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U・Iターン就職で最大250万円の奨学金返還補助 岩手県の「いわて産業人材奨学金返還支援制度」とは (2017/9/20 nezas)

岩手県が、1980年代から製造業を中心に積極的な企業誘致を行っています。東日本大震災での被災も契機となり、県ではものづくり産業振興に向けた取り組みがさらに加速していきました。

その一環として始められたのが、県内へのUターン・Iターン就職でものづくり産業に従事する若者の奨学金返還を支援する「いわて産業人材奨学金返還支援制度」です。県の産業への取り組みの歴史や背景事情にも触れながら、制度の詳細を紹介します。

三陸鉄道

岩手県がものづくり産業支援に力を入れる理由

岩手県は2011年に起きた東日本大震災で、沿岸地域を中心に甚大な被害を受けました。発生以降着実に復興を進めてきましたが、2017年1月時点でもなお約1万人が仮設住宅などでの避難生活を送っています。こうした天災に備えるためには、住宅の耐震化や高速道路や石油や天然ガスを運ぶパイプラインの整備を担う建設業をより盛り上げていくことが重要です。これによって災害が起きてもすばやく回復できる強い防災体制が実現できるのです。

また岩手県では現在、International linear Collider(国際リニアコライダー・ILC)の建設計画が進められています。ILCとは、全長31キロメートルから50キロメートルにもおよぶ大規模研究施設のことで、地下トンネルに建設されます。計画を実現するためには高度な建設技術が必要となるのです。

一方で建設業と切っても切れない関係にあるのが、工業です。自動車や半導体関連などの完成品メーカーと、それを支える基盤技術をもつ中小企業が県内に集まれば、優秀な人材が県内に住んで働くようになり、県外への資金流出も抑えることができます。岩手県は県内にこうした「ものづくり産業集積」をつくることも視野に入れているのです。

最大250万円の奨学金返還支援ですぐれた人材を確保

このように、建設業とそれを支える工業がこれからの岩手県の発展を担う存在になるでしょう。この流れをさらに加速させるための取り組みとして、岩手県は将来のものづくり産業を担う人材の確保に力を入れています。

たとえば2017年5月に発表された「いわて産業人材奨学金返還支援事業」は、大学の理工学、薬学、農学、情報学などの学部・研究科を卒業・修了後、岩手県内の企業に8年間就業する予定の人に対して、最大250万円の奨学金返還支援を行うというものです。「登録ものづくり事業所」として認定された企業に就職すれば、より助成率が高くなります。

就職先の業種は、プラスチックやゴム、金属などの製品製造や電子部品や電子回路の製造、電気機械器具の製造など、工業や建設業をダイレクトに支えるものばかり。資金はこの取り組みのために設立された「いわて産業人材奨学金返還支援基金」で集めており、東北電力株式会社や株式会社岩手銀行をはじめとする地元企業が寄附を行っています。

取り組みのベースにある官民学の連携体制

岩手県の産業人材育成に対する取り組みは、最近始まったものではありません。2005年にはすでに「いわて産業人材育成会議」が設置され、官民学が連携した「地域ものづくりネットワーク」も組織されていました。

学校が企業のニーズに応じた専門教育に力を入れる一方で、企業はその受け入れ先となり、行政がネットワーク全体の運営を行うという形が定着していたのです。

県内には「北上川流域ものづくりネットワーク」「釜石・大槌地域ものづくり人材育成会議」「県北ものづくり産業ネットワーク」「気仙ものづくり産業人材育成ネットワーク」「宮古・下閉伊モノづくりネットワーク」という5つの地域ものづくりネットワークがあり、それぞれが連携することで県全体としてものづくり産業を盛り上げる体制が整いました。

県が今回大学や大学院への積極的に支援を行うのは、こうしたネットワークで培われた最先端の技術力に加え、開発力やマネジメント力といった経営の素養や、向上心や意欲を持った人材を県内に招きたいと考えているためだと言います。

産業の発展は、人材の力なしにはなし得ないものです。岩手県は、自県の特色を深く理解したうえで、それに対応したすぐれた人材を呼び込んでUターン・Iターン就職を促しています。このような取り組みは、地方創生を考える地方自治体にとって、参考になるのではないでしょうか。

提供:nezas

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