「ネット選挙」を振り返える座談会
「初めての『ネット選挙』 地方議員反省会」開催(2/3) (2013/8/9 政治山)
ネットの使い方は、発信、情報共有、受信の3種類
菅原直敏 皆さん、こんにちは。この中では唯一、候補者として、みんなの党の全国比例で戦わせていただきました。
これまで私の選挙ではリアルな地上戦を重視してきたのですが、今回はネットを併せてやってきました。
「ネット選挙だから」というのはそんなにないとは思うんですね。選挙期間に更新ができる、「1票入れてください」ということが言えるというだけで、今までの基本的な活動、成果がないと、「ネット」が生きてこないというのが実感です。
ネットを使う人によっても違うと思います。橋下徹(大阪)市長や小泉進次郎衆議などの有名人が使うのと、私たちのような特定の地域でしか知られていない地方議員が使うのとでまったく異なります。ネット選挙に過大な期待をする方々は、有名人の使い方を期待しているんだと思うんですよね。
ネットの使い方には3種類あると思います。それは情報の「発信」「共有」「受信」。前のお2人は、「発信」の部分に重きを置いてご発言されていたと思いますし、皆さんの意識も「発信」の部分にあると思います。
私がネット選挙をやっていて一番役に立ったなというのは、「情報を共有していく」という部分です。リアルに落とし込んでいくと、例えば今回みたいなイベントがあれば、私の写真をフェイスブックにアップして、タグ付けしてくれている方もいらっしゃいます。
また、日本の法律は変っていて、選挙期間中に集会を開くときは、郵送で案内を出せないですよね。私は選挙期間中、毎日のように集会をやっていましたので、フェイスブックのイベント機能を使いました。こうすると効率的にできます。トータル1,000人集めて集会を行おうと思い、それを達成したのですが、こうしたツールがなければできなかったと思っています。
今回の選挙の選対で情報共有の部分で使ったのは、フェイスブックのグループ機能とメッセージ機能、そしてLINEです。グループ機能を使えば、データや写真、動画などで一気にみんなへの情報共有が可能です。皆さんの次の選挙でも、身近な方が使えるようにしておけば、ものすごく効率的にスタッフ間でやり取りができると思います。
LINEの可能性と危険性
菅原 3点目の「情報受信」についてですが、私のチラシにはツイッター、フェイスブック、そしてLINEの連絡先を入れておきました。この中で選挙期間中に一番、連絡が来たものはなんだと思いますか?
実は、LINEなんです。今は使っている人が一番多くて、私の感触ではLINE、フェイスブック、ツイッター、そしてメールという順です。
LINEは若い世代が多くて、私はすべて連絡先をオープンにしているのですが、LINEは200~300人の友人の中で半分くらい高校生だったりもします(笑)。
1つネット選挙で問題だなと思ったのが、私、なりすましの被害にあったんです。LINEのグループをなりすましアカウントに乗っ取られてしまい……だから、1人ひとりに「あれは僕じゃないですよ」と言って回りました。これも十分怪しいのですが……(笑)。
地方議員の方にとっては、フェイスブックやLINEは役に立つツールだと思うんです。でも、例えばフェイスブックで悪意を持った人が、ある候補の友人に「この人はこういう悪い人だよ」とやったり、なりすましのアカウントを作られてしまう可能性もあります。
なので、あんまりネットに依り過ぎると痛い思いをするかもしれない。そういったものへの対策は必要かなと、選挙をやっていて感じたのは以上です。
有権者が見たい情報と、議員が見せたい情報にズレ?
阿部 貴重なお話をありがとうございました。
今回、パネルディスカッションを行うということで、私のフェイスブックやツイッターで質問を募集してみました。
「有権者が見たい情報と、議員が見せたい情報のズレがあった」という声がありましたが、そのあたりのマッチングは必要かなと感じています。
そのほか、「参院選が終わってしまうと更新がない」「ツイッターで候補とやり取りをしたかったが、反応がなく残念」といった意見がありました。実際に参議院選挙を戦われて、いかがでしたか?
