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債権法改正に伴う法定利率の変更について (2018/8/10 企業法務ナビ

関連ワード : 法律 金融経済 

1 はじめに

 改正債権法の施行が2020年4月に迫っています。今回の改正について、従来からの変更点は多々ありますが、今回は法定利率に関する規定の変更について検討していきたいと思います。

裁判

2 法定利率とは

 法定利率とは、金銭の貸し借りに際し、契約当事者間で利率を決めていなかった場合に適用される金利のことを言います。現在は、商行為で生じた債務に適用される商事法定利率(年6%、商法514条)と、その他一般の取引に適用される民事法定利率(年5%、民法404条)の2つがあります。

3 改正点

(1)区別の撤廃
 今回の改正では、商事法定利率が廃止されます。法定利率は、債権の発生原因で区別することなく一本化されます。

(2)変動制の導入
 今後は市中金利(金融市場において、金融機関同士が金銭の貸し借りをする際に適用される金利)に連動する利率変動制が採用されます。これにより、市中金利の変動に合わせて上下させていく仕組みとなります。具体的には、改正法の施行当時の法定利率を3%とし、日銀が公表する短期貸付金利の各5年間の平均を参考に、3年ごとに1%刻みで変動させていくとのことです。

 近年は法定利率が市中金利に比べて高すぎる状況が続いていました。弁済が遅れた場合は遅延損害金が発生し、支払いが遅れるほど利息が膨らんでいくため、債権者の中には、わざと時効直前まで提訴を遅らせるような人も見られたようです。今回、利息が一時的に3%まで下がることで、このような事態が改善されるものと考えられます。

4 今後の実務に向けて

 企業間の取引について、金利は契約書に書いてあることが多いです。ひな型改定の手間をできるだけ省略し、契約内容を固定化させたいという要求からすると、今回の改正が実務に与える影響は少ないと思われます。

 契約書で事前に取り決めがあればその合意が優先されますが、そうでない場合は民法の規定が適用されます。そこで、自社の取引の中に、契約書という形で明確に合意しているわけではないような取引がないか、もう1度確認する必要があります。損害賠償や遅延損害金など、法定債権に関する規定は事前に合意しておきにくいため、このあたりの規定を確認することも必要です。

 利息制限法では、金銭消費貸借における制限利率は年15~20%となっています。今回の改正で、法定利率は債権の発生原因を問わずにいったん3%となりますが、現在、利息制限法を改正するという動きにはなっていないようです。民法の原則との乖離を防ぐため、利息制限法の改正が待たれるところです。

提供:企業法務ナビ

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