労基署が是正勧告、ストレスチェック実施について (2018/8/17 企業法務ナビ)
はじめに
厚生労働省は7日、「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果(2017年度)」を公表しました。昨年度は2万5676の事業場に対して監督指導を行い、その中にはストレスチェックを実施していなかったことにより是正勧告行った例もあったとのことです。今回は労働安全衛生法により義務付けられているストレスチェックについて見ていきます。
ストレスチェック制度とは
近年職場でのストレス等により精神障害を発症し、労災認定される例が増加しており、労働者の職場環境の改善とメンタルヘルス確保の必要性が高まっております。このような背景を踏まえて労働安全衛生法の平成26年改正により一定の事業場でストレスチェックの実施が義務付けられました。これにより個々の労働者のストレスの有無・程度を把握し働きやすい職場環境作りを促進します。
ストレスチェック制度の概要
常時使用する労働者の数が50人以上の事業者は医師、保健師等によるストレスチェックを実施することが義務付けられております(労働安全衛生法66条の10第1項)。検査結果は医師等から労働者に直接通知され、本人の同意なく事業者に提供されることは禁止されます(同2項)。検査の結果一定の要件に該当する労働者から申し出があった場合、医師等による面接指導を実施することが事業者に義務付けられ、申し出を行ったことにより不利益な取扱をすることはできません(同3項)。また面接指導と医師の意見を聴き、必要に応じて就業上の措置を講じることが義務付けられております(同5項、6項)。
ストレスチェック実施の流れ
ストレスチェックの実施に先立ち、常時使用する労働者の数が50人以上の事業者は実施方針を決定し労働者に周知することになります。この際衛生委員会の審議を経ることになります。そして産業医や保健師等によってストレスチェックを実施します。これは定期検診と同時に行うことも可能です。結果は労働者に直接通知し、同意があれば事業者にも報告されます。全体の結果も踏まえ集団分析を行います。労働者の申し出があれば面接指導の実施を事業者が医師に依頼します。その結果、必要に応じて医師の意見を聴いた上で就業上の措置を実施します。ストレスチェック実施後は速やかに労基署に報告することになります。
コメント
現時点でストレスチェックが義務付けられている事業場は常時50人以上の労働者が居るところです。50人未満の場合は努力義務となっております。厚労省の調査結果では実施が必要な事業場の約17%が未実施であり、事業場の規模が小さいほど実施率は低いとされております。ストレスチェックが義務付けられているにもかかわらず未実施の場合、罰則として50万円以下の罰金が課されることがあります(規則52条の21、法100条、120条5号)。
また罰則以外にも、法定のストレスチェック実施違反は従業員に対する安全配慮義務違反となることもあり得ます(5条)。精神疾患で労災認定され、ストレスチェックも未実施であった場合は損害賠償の対象となることも考えられます。従業員50人未満の事業場でも以上の点を考慮してストレスチェックを導入し、職場環境改善を推進することが重要と言えるでしょう。
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