京都市の訪日客を徹底解剖 簡易宿所の平均宿泊日数はホテルの2倍も (2017/9/4 Airstair)
京都市は2016年の宿泊客数及び京都観光総合調査データを活用した分析結果を発表しました。本調査では、京都を訪れる日本人客、外国人客に関する居住地や訪問回数、情報源の傾向が明らかになっています。そこで今回は、この観光調査を元に京都を訪れる旅行者の同行を読み解いていきます。
京都市内訪日客、宿泊者数は微増にとどまるも
「京都市外国人宿泊客数」によると、延べ人数は2015年616万人から2%増にとどまる631万人であることがわかりました。一見すると微増にとどまるようにみえますが、本データには無許可の民泊施設への宿泊者数は含まれていないことが影響している可能性もあります。
2014年からの時系列民泊ビックデータを保有するメトロエンジン株式会社の「メトロデータ」によると京都市内の民泊物件数は、2017年7月時点のデータで5,100件(前年比137%)を超えており特に下京区内の物件数(全体のうち24%)がもっとも多くなっています。
また民泊施設への宿泊者数は、110万人にのぼるとみられており京都の修学旅行生数とほぼ同数規模にまで拡大。物件数は右肩あがりに推移しており今後も増えることが予想されます。
京都市内訪日客、平均宿泊日数は1.98泊
京都市の分析結果によると、京都市の延べ宿泊客数は前年から114万人増(+5.6%増)となる2,150万人でうち日本人は1,518万人(全体の70%)で、外国人は、632万人(全体の30%)を占めることがわかりました。
平均宿泊日数では日本人1.38泊に対し、外国人1.98泊であり、外国人の観光客は日本人に比べ長期滞在する傾向にあることがわかる。尚、全国平均は1.54泊であり、京都市内での外国人の宿泊は他地域と比べても長くなっています。
全体 2,150万人(平均宿泊日数1.52泊)
日本人1,518万人(同1.38泊)
外国人 632万人(同1.98泊)
京都を訪れる外国人の国籍とは?
月別・国別京都市外国人宿泊客数(延べ人数)によると、京都市を訪れたのがもっとも多かったのは中国(23.1%)で、次いで韓国(16.6%)、アメリカ(11.3%)と続くことがわかった。対前年比でみても中国(132.7%)、アメリカ(122.7%)、韓国(149.4%)は高い。
国別の平均宿泊日数を比較すると、中国、台湾、韓国などのアジア諸国に比べアメリカやフランス、イギリスなどの欧米諸国、オーストラリアなど遠方の国のほうが平均宿泊日数は長いことがわかります。
欧米豪の訪日客の平均滞在日数は、アジアに比べると長い期間滞在するため、必然的に、宿泊や飲食出費が増えます。また京都を訪れる訪日客はショッピングよりも日本の歴史・文化体験や自然景観を好む傾向にあり、京都から近い奈良、和歌山(熊野古道や高野山)などのエリアへの訪問も多いと言われています。
これらの特徴を持つ欧米豪からの訪日客は、まさに地方創生の大きなカギになるとも言えます。
外国人宿泊者の73.5%がホテルを利用
京都市内では何かと民泊物件での宿泊が話題となっているが、延べ人数で見ればまだホテルでの宿泊数が圧倒的となっています。2016年のホテル・旅館・簡易宿所ほかの延べ人数及び構成比は下記の通りです。(※無許可の民泊施設は含みません。)
・ホテル 4,640,282人泊(構成比73.5%)
・旅館 692,450人泊(同11.0%)
・簡易宿所ほか 982,272人泊(同15.5%)
構成比で見ればホテルが73.5%であり、他の宿泊施設の構成比を圧倒しています。簡易宿所は、構成比15.5%と旅館の11.0%を上回っており、昨今急簡易宿所が急激に増え続けていたことによる影響と見られます。
京都市が公表した旅館業施設数の推移によると、2016年度の市内簡易宿所施設数は1,493件で、2015年度の総施設数(簡易宿所)696件から1年間で約2倍に増えていました。
簡易宿所の平均宿泊日数は3.77泊でホテルを圧倒
ホテル利用の外国人宿泊者が圧倒的多数を占めている現状ではあるが、平均宿泊日数で見ると、また異なった一面が明らかとなる。発表された施設毎の平均宿泊日数は下記。
・ホテル 1.79泊
・旅館 2.07泊
・簡易宿所ほか 3.77泊
ホテルの1.79泊に対し、簡易宿所ほかが3.77泊と2倍以上の宿泊日数となっている。このことから、民泊物件等の利用者はホテル利用者と比べ長期間に渡り滞在し京都観光を楽しむ姿が明らかである。
ホテルの1.79泊という数字は、殆どの利用者が1~2泊の利用となり、通常の観光スタイルと同一と推察される。一方、簡易宿泊ほかの利用者は3~4泊することで、より深い京都観光を行っていると推察される。
外国人宿泊者は現状ホテルへの宿泊者数が圧倒的に多いものの、簡易宿所ほかの利用延べ人数も構成比では既に15%を超えており、存在感を発揮している。2018年には民泊新法の施行が予定されており、民泊新法施行後、宿泊者の施設毎の構成比・平均宿泊日数がどのように変化するかという点は、今後注目に値すると考えられる。
日本までの距離が近いほど、京都滞在率がアップ
全体的に、日本までの距離が近い国ほど日本滞在に占める京都滞在の割合が多くなる傾向にあることがわかりました。
具体的には韓国、中国、台湾、香港などで、これらのアジア諸国からは関西空港への直行路線が多く京都入りするまでに経由する観光地が少ないことや、訪日機会が多く京都に来ることだけを目的にしており、京都以外への旅行は別の機会にと考えている訪日客が多いことが要因となりそうです。
なお、日本人観光客については特に消費単価の高い層は、寺院や名所、桜や紅葉など京都への訪問目的が明確で、情報収集にも積極的であることがわかります。リピーターと同様、旅行ガイドブックのような専門的な情報や口コミによる情報収集を重視する傾向にあります。
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