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今国会提出予定の独占禁止法改正案について (2019/2/20 企業法務ナビ

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はじめに

 日経新聞電子版は19日付で公正取引委員会が今国会に提出する予定の独禁法改正案の全容について報じました。以前にも取り上げたとおりリニエンシー制度の枠の拡大や課徴金の強化に加えて秘匿特権が盛り込まれるとのことです。今回は国会提出予定の改正のポイントを見ていきます。

法のグローバル化

改正の経緯

 近年日本の経済界ではIoTなどに代表される急激なIT化とグローバル化が叫ばれております。それに伴い各種法令もそれらに適応すべく法改正が進められており独占禁止法も例外ではありません。日本では欧米諸国に比べ独禁法と産業イノベーションとの関連化が長らく活発ではなかったと言われており、事業内容の複雑化に独禁法の適用が追いついていないのが現状です。

 またグローバル化に伴い海外諸国で導入されている諸制度を日本でも導入すべきとの声の高まりもあり今回の法改正の動きのつながったと言えます。以下具体的に見ていきます。

法改正案のポイント

(1)リニエンシー制度の拡充
 独禁法上課徴金が課される対象行為はカルテル、談合などの不当な取引制限(7条の2第1項)、私的独占(同2項、4項)、いわゆるボイコットと呼ばれる共同の取引拒絶(20条の2)、差別対価(同3)、不当廉売(同4)、再販売価格の拘束(同5)、優越的地位の濫用(同6)です。これら課徴金には減免制度が存在します(7条の2第10項~12項)。いわゆるリニエンシー制度のことです。一番最初に申告した事業者は100%免除、2番目は50%免除、それ以降は30%となり、減免を受けられるのは先着順で5社までということです。

 改正案ではこの5社までの上限を撤廃し減免割合も2番目は50%から60%に、それ以降も最大50%を上限として貢献度に応じて公取委が決定できるようになります。

(2)秘匿特権制度の導入
 海外の多くの国の競争法で導入されている制度に秘匿特権制度と呼ばれるものがあります。自社の行為が独禁法に違反していないか弁護士に相談した場合にその内容を秘匿できるというものです。

 具体的には企業側が弁護士とのやり取りが記載されている旨主張すると封筒に封印され、検査担当官以外の公取委職員が審査し、該当すれば返還されるというものです。証拠隠滅や公取委の捜査に支障をきたすとして公取委側は導入には消極的だったとされます。

(3)課徴金の強化
 現行独禁法の課徴金の算定は算定期間内における売上額等に算定率を乗じて行います。算定率は違反行為によって異なり、不当な取引制限では10%、排除型私的独占では6%、優越的地位の濫用では1%、それ以外の不公正な取引方法では3%となります。そしてこの算定率を乗じる基礎となる売上額の算定期間は現在は3年となっておりますが、改正案では10年まで伸長するとされております。

コメント

 以上のように本国会に提出予定の独禁法改正案はリニエンシー制度の拡充により免除の幅が広がり、公取委への貢献度によって順番が遅くなったとしても大幅な減免が期待できるようになりました。また実際に秘匿特権が導入された場合にはより率直に弁護士への相談が可能となります。

 その反面、これまで硬直的で経済界の変化の実情に合っていないと言われていた課徴金が強化されることになります。算定の期間が3年から10年と大幅に伸長され、また優越的地位の濫用にもこの算定期間が適用されると言われております。家電量販店やデパートといった大手小売業でしばしば行われてきた取引業者の従業員派遣でも相当な額の課徴金が課される危険性が生じます。

 これまででも場合によっては100億円を超える課徴金の納付例があった点を考えると企業が傾きかねない額も予想されます。課徴金の対象行為とリニエンシー制度を正確に把握し、また改正後は積極的に弁護士への相談を検討することが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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