山下 確かに、やり取りというのは課題です。「発信したい情報と聞きたい情報がズレる」という点では、「候補者の生の声は聞きたい」とは言っても、なかなか本人が反応するのは難しい。そういう面では、ユーストリームをやるとソーシャルメディア上の意見が横に出るので、その場で答えるというのは使えるかもしれないと思いました。
森 「見たい情報と見せたい情報のズレ」というのはその通りだと思います。ただ、ネット選挙は選挙期間中なので、活動していると「今、コレをやっています」という情報を発信しがちになっています。でも、有権者がどういうことを知りたいのかというのは、「どういう考え方なの?」「何をしてきた人なんだろう?」というところなんだと思います。
しかし、別に選挙期間中に限った話ではなくて、日頃から発信をして、選挙期間中は「ここに書いていますよ」といったアーカイブのリンクを紹介できるようにしておく、そういうことが必要になっていくのかなと思いました。
「双方向性」については、すべて本人が期間中に答えていくというのは大変です。なので、例えば17日間の有権者の反応を集約して、代表的な質問に対して、「どう答えますか」ということを本人に聞いてスタッフが対応していく。参院選では本人が個別に答えるのは不可能です。基礎自治体の議員の選挙ではある程度はできるかなとは思いますが、感覚的にはそういうことです。
菅原 最近、フェイスブックでは私のタイムラインでも、盆踊りの投稿ばかりで辟易(へきえき)しているのですが……(笑)。ただ、それは自分に対する反省も含めてです。
もったいないと思ったのは、端的に分かりやすい形で、政策について発信する人が少なかったことです。私は、自分の政策集からいくつかピックアップして小出しに投稿していたのですが、一番シェアされたのが、実は政策なんですね。
フェイスブックの「いいね!」やシェアの数で、有権者の意識を図るツールとして、有権者が求めているものを把握できた選挙でした。
ネット選挙の課題を聞く
市ノ澤充(政治山) 今回は貴重なご意見、ありがとうございます。
1つお伺いしたいのですが、実際にネット選挙活動としてフェイスブック、ツイッター、ホームページとやっていくと手が回らなくなってくると思います。実際に、ネット選挙を戦われてご苦労されたところ、その辺をどのようにクリアされたのかを具体的にお伺いできればと思います。
森 双方向でやり取りをするのがネットの1つのよさではあると思うのですが、それをなかなかやりきれないわけですね。
なので、ソーシャルメディアでいただいたご意見を自動的に集計して、「こういう層からこういう質問がこれだけ来ている」ということがすぐに分かるツールがあれば、こっちとしてもやりやすいし、有権者と候補者のつながりを深められるのではと、やっていて、それ(ツール)が欲しいなと思いました。
山下 結局、候補者のやりたい政策、実績というのがホームページに出ると思うんですね。ある候補の政策を見たいというときに、ホームページに流れていったんではないか。なので、どういう発信をホームページでしていくかが、問われるのかと思います。
関心が高いもの、得意な分野についてホームページに載せて、「この人は何を考えているのか」「これから何をやっていくのか」というのを明確に発信する。そして、そこにアクセスがあれば、支持を得られるというのがあるんじゃないかと思います。
選挙期間前にネットの情報を充実をさせておくというのが、ネット選挙上の広報活動として重要ではないかなと思います。
菅原 私は、メールマガジンを10年間続けています。法改正でも、メールマガジンは継続的に利用していれば、そのまま使えるので苦労はなかったのですが……やはり法律がおかしいですね。
メールは政党と候補者ができて、それ以外の人はできない。でも、フェイスブックやLINEでのメッセージはできる。これはおかしいし、分かりづらい。そもそも、取っ払ってしまうべきだと思いますよ。(次ページへ続く)
関連記事
LM推進地方議員連盟 サミット2013「次世代議会のコミュニケーション戦略を考える」開催
特集「参議院議員選挙2013」