消費者団体が着物レンタル業者を提訴、キャンセル料について (2018/9/19 企業法務ナビ)
はじめに
着物のレンタル業者のキャンセル料が不当に高いとして、石川県の消費者団体がキャンセル料の見直しを求める訴えを起こしていたことがわかりました。キャンセル料は料金の70%とのこと。今回はキャンセル料に関する法令の規制を見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、新潟県の着物レンタル会社「スタジオBM」の着物のキャンセル料が、レンタル日の6カ月前から7日前までの場合、レンタル料の70%とする規定を設けているとされます。石川県の適格消費者団体である「消費者支援ネットワークいしかわ」は県内の女性2人から相談を受け、同社に改善を申し入れていたところ、改善がなされず提訴に踏み切ったとのことです。
キャンセル料とは
一般に契約上の義務等の履行がなされなかった場合や、契約そのものが解約された際に支払うことを当事者間で定めたものをキャンセル料や違約金などと言います。旅行会社のツアーやホテルの宿泊予約などによく設定されております。民法上は違約金は原則として損害賠償額の予定とされており(420条3項)、契約自由の原則からも当事者は自由に違約金を決めることができます。しかしそこには一定の制約が存在する場合があります。
消費者契約法による制限
消費者契約法9条1号によりますと、「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える」場合は超えた部分は無効とされます。
他の同種の契約での平均的な損害額を超えてはいけないということです。また10条では「消費者の利益を一方的に害する」条項も無効であるとしています。「平均的な損害の額」とは民法416条にいう「通常生ずべき損害」と同義であるとされております(京都地裁平成24年7月19日)。
宅建業法による制限
宅建業法38条1項では、「宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえる定めをしてはならない」としています。宅建業者が売買契約に違約金を定めても、代金の20%までが限度ということになります。
コメント
本件でレンタル業者が設定しているキャンセル料は6カ月前から7日前までのキャンセルでレンタル代金の70%となっております。同業の同種の契約において半年前のキャンセルで通常、代金の7割り程度の損害がでるかは定かではありませんが、「平均的な損害の額」を超えると認定される可能性はあると考えられます。
通常民法では債務不履行により損害が生じた場合は債権者側が損害の額を相当因果関係の範囲で立証することになります。その手間を省くため賠償額の予定を行うことを認めています。上記法令は事業者よりも交渉力の弱い消費者を保護する観点からその範囲を逸脱しないよう制限しております。
違約金を定める際には、解約等がなされたことによって生じる損害の額を相当因果関係の範囲で見積もり、設定することが無難であると言えます。上記法令を参考に今一度約款等を見直すことが重要と言えるでしょう。
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