本当に進んでるの? 想像以上に低い、「働き方改革」の認知度 (2017/6/16 瓦版)
働き方改革を「聞いたことがない」は4割超
政府が声高に推進する「働き方改革」。大企業を中心に、取り組む企業も増えているが、その認知度は意外なほど低いことが分かった。(株)インテージリサーチ(本社:東京都東久留米市、代表取締役社長:井上孝志)が、自主企画調査として実施した「働き方に関するアンケート」。その結果は、働き方改革の難しさをにじませるものだった。
調査対象は、全国の20~69歳の被雇用者(会社員・公務員ら雇用されて働いている人)の男女5662人。インターネット調査で、働き方の実態や意識を尋ねている。
まず、雇用されて働いている人(会社員・公務員、正規・非正規含む)に「働き方改革」という言葉の認知を聞いたところ、「聞いたことがある」のは58.6%、「聞いたことがない」のは41.4%だった。「聞いたことがある」の数字は妥当といえるが、4割以上が聞いたことがないという結果は、ここ数年の動きを考えれば、予想以上に多い印象だ。
しかも、性別で見ると、男性よりも女性の方が「聞いたことがない」と回答している割合が高い。働き方改革では、女性活躍も重要テーマに掲げられており、「聞いたことがない」の割合の多さは、無関心という次元では考えづらく、取り組みが完全に空回りしているようにも思える。年代別では男女ともに20歳代の認知率が最も低くなっているが、これはある意味で妥当な結果といえるだろう。
では、聞いたことがある人は、どの程度「働き方改革」を知っているのか。最も多かったのは、「自社では取り組んでおらず、新聞やテレビ、他社の事例を見聞きする程度」で85.8%。まさに“他人事”として認知していることが浮き彫りになっている。一方で、今後自社でも取り組む予定、既に取り組みがなされているという人は、それぞれ10%未満にとどまっている。他人事であり、期待もしていないという、クールすぎる結果といえるだろう。
労働者が必要と考える働き方改革の中身
さらに、聞いたことがある人で必要と考える「働き方改革」についても質問している。最も多かったのは、「有給休暇が取りやすくなる」で57.1%。以下、「残業が少なくなる」(48.7%)、「始業・終業の時間が柔軟に決められるようになる」(28.3%)、「同一労働・同一賃金になる」(27.4%)が、続く。
性別および雇用形態別に見ると、正規社員・職員の男性では「残業が少なくなる」こと、女性では「有給休暇が取りやすくなる」、「始業・終業の時間が柔軟に決められるようになる」、「在宅勤務が可能になる(取りやすくなる)」の割合が高い。一方、非正規社員・職員の場合には、男女ともに「同一労働・同一賃金になる」ことを求める割合が高いことが目立った。この辺りは雇用形態の特性やライフ面での事情を反映した結果といえそうだ。
裏を返せば、ビジネスパーソンの多くが、いまだ残業が多く、有休がとりづらく、正規非正規の賃金格差を実感し、在宅勤務制度も導入されていないということであり、働き方改革が停滞していることを示しているといえる。その本質は、そうした表面的な施策だけではないが、働く側の実感として、分かりやすい指標であり、多くのビジネスパーソンが旧態依然の労働環境で働いている様子がにじむ。
リクルートホールディングスの働き方に関する調査でも、業務負荷についての項目で課題が浮き彫りになるなど、この1年で働き方の改善が進んだことを示す結果は得られていない。働き方改革の必要性が訴えられ、その声は大きくなっている。一方で業務量は変わらない。こうした矛盾が、空回りの根源にあり、とりわけ現場レベルでは“改革”を実感できる状況にない。そうした実情が露呈する興味深い結果が出たといえそうだ。
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