会社に安住していると失う大事なもの (2017/9/6 瓦版)
変人・安田の境目コラム
会社を辞めて不安以上に想像以上だった「不便」
私は人生で二度、会社を辞めたことがあります。一度目は、26歳で会社員を辞めた時。二度目は、会社が潰れて、社長を辞めた時。状況は違いますが、共通していたことがあります。
それは、不安と不便。会社を離れて生きていけるのだろうか、という不安。全て自分でやらなくてはならない、という不便。とくに不便さは、想像以上でした。
固定収入が無くなるのですから、不安に関してはある程度覚悟していました。でも不便に関しては、想定外でした。とくに社長を辞めた後。知らず知らずのうちに、私は「やってもらうこと」に慣れ過ぎていたのです。
会社はとても便利な場所です。居場所が与えられ、仕事が与えられ、報酬が与えられる。納税も、保険加入も、請求書発行も、すべて会社の誰かがやってくれます。
教育制度があって、当たり前。報酬が増えていって、当たり前。福利厚生も、良くなっていって、当たり前。そう考えている人が、とても多い。
そうだ、そうだ、その通りだ!と賛同する、経営者は多いはず。でも、経営者だって、同じなのです。色んなことを、当たり前のように、やってもらっているのです。
会社にいると失うモノ
私は社長でなくなった時、それを実感しました。いざとなれば、ひとりでも生きていける。そう多寡を括っていました。でも、それは、とんでもない勘違いでした。
社長ほど、自分のことが出来ない人は、まずいません。コピーも取れないし、企画書も作成出来ない。ホームページは作れない、文章は書けない。契約書も、見積書も、自分では作れない。
会社にいると、本当に便利です。とくに社長は、何から何まで、やってもらえます。でもそれと引き換えに、大事なものを失っているのです。それは、自分自身のカタチ。
人には、持って生まれた、社会での役割というものがあります。私の場合は、「常識に疑問を投げかける」という役割。会社にいると、それが分からなくなるのです。
営業、経理、課長、部長、社長、それらは全て、会社での役割です。会社での役割と、社会での役割は違います。本当に大事なのは、社会での役割。
給料を受け取る代わりに、私たちは会社での役割をこなします。同様に、社会での役割も、きちんとこなさなくてはならないのです。それは、人生(命)と引き換えに、与えられた役割だから。でも多くの人は、その役割を忘れてしまうのです。
- <プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
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1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ)は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。
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