障害者8人が壇上に上がりました。代表の岡崎寛尚さんは「私たちの願いをかなえてくださったことに厚く御礼申し上げます。私たちも生きていていいのだと感じ取ることができました。全ての想いを込めて歌を歌います」と述べ、全員で「小さき者を打つな」を熱唱しました。

この後、出席者は佐藤教授の案内で作業所内を見学しました。製麦機がいくつも並ぶ中心部では、佐藤教授がビールの作り方を詳しく説明、伊東市長らが熱心に聞いていました。岡山マインド「こころ」では今後、地ビール製造に向けた準備を重ね、来年春の発売を目指しています。

伊東市長らに製麦機について説明する佐藤教授

伊東市長らに製麦機について説明する佐藤教授

さらに、地ビールが飲めるビアホールやバル(食堂とバーが一緒になった飲食店)、カフェを市内数カ所に設置し、障害者と地域住民、観光客との交流の場をつくる計画です。ビアホールやバルは、古民家や回船問屋をリノベーションしてつくります。

◇        ◇

【メモ】日本財団「はたらくNIPPON!計画」
障害者就労の環境改善を目指し、2015年4月から「就労モデルの構築」と「人材育成」を2本柱として全国で展開しています。就労モデルの構築では、全国に100ヵ所のモデル事業をつくり、すべてで成功を目指します。事業評価の軸をきちんとつくる一方、障害者の工賃3倍増にも取り組んでいます。

●はたらくNIPPON!計画 ウェブサイト

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