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温泉マークより「入浴お断り」のほうが問題では? 留学生の考える「優しい街」とは  ニュースフィア 2016年12月16日

関連ワード : インバウンド 観光 

先日、2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、経済産業省が温泉マークの変更を検討しているということが話題になった。経産省は、観光客により快適な体験を提供するために温泉マークの改正を目指していたわけだが、はたして外国人観光客の視点からみるとその変更は本当に必要なのだろうか?

温泉

◆異なる文化との出会い 「ショック」を求める旅人
旅の動機は千差万別であるが、異なる文化に出会うことが一つの大きな目的だろう。言い換えれば、母国から出ていく人々はカルチャーショックを求めているのであり、そのショックこそが貴重な経験である。

とりわけ日本が海外で非常に人気のある旅行スポットであり、その文化に惹かれる人は少なくない。そのため、日本文化の一部である温泉を表す記号を変えることは、外国人観光客から見ても非常に残念なことだと思われる。

この改正の背景には「外国人に優しい街」をつくるという動機があるのだろう。しかし、外国人観光客からみると温泉マークよりも改善すべきところが他にもたくさんある。というのは日本を訪れる外国人観光客が年々増加しているが、日本はいまだに「旅行しづらい国」という感想を持つ人が少なくないからだ。では、日本を旅行する際に外国人観光客が困ることは何だろうか?

◆街の多言語化 電車の迷宮
まずは言葉の壁であろう。観光地では英語が話せる日本人が増えつつあるものの、観光客とうまくコミュニケーションをとることができないことがいまだに多いのではないかと思われる。とりわけ温泉や花見の会場などで日本の文化に馴染んでいない外国人観光客も快適かつ礼儀正しく過ごせるように多言語でルールの説明をすべきであろう。

日本の電車は、時間の正確さや車両の清潔さなどで世界に広く知られている。しかし一方で、乗り換えがわかりづらいと苦労する観光客も多い。駅構内では英語の表記が増えつつあるものの、電車内のアナウンスが日本語のみで行われていることがボトルネックではないだろうか?

また、東京メトロの乗り換えアプリの英語版はあるものの、JRや私鉄のものはまだない。都内のバスも時刻表をはじめ表記やアナウンスなどが日本語のみのケースが多く、乗りやすいとはとても言えないであろう。

◆「ノー・ミート、フィッシュ、エッグ、チーズ?」
最近日本でもベジタリアンのメニューを提供するレストランが増えつつあるが、日本を旅行するベジタリアンやビーガンの人がしばしば困難に直面している。日本では「ベジタリアン=肉を食べない」というイメージをもっている人が少なからずいるが、場合によっては肉だけではなく、魚(もちろん鰹節も含む)、卵、乳製品などを食べない人もいることを忘れてはいけない。

毎回細かく説明するのは手間のかかる作業であるが、メニューに英語の説明を記入するだけでも、日本のおもてなしを表すと同時にお店側の苦労も減るであろう。

◆「温泉マーク」より「入浴お断り」のほうが問題では?
外国人観光客のために温泉の記号を変えるべきかどうかの議論が行われたところだが、そもそも温泉に入ることさえ許されていない観光客もいることを忘れてはいないだろうか? つまり、ルールが緩められている場合もあるものの、タトゥーを入れている人は温泉や銭湯において「入浴お断り」が現状である。

海外、とりわけ欧米ではタトゥーにネガティブなイメージがないため入れている人が非常に多いが、そのため温泉や銭湯で入浴を拒否されることがしばしばある。タトゥーはシールを貼るだけで隠せるものなので、温泉や銭湯側はシャンプーやタオルとともに販売することはできないだろうか。これこそ「外国人に優しい街」をつくるための一歩ではないかと思えるのだ。

◆誰に対しても優しい街へ
2020年東京五輪・パラリンピックが近づくにつれ、日本ないし東京が変わっていくことは当然であるが、その過程が必ずしもネガティブな変化をもたらすとは限らない。日本人のためにも日本を愛する外国人観光客及び「expats」(日本在住外国人)のためにも伝統を保ちつつ、誰に対しても優しい街を目指すべきではないかと思われる。

提供:ニュースフィア

関連ワード : インバウンド 観光