セブンイレブン勧告に見る下請法違反のリスク対応 (2017/9/28 企業法務ナビ)
1 はじめに
2017年7月21日、セブンイレブン・ジャパンが、下請事業者76社に対し、本来支払うべき金額から2億2746万円を不当に減額していたとして、公正取引委員会による下請法違反の勧告を受けました(同法4条1項3号、減額事例)。
下請法違反で公正取引委員会から勧告を受け、その事実が公表された場合には、企業の信用が低下するといった損失が生じます。このようなリスクを、法務担当者が未然に防ぐために、ここでは下請法のルールや対応策について記載していきたいと考えています。
2 減額事例(下請法4条2項3号)
親事業者は発注時に決定した下請代金を「下請事業者の責に帰すべき理由」がないにもかかわらず発注後に減額することが禁止されています(同法4条2項3号)。また、下請事業者との合意があったとしても、上記規定に違反します。
下請代金の減額は、公正取引委員会の行う勧告の原因として最も多いものです。平成28年度に行われた11件の勧告のうち、下請代金の減額が含まれる事例が10件でした。
3 公正取引委員会による下請法違反の対応
(1)書面調査
公正取引委員会は、親事業者、下請事業者に対して毎年書面調査を行っています。場合によっては、取引記録の調査や立入検査も行っています。公正取引委員会は、親事業者と下請事業者から出てきた書面をつきあわせて、禁止行為に当たるかを判断しているようです。
(2)勧告・公表
下請法違反をしていると判断された場合、公正取引委員から、禁止行為の取りやめ・原状回復・再発防止措置などを求める勧告を受けることになります。
勧告を受けると、従うかどうかを問わず、社名や違反の詳細について、公正取引委員会のホームページに公表されてしまいます。公表された資料には、理解しやすい関係図も記載されていて、しかも検索ページにも残り続けるため、リスクが高いといえます。
公正取引委員会 セブンイレブン・ジャパン勧告の報道発表資料(PDF)
(3)自発的な申出
もっとも、勧告を受けたとしても、下記の条件を満たした親事業者は、社名等の公表を避けることができます。
- 公正取引委員会が当該違反行為に係る調査に着手する前に、当該違反行為を自発的に申し出ている(公取から調査のための電話が来る前の時点で自発的に申し出なければなりません)。
- 当該違反行為を既に取りやめている。
- 当該違反行為によって下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置(注)を既に講じている。
- 当該違反行為を今後行わないための再発防止策を講じることとしている。
- 当該違反行為について公正取引委員会が行う調査及び指導に全面的に協力している。
(注)下請代金を減じていた当該事案においては、減じていた額の少なくとも過去1年間分を返還している。
(4)罰金
発注書面を交付しない、取引記録に関する書類の作成と書類を保存しない場合には、違反した社員のほか、会社にも50万円以下の罰金が科せられます。
書面調査での虚偽報告、立入検査の拒否・妨害というようなことを行った場合にも、罰金が科せられます。
(参考)顧問弁護士相談広場 下請法に違反するとどんなペナルティがある?
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