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クラウドソーシングで地方創生を実現するのが難しい理由 (2018/10/2 瓦版

クラウドソーシング×地方創生の課題とは

クラウドソーシング(CS)を活用した地方創生は、その普及フェーズから積極的に取り組まれてきた。時間と場所にとらわれない働き方が可能なCSが、仕事がない地方の“インフラ”として機能することで、若年の労働者を呼び込めると見込まれたからだ。

左から吉田社長、いすみ市長・太田氏、Ponnuf山口社長

左から吉田社長、いすみ市長・太田氏、Ponnuf山口社長

人口減に悩む地方。時間と場所にとらわれない新しい働き方を提案するCS事業者。両者の思惑が一致するのも自然の流れにみえる。地方自治体は、助成金を出すなどで誘致に協力。CS事業者も、都心のワーカーらに地方移住を呼びかけ、地方×CSの動きは活発になる。

風光明媚な地方でのゆったりした生活。在宅での仕事も可能。当初こそ、若者も田舎生活を満喫し、新しい生活に希望を抱いたが、次第にトーンダウン。仕事があるといっても月収10万円前後もザラで、助成金の支給期間が終わると、生活の厳しさが切実になり、現実に引き戻されるように地方を後にしていった…。

CSは確かに、どこにいても仕事にありつける次世代型の仕事のプラットフォームだ。だが、正社員並みに稼ぐには相当の実力がなければその実現は難しい。少額の仕事を大量にこなせば並みのスキルでも報酬アップは可能だが、そうなると“営業力”も必要になる。ある程度の収入を確保するとなると結局、CSで稼ぎつつ、他の仕事も掛け持ちするのが、最も手堅いスタイルになる。

都心なら、副収入を得るためのリアルの仕事の選択肢が豊富にある。なんでもやる覚悟なら、確実に仕事にありつける。一方、地方ではCS以外の仕事を探すのは至難の業だ。だからといってCSだけに頼るのも心もとない…。そうなると自ずとその足が都心へ向かうのも無理もない。

クラウドワークスが成果の出る地方創生目指し民間とトライアングルを結成

創業時からクラウドソーシングでの地方活性に力を入れてきたクラウドワークスの吉田浩一郎社長が力説する。「これまでの経験から助成金が出ている間だけ成立する地方創生では意味がないと感じている。だから弊社は、成果にこだわる地方創生を目指している」。つまり、認知から導入までの支援に留まらず「定着」も視野に入れ、地方を活性化し、土地に根付いた経済圏を確立することを目指すのだ。

トライアングル

その実現のカギを握るのは、民間のチカラだ。吉田社長がいう。「地方自治体の協力は必須だが、大事なのは、民間でCSなどからの業務管理を担うようなディレクターの存在。そのトライアングルがなければ、自律的に働く環境は形成されない」。

2018年10月1日、クラウドワークスは千葉県いすみ市とコワーキングをスペースを運営するPonnufとCSによる地域活性化にかかる連携協定を締結した。Ponnufが移住ワーカーのディレクター役を担うことで、吉田社長の思惑に合致することに加え、いすみ市も助成金の使い道をクラウドワーカーの手数料に回すことで、自律的な働きを側面支援。ばらまき型の地方創生とは一線を画している。

人口減少対策に地方は都心からの労働力の呼び込みに躍起になっている。だがそれは、しょせんは限られたパイの取り合いでしかない。そもそも、CSで仕事をあっせんできるといっても、それは都心にいても同様だ。地方がCSで地域活性を実現する方程式が<CS×助成金×民間ディレクター>だとしても、それは最低限のスタートラインに立つための解しか弾き出せない。そのことを認識することが、意義のある地方創生を実現する第一歩といえるのかもしれない。

提供:瓦版

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