紅屋商事株式会社に勧告、消費税転嫁対策特別措置法違反について  |  政治・選挙プラットフォーム【政治山】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
トップ    >   記事    >   紅屋商事株式会社に勧告、消費税転嫁対策特別措置法違反について

紅屋商事株式会社に勧告、消費税転嫁対策特別措置法違反について (2018/7/2 企業法務ナビ

関連ワード : 法律 消費税 

1 はじめに

 平成30年6月20日、公正取引員会は紅屋商事株式会社(以下「紅屋商事」といいます)の消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(以下「消費税転嫁対策特別措置法」といいます)違反を認め、消費税転嫁対策特別措置法6条1項の規定に基づき、同社に対する勧告を行いました。

 平成26年4月1日及び平成31年10月1日に予定されている消費税率の引上げに際し、公正取引委員会は特別措置を設けていますが、中小事業者を中心に、消費税の価格への転嫁について懸念が示されています。そこで本稿では、消費税転嫁対策特別措置法の趣旨を確認し、今回の事例を今後の実務にどのように生かせるかを検討したいと思います。

消費税

2 消費税転嫁対策特別措置法とは

 消費税は製造・卸・小売りなどの各取引の段階で課税されます。消費税は価格に転嫁され、最終的には消費者が負担します。その一方で、各取引の段階で取引先との力関係等、様々な理由で消費税の転嫁ができないことがあります。納税義務者は事業者であるため、転嫁できなかった分は事業者の負担となり、経営に大きな影響を及ぼします。このような経緯があり、消費税の円滑かつ適正な転嫁ができるよう、消費税転嫁対策特別措置法が成立しました。

 消費税転嫁対策特別措置法は3条で、消費税の転嫁を拒むことを禁止しています。公取委が3条違反行為を認定した場合には勧告(6条1項)が行われるという仕組みになっており、勧告が行なわれた旨は公表(6条2項)されることになっています。

 3条の対象となるのは「特定供給事業者」から商品の供給を受ける「特定事業者」に限られます。特定事業者とは、一般消費者が日常使用する商品の小売業を行う者で、(1)または(2)に該当する者を言います。

(1)前事業年度における売上高(特定連鎖化事業を行う者にあっては、当該特定連鎖化事業に加盟する者の売上高を含む)が100億円以上である者

(2)次に掲げるいずれかの店舗を有する者
 a.東京都の特別区の存する区域及び地方自治法第252条の19第1項の指定都市の区域内にあっては、店舗面積が3000平方メートル以上の店舗
 b.前記aに掲げる市以外の市及び町村の区域内にあっては、店舗面積が1500平方メートル以上の店舗のいずれかに該当する法人(以上公正取引委員会規則第3号)

 特定供給事業者は、消費税転嫁対策特別措置法第2条第2項各号で規定される事業者であり、前記(1)の特定事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者をいいます。

3 事案の概要

 紅屋商事は商品単価ごとに本体価格に消費税相当分を上乗せした額から1円未満の端数を切り捨て、取引数量を乗じた額を代金として支払っていました。本体価格123円の商品を1000個納入するとして、本来の納入価格は13万2840円となりますが、実際は13万2000円を支払っていたというイメージです。840円分は相手方事業者の負担となってしまうため、今回の勧告に至ったものと思われます。

 不足分を払うことに加え、消費税転嫁対策特別措置法の研修等、社内体制整備のために必要な措置を講じること、講じた措置について相手方事業者・公取委に報告することを勧告しました。

4 今後の実務に向けて

 消費税転嫁対策特別措置法は消費税の段階的な引き上げに対応するための一時的なものであり、民法・消費者契約法等のメジャーな法律ではないため、大企業の法務担当者であっても、勉強する機会が得にくいというところがあります。まずは今回の事例をきっかけとし、この法律について学んでみましょう。

 消費税は導入時の3%から段階的に引き上げられています。契約書のひな形が作成当時のままになっていることで、消費税を8%で支払っていないということも起こりえます。法改正等があった場合、それが自社の契約書にどのような影響を及ぼすか考えることは、法務担当者の仕事の1つであると思います。消費税転嫁対策特別措置法の対象となる特定事業者等にお勤めの法務担当者様におかれましては、自社の契約書を確認し、消費税が8%になっているか、今一度確認して頂くことが重要であると考えられます。

 契約書作成の局面では、表現方法も問題となります。例えば、○○円(税込み)などの表記にしている場合、消費税の引き上げが契約書に反映されているか、客観的にわかりづらいことがあります。金額の確認は契約書審査の中でも重要であるため、正確な理解が必要となります。この点については、(1)本体価格(税別)などの表現方法の工夫(2)法改正前後の契約書と比較(3)現在のフォーマットを作成した担当者に話を聞くなどの方法で、思い違いを無くすことができるでしょう。

【参考サイト】
・公正取引委員会HP-消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方
https://www.jftc.go.jp/tenkataisaku/hourei_tenkataisaku/GL.html
・消費者庁HP-消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(消費税転嫁対策特別措置法)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/consumption_tax/

提供:企業法務ナビ

関連記事
消費増税への適切な対応求め、医療界の一本化が必要―日病協
独占禁止法違反行為 自主申告による減免制度
なぜ新聞に消費税の軽減税率が適用されるのか?
たばこ増税検討の背景とは?他の増税もありうる?
フリーランスの消費税はどうする?~フリーランスは消費税を請求できる?払う必要がある?~
関連ワード : 法律 消費税