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クラウドソーシングと金融が融合するとなぜ「働き方改革」が加速するのか (2018/5/15 瓦版

クラウドワークスと三菱UFJフィナンシャル・グループとの提携が持つ意味

フリーランスをめぐる環境整備が加速している。副業解禁が浸透し始め、広義のフリーランスの動きが活性化。いよいよ5割弱となり、減少傾向の正社員をしり目に、いわゆる給与収入以外の所得が拡大していることが、大きな地殻変動を呼び込んでいる。その震源は、金融機関。クラウドワークスの三菱UFJフィナンシャル・グループとの提携は、フリーランス最大のボトルネック解消への画期的な一歩となる可能性を秘めている――。

左からJapan Digital Design代表取締役CEO・上原高志氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIO兼グループCDTO・亀澤宏規氏、クラウドワークス代表取締役社長兼CEO・吉田浩一郎氏(都内で)

左からJapan Digital Design代表取締役CEO・上原高志氏、三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIO兼グループCDTO・亀澤宏規氏、クラウドワークス代表取締役社長兼CEO・吉田浩一郎氏(都内で)

フリーランスの賃金水準を会社員レベルに引き上げることなどを目指し、2010年前後に勃興したクラウドソーシング。海外では浸透していたが、日本での普及は未知数だった。正社員が標準の日本では、不安定過ぎ、自由こそあれ、安定には程遠い。仕事の確保や社会保障など“規格外”の雇用形態ゆえの障壁も山積し、正社員になれない人、相当なスキルなある人などが、その中心となり、社会に大きく広がるかは不透明だった。

だが、いまや副業も含めればフリーランス人口は1、119万人(ランサーズ調べ)ともいわれ、クラウドワークスが目指す年間目標総報酬額1.6兆円も夢物語でない情勢だ。フリーランスは基本、報酬を給与という形で受け取らず、金融機関との直接の接点は薄い。この潜在的な巨大金脈を活用しない手はない。クラウドソーシング大手のクラウドワークスと三菱UFJフィナンシャル・グループとの“合体”は、ここ数年の流れに目を凝らせば、ある意味では必然の動きといえる。

クラウドワークスの吉田浩一郎社長は、この提携を「歴史的」と評したが、フリーランスの拡大とその地位向上を目指す上では、まさに画期的な一歩といえるかもしれない。最大の“功績”は、フリーランスが最も悩まされる「信用」問題の解消。金融機関と提携し、独自の決済手段を構築することで、従来の金融関連の与信の常識から解放されれば、最大のボトルネックは、思わぬ形でクリアされることになる。

新しい金融インフラの誕生で一気に進展する「働き方改革」

実際、両社は、合弁会社を設立し、まずは2018年度末をめどにウォレットアプリをリリース。さらに報酬の一元管理などを経て、最終的には独自決済プラットフォームおよび送金ネットワークを開発。個人のための新しい金融インフラ構築を進めている。ここでは、従来の与信に代わり、報酬・消費データを基にした全く新しい個人向けの与信スコアリングが“信用”となり、融資が行われることになる。

高いスキルがあれば、比例して高いスコアが与えられ、報酬が多く消費が少なければ、堅実性から高スコアとなる可能性もあるだろう。もちろん、クラウドソーシング上での仕事ぶりが高評価なら信用度も当然高まる…。こうして、可視化が困難だった「信用」をフリーランスの働きぶりや報酬、さらに消費傾向などからブロックチェーンやAIも活用して複合的に判定。融資額の参考にするという極めて民主的な金融インフラがいよいよその実現へ向け、動きはじめている。

パソコン

最大のボトルネックだった「カネ」の問題がクリアされれば、フリーランスの報酬は安定し、さらには事業拡大という選択肢も自ずと付いてくる。クラウドソーシングでは、信用のなさゆえの低賃金案件も多かったが、こうした問題も金融インフラ構築で信用が可視化されれば、自然淘汰されるだろう。金融インフラについては、日本のクラウドソーシングのパイオニア、ランサーズも新生銀行と業務提携し、同様の動きを模索しており、ワークスタイルとしてのフリーランスの周辺環境は、急速に整い始めている。

これまでにクラウドソーシング提供の各企業は、基盤となるマッチングプラットフォームの充実や報酬アップなどの施策を着々と行い、フリーランスの労働環境を底上げしてきた。最後の砦、といえるカネと信用問題をクリアする道筋が見えたことで、「働き方改革」はいよいよその言葉通りのニュアンスで飛躍的な進展を遂げる土台構築へと大きな一歩を踏み出すことになる――。

提供:瓦版

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