奈良県がサマータイム廃止 サマータイムは使えない制度なのか? (2017/6/12 JIJICO)
奈良県 サマータイムやめます!
奈良県は、2012年より実施してきた「サマータイム」を廃止することを発表しました。奈良県では、東日本大震災後の節電対策を目指してサマータイムを導入し、期間中は開庁と閉庁を30分早めるなどの施策を実施してきました。
この度、5年にわたって継続してきたサマータイムをやめる大きな理由は職員から不評だったためで、県が実施したアンケートによると、サマータイムの廃止または見直しを求める回答が66%にも達したそうです。始業と終業時刻が30分前倒しになることで、職員に与える影響はいかほどだったのでしょうか。
育児・介護などを担う職員への負担
サマータイム期間中は始業と終業が30分前倒しになるため、通常の家庭スケジュールも変更を余儀なくされます。終業が早まることについては、家族の時間が増えるなどのメリットが多く見受けられますが、始業が早まることについては、子供のいる家庭や、介護を必要とする家族がいる職員にとっては、かなりの負担だったことでしょう。
たかが30分のことだと思われるかもしれませんが、学校や保育園・介護サービスの事業所では予め受け入れ時間や利用時間が決まっていることが多いため、サマータイム期間中の時間調整に少なからぬ手間がかかったことは容易に想像できます。
日本でサマータイムが受け入れられない背景として、世間の認知度が低いことに加え、行政や民間サービスの受け入れ態勢が整っていないことも理由ではないでしょうか。
奈良県のサマータイムが不評だったのは、全職員一律に始業と終業の時刻を前倒しにしてしまうことで、職員の家庭状況に配慮できなかったことが原因だと考えられます。県は今後、サマータイムに代えて始業と終業時刻を自分で設定できるフレックスタイム制を導入し、より職員のワークライフバランスに配慮した勤務体制を目指していくようです。
サマータイムがきっかけで業務効率化に成功した事例も
奈良県と同じく節電対策をきっかけとしてサマータイムを導入し、業務効率をアップさせることに成功した企業もあります。
西武鉄道株式会社(以下、西武鉄道)では、2011年夏に東日本大震災の被災地のために節電で貢献したいととう職員の声がきっかけでサマータイムが導入されました。電力節減のため、時間内に仕事を切り上げることが奨励されたり、残業を許可制にしたりした結果、業務の効率化が進み時間外労働が大幅に減るなどの副次的効果を生みました。西武鉄道ではこの効果を認め、夏が終わった後も勤務時間の前倒しを通年採用することを決定しました。職員の中に「定時で帰ること」が当たり前として意識づけられ、結果的に生産性の向上や業務効率化につながったと考えられます。
西武鉄道のサマータイムが成功したのは、育児や介護を担う職員にはサマータイムを無理に適用せず、これまでどおりの通常始業時間でも可としたり、業務内容的にサマータイムにそぐわない部署には柔軟に対応するなど、職員の事情や仕事量に配慮し、フレキシブルに対応した結果だと言えるでしょう。
働き方の多様化(ダイバーシティ)が進んでいます。サマータイムだけでなく、どのような勤務制度を採用するにせよ、企業側がいかに従業員個々の状態に柔軟に対応できるかが鍵となるようです。
- 著者プロフィール
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大竹 光明/社会保険労務士
大竹社会保険労務士事務所
平成12年、関西大学社会学部卒業。平成18年に大阪市城東区にて独立開業(平成20年に大阪市中央区に移転)。顧問契約している企業は、大阪を中心に製造業、建設、卸売り、飲食店など多彩で、社員数一名の中小企業から数万人の社員を抱える東証1部上場企業まで幅広い。労働・社会保険の手続き代行、リスク管理型就業規則作成、人事・賃金制度構築支援、労務管理コンサルティングなどを手がける。現在、大阪産業創造館「あきない・えーど」において経営サポーターを務める。
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