誰にとっても身近な問題の認知症 認知症について知っておきたいこと (2017/1/18 JIJICO)
誰にとっても身近な問題になってきた認知症
和歌山県広川町というところの広報誌で認知症特集をしたところ、大きな反響を呼んでいるそうです。認知症に対する関心の高さを感じます。
認知症高齢者の数は、2012年(平成24年)で約462万人と推計されており、2025年(平成37年)には約700万人となると予測されています。(厚生労働省)あと10年もすると65歳以上の5人に1人は認知症であり、予備軍も含めると更に多くなるという計算になります。また、認知症を抱えながら一人暮らしをされている高齢者も地域にはたくさんいます。
認知症に対する偏った情報による混乱
現在、毎日のように新聞やテレビ、インターネットで認知症について取り上げられています。認知症の情報が増えることは悪いことではないのですが、偏った情報も多く高齢者、ご家族が過度に不安になったり、勘違いしてしまったりしている状況が起こっています。
認知症に関する報道は、虐待や介護負担などの問題を「認知症が問題の根源」として捉えて表現しているものが多く、それによって認知症という言葉を聞くとネガティブなイメージを抱いている方がほとんどです。しかし、筆者は認知症になっても自分らしく笑顔で生活をしている人をたくさんみてきました。適切な治療と介護、環境、周りの助けがあれば、認知症になっても穏やかに生きていけるということを是非知っておいて下さい。
認知症になっても幸せに暮らすために
認知症になっても幸せに暮らすことは可能です。そのために、今のうちから以下の点について注意しておいてください。
1)早期発見、早期治療
認知症は治すことのできない病気ですが、進行を遅らせる薬があります。ほかの病気同様で、早期発見・早期治療によってご本人の症状はもちろんでが、その後のご家族の受容や介護負担にも大きく影響してきます。「いつもと違う」というサインを見逃さないことが、ご家族の役割のひとつです。
2)介護保険を活用する
認知症と診断されたら、できるだけ早く要介護認定を受け担当のケアマネージャーをつけることをお勧めします。すぐにデイサービスなどの介護保険サービスが必要ではなかったとしても、今後の予測や対応を一緒に考えてくれるケアマネージャーが近くにいることは心の支えになります。要介護認定やケアマネージャーについてはご自身の地域にある「地域包括支援センター」に相談すると教えてもらえます。
3)ご家族、周囲の認知症への正しい知識をもつ
先述したように、メディアによる認知症の報道は一部の事実であって真実とは限りません。地域で行われる専門医が話す「市民講座」や「認知症サポーター養成講座」などに足を運び、正しい認知症の知識を知る行動を起こしてほしいと思います。
最後に
認知症のことや介護保険のことについて、どこに相談すればよいかわからないという方も多いと思います。そのようなときはご自身のエリアの「地域包括支援センター」に相談して下さい。医療、介護、福祉の専門家が集まっているので、アドバイスやサポートをしてくれます。
- 著者プロフィール
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市村 幸美/看護師
エアリーベル
准看護師、看護師として働きながら認知症病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち、認知症ケア専門士と認知症看護認定看護師となる。 認知症治療病棟やデイサービスなどで実践を積み、介護支援専門員の資格を取得。現在は『認知症の方の不利益をなくする』を理念に相談業や講師業、執筆などフリーランスで色々な活動をしている。
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