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参議院議員選挙2013 北川正恭氏インタビュー

第23回参議院議員選挙に見る、今後の政治と参議院の課題 (2013/7/23 早大マニフェスト研究所)

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自民党の圧勝に終わった第23回参議院議員選挙。衆参の「ねじれ」が解消し、今後の安倍首相の舵取りに注目が集まります。そんな今回の参議院議員選挙を振り返り、早稲田大マニフェスト研究所所長の北川正恭早大大学院教授に、今後の政治、参議院のあり方についてお話を伺いました。

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北川正恭教授

早稲田大学マニフェスト研究所所長の北川正恭早大大学院教授

――今回の参院選の最大の争点はアベノミクスの是非を問うことであったように思いますが、一方で、アベノミクスを達成するための国権の最高機関たる立法府のあり方が問われた選挙でもあったと思います。

北川氏 1つの制度ができ、それが長く続くと、初期の目的から外れて制度が形骸化する場合が往々にしてあります。衆参の二院制もそうで、多数決の論理が最優先される「権力の府」である衆院の欠点を補う「良識の府」としての参院が、当初の目的を果たしておらず、衆院と同じように、あるいはそれ以上に権力の府になり、衆参のねじれによって決定できない国会とか参院不要論まで問われた選挙となったと思います。安倍内閣が掲げた異次元の第一の矢の金融緩和、第二の矢の財政出動までは、真正面から激突する反対勢力はなくなりました。ただし、改革の一丁目一番地と総理自らが言う規制改革を伴う第三の矢である成長戦略は、既存の勢力と真正面からぶつかることになります。ここを参議院がどのように判断するのでしょうか。

――今回、日本政治史上初のネット選挙が解禁となりましたが、選挙だけでなく政治に与える影響はいかがでしょうか?

北川氏 今回の参院選からネット選挙が解禁になり、従来の利害関係者の組織選挙より一般の有権者も参加しやすくなりましたが、十分にネット選挙が浸透したとはまだ言えず、組織関係者優先の選挙であったように感じています。このような選挙で組織から選ばれた参院議員が、政党の政権公約で掲げた成長戦略を支持母体の意向に逆らって素直に推進するとは考えにくいと思います。実際に、政党の掲げる政権公約と候補者個人が掲げる公約が明らかに異なることも散見されました。そうなると、与野党のねじれだけでなく与党内のねじれが発生しかねません。既存の勢力に退場を願うという異次元の政策を実施しようとする時に依頼する側の政府がねじれていては、上手くいかないことは自明の理であると思います。

――これからの安倍総理のかじ取りは?

北川氏 安倍総理はねじれの解消を訴える前に、二院制の持つ本来の機能が発揮できる参院の改革を断行することが先であると思います。それぞれの院が持つ特性を発揮して与野党がいろいろな立場から議論を戦わすことは「ねじれ」とは言わず、それこそ成熟した国家の民主政治に欠かせないものです。参院選後、直ちに成長戦略の政策を実施しなければならない安倍政権が本格的な参院改革を実施する時間の余裕はないかもしれませんが、与野党ねじれを解消した政権で、与党内のねじれを解消する政治力を発揮して真の参院改革の第一歩を踏み出すことができれば、野党も党利党略優先の戦術は打ちにくくなり、参院としての機能を高めることにつながります。

――参議院に望むことは?

北川氏 参院自らも違憲状態と指摘されている定数是正の抜本的な改革を総理の指導力を待つまでもなく、衆院に先駆けて実現するなどして立法府の権威を高め、解散のない6年間の任期を有効に使って、単純な多数決には馴染みにくい問題に党派を超えて取り組み、衆参二院制のよさを参院から発揮していただきたいと思います。

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北川正恭(マニフェスト大賞審査委員長、早大大学院教授)
1944年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1972年三重県議会議員(3期)、1983年衆議院議員(4期)、1995年三重県知事当選(2期)。2003年退任後、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)共同代表。2004年早稲田大学マニフェスト研究所設立、所長に就任。2009年11月内閣府「地域主権戦略会議」委員に就任。
■早大マニフェスト研究所とは
早稲田大学マニフェスト研究所(略称:マニ研、まにけん)。早稲田大学のプロジェクト研究機関として、2004年4月1日に設立。所長は、北川正恭(早大大学院教授、元三重県知事)。ローカル・マニフェストによって地域から新しい民主主義を創造することを目的とし、マニフェスト、議会改革、選挙事務改革、自治体人材マネジメントなどの調査・研究を行っている。

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