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デート商法などが取消対象へ、消費者契約法改正への動き (2017/8/8 企業法務ナビ

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はじめに

内閣府消費者委員会は4日、消費者の恋愛感情や不安感などにつけ込んで高額商品を購入させるといった契約も取消の対象とする消費者契約法の改正をするべきとの報告書をまとめました。合理的な判断ができない状況下での契約から消費者を保護する必要があるとのことです。今回は現行の消費者契約法とデート商法の問題点について見ていきます。

デート

消費者契約法とは

消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報量や交渉力の格差にかんがみて、事業者の一定の不当な行為から消費者を保護することを目的とした法律です(1条)。訪問販売や電話勧誘などの特定の類型の取引を対象とした特定商取引法と違い、事業者と消費者間の取引全般に適用されます。消費者契約法では契約の際に不当行為があった場合に消費者はその契約を取り消すことができます。また契約に消費者が一方的に不利になるような条項が設けられた場合も、当該条項を無効とすることができます。現行法の規制内容を以下概観します。

取り消しうる不当行為

(1)不実告知
事業者が消費者に契約を勧誘するに際して、商品の内容、品質、効能、価格や支払い方法などの「重要事項」について事実と異なる告知を行い、消費者が誤認した場合に契約を取り消すことができます(4条1項1号)。

(2)断定的判断の提供
将来においてその価額、消費者が受け取るべき金額その他の将来の変動が不確実な事項について、「断定的判断を提供」し、消費者がその判断内容が確実であると誤認した場合に取り消すことができます(同項2号)。たとえば将来の相場が不確実であるにもかかわらず、確実に儲かりますなどと説明して投資を勧誘する場合が該当します。

(3)不利益事実の不告知
契約勧誘に際して事業者が、重要事項につき、消費者の利益になる旨を告げ、不利益となる事実を「故意に」告げなかったことにより消費者が不利益事実の不存在を誤認した場合に取り消すことができます(同条2項)。販売員の不注意で説明がなされなかった場合や、説明しようとしても消費者が聞かなかった場合は取り消すことができません。

(4)不退去
契約勧誘に際して、消費者が事業者に対し「住居」または「業務を行っている場所」から退去してほしい旨示したにもかかわらず退去しない場合、または消費者が退去したい旨示したにもかかわらず退去させない場合に、消費者が「困惑」して契約した場合に取り消すことができます(同条3項)。この退去する旨とは、契約するつもりはないなどの契約締結の拒絶や、身振り態度といったものも含まれます。

無効な条項

消費者契約法8条から10条には、無効な契約条項が規定されております。まず事業者の損害賠償責任免除条項が挙げられます(8条)。「いかなる場合においても当社は一切の賠償責任を負わない」といった内容のものです。次に過大な違約金条項(9条1号)や過大な遅延損害金条項があります。「契約撤回の場合には、違約金として契約代金の30%をいただきます」といった賠償額の予定が該当します。また過大な遅延損害金とは年14.6%を超える損害金を言います。その他消費者の利益を一方的に害する条項なども無効となります(10条)。

デート商法などにおける問題点

消費者の恋愛感情や、不安感などにつけこんだ契約の場合、上記のような消費者契約法上の取り消し原因に該当せず、従来はもっぱら民法の一般条項や不法行為法などによって救済が図られていました。

デート商法に関する裁判例として、事業者の女性販売員が、高額なアクセサリーなどを信販会社のクレジット契約により購入させた例で裁判所は、「女性販売員と交際が実現するような錯覚を抱かせ契約する不公正な方法による取引で契約は無効」とし、信販会社についてもこのような販売方法を知っていて漫然とクレジット契約を締結したとして不法行為の助長をしているとし、不法行為責任を認めました(名古屋高裁平成21年2月19日)。

このように消費者は裁判所で契約の公序良俗違反や事業者、信販会社の不法行為を主張立証しなければなりません。

コメント

以上のようにデート商法などの場合には消費者契約法による取り消しができず、また販売員は期間が過ぎるまで消費者に接触しクーリングオフをさせないといった事例が散見されました。上記裁判例のように違法で無効であると認められる場合もありますが、多くの場合は主張、立証が困難で認められない例のほうが多いと言えます。消費者委員会の発表でも、どのような場合に救済されるかが必ずしも明確でなく、客観的な要件のもとで取り消し得る場合を明文化すべきとし、「合理的な判断ができない状況」で締結した契約を取り消すことができる規定を新設する必要があるとしました。

また現行の不利益事実の不告知についても「故意に」の要件が厳しく、消費者が立証困難との意見が多いことから「重大な過失」による場合を追加すべきとしています。これまで販売員の未熟や過失による不告知は対象となりませんでしたが、改正が実現した場合にはこれらも取り消される対象となります。改正の流れも踏まえ、どのような場合が違法な勧誘となるのか、また取り消されるのかを正確に把握しておくことが重要と言えるでしょう。

提供:企業法務ナビ

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