[長崎・諫早市]文章300文字以内の法則? 「市の総合戦略」をしっかり読ませる広報紙の戦略に脱帽 (2016/5/30 あんびるえつこ)
この記事は「広報諫早 平成28年6月号『未来をつくる諫早市まち・ひと・しごと創生総合戦略』」を紹介し、コメントしたものです。
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もう10年以上前のことになります。ある生活情報雑誌で10ページほどの企画を任されたことがありました。その時、編集長に言われたのが「今はみんな読書しないから、長い文章は読めないのよ。だから文章は短く、短くね!」ということ。もう、しつこいように「短く」を連呼されたのを覚えています。
「長い文章は読めない」。では、一体、どのくらいなら読んでもらえるのだろう、短い文章ってどのくらいの文字数を指すのだろう…。そんな疑問に答えをくれたのが、小学校のPTAで広報紙の委員をしたときのメンバーです。過去の広報紙を指さして「このくらいの文章が読む限界だよね」「そうそう」と言い合っていたのです。みんなの合意を見て、私は即座にみんなが指をさしていた文章の文字数を数えてみました。すると…それはおよそ300字。それから私の中に、「ひとつの見出しに文章300字以内の法則」ができました。なるほど一気に読める文章量です。
長崎県諫早市の『広報諫早 平成28年6月号』を、ぜひご一読いただきたい。文章が本当に簡潔で「ひとつの見出しに文章300字の法則」で書かれています。特に巻頭特集の「諫早市まち・ひと・しごと創生総合戦略」は見事です。こうした市の総合戦略などは、行政側としては「知らせたいこと」であるにかかわらず、市民は読み飛ばしがち。送り手と受け手の温度差のある情報です。それがまさに、読ませる紙面になっています。
出だしは人口に焦点をあて、国→県→市と段階的に少子高齢化について説明。少子高齢化がもたらす影響、国の対策なども紹介しつつ、市の人口ビジョンにつなげています。そして背景を明確にした上で、市の5つの戦略が明かされていく…。簡潔な文章のみならず、この論理的展開! スリリングですらあります。そうした簡潔さを引き立てる、余白を十分にとった見やすいレイアウトもPDF版で確認することができます。
ただ総合戦略などがこと細かに記述されていても、市民は興味をもちづらく読んでくれません。こうした読ませる紙面が、市民の「なるほど!」「そうか!」「期待しよう!」「では自分も!」という共感を引き出せるのではないでしょうか。
十年以上前に「今は長い文章は読めない」と言われたときには、悲観的な気持ちになったものです。現在に至っては、Twitterの文字数制限は現在140文字。これは160文字制限のSMSにフィットさせるためだったということらしいのですが、この文字数制限が逆に俳句のように創造性や簡潔さを生んできた事実があります。それでなくても忙しい時代です。読ませる紙面のためには、こうした短い文章の長所に大いに学ぶ必要があるのかもしれません。
- [筆者]「子供のお金教育を考える会」代表、文部科学省消費者教育アドバイザー、神奈川県消費生活審議会委員、経済教育学会理事 あんびるえつこ
- [参考]広報諫早 平成28年6月号