採用に“五月病対策”を盛り込んだ企業の狙い (2018/4/26 瓦版)
五月病をクリアにする、その名も「リセット採用」
ゴールデンウィーク目前。そわそわしながら仕事をしているビジネスパーソンも少なくないだろう。一方でモヤモヤしながら仕事をしている人には、五月病が心配なシーズンだ。そんな中、“5月病対策”を盛り込んだ、期間限定のユニークな採用がスタートした。スマートフォンアプリやWEBシステム開発を手がける(株)テクノモバイル(本社:東京都港区、代表取締役社長:播田 誠)が実施する「リセット採用」だ。
同社採用担当がその狙いを説明する。「今の会社が合わず、このままだと5月病になってしまいそうとお考えの方を対象に、転職により今までの自分を『リセット』して、本当の自分を発揮いただくことを後押しすることを目的にした採用企画です」。モヤモヤしながら日々を過ごしている五月病予備軍にとっては、転職がそれを晴らすきっかけにはなり得るだろう。だが、なぜ、この採用がその役割を果たせるというのか…。
採用の概念を超越する2つの特徴
実はこの採用には、2つの特徴がある。一つは1次面接。もうひとつは入社後に特典があることだ。
詳しく説明しよう。まず、1次面接は、“絶対に受かる”ことになっている。「1次はお互いを見る場と考えています。会社見学会として、弊社を知ってほしいですし、ご自身のこともたくさん教えてほしい。会わなければ分からない個性、良さを感じ取れる場にしたいですね」と同社担当者は優しい口調でその意図を明かした。
もうひとつの「特典」は、採用が決まった入社後に5月病対策になりそうなモノがプレゼントされるというもの。特典は次の7つから、内定者が好きなものを選択する。(1)約1万円分の食事券(2)連続5日間使用のリセット休暇(3)約1万円分のリラクゼーション回数券(4)約1万円分の体験型ギフト(5)好きな案件を担当(6)快眠枕(7)GWもお仕事。
これら特典の選定にあたっては、同社が5月病の予防・対策をリサーチ。「好きなものを食べる、しっかり休暇を取る、体を動かす、質の良い睡眠をとるといった例があったので、それぞれの対策ができる特典をご用意しました。(5)と(7)に関しては自分のやりたい案件なら気持ちも沈まない(ハズ)。逆に長く休むからこそ、連休明けに気持ちが晴れないという現役エンジニアからのリアルな意見をヒントに考案しました」となんとも配慮が行き届いている。
思惑通り優秀人材は集まるのか…
気になるのは、五月病というネガティブな側面が前面に出ている点。これで、本当に優秀な人材が集まるのだろうか…。「企画としてギリギリのラインかな?とは思っています。ですが、環境を変えたい、変えた方が良いと考え、心身に不調が出る前に対策が取れる方はきっとリスク管理の出来る優秀な方であろうと考えます」と同社では前向きに捉えている。
昨今は、複業採用や助っ人採用など、人手不足を背景に優秀人材確保のためなら「来てくれれば、できる限りの融通は利かせます」といったスタンスの採用も増加傾向にある。リセット採用は、それ以前に心身が弱り気味の“潜在優秀人材”へアプローチする、半歩進んだ形の“おもてなし系採用”といえるだろう。
ユニークさが目に付くが、決して生半可な企画でなく、同社はあくまで本気モード。現在の100人体制を2020年に200人体制にする中期計画の軸となる採用企画のひとつとして、大量採用も視野に入れる。
応募条件は、学歴不問で同社に入社希望のエンジニア、デザイナー、ディレクター、営業。募集期間は2018年4月25日から6月29日まで。おもてなし度については、飛び切り魅力的とは言えないが、求職者の立場をキチンと考えていることがにじみでる同社の企画立案の姿勢に共感する人は少なからずいるだろう。その辺りが、同採用の成否を左右することになりそうだ。
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