不買運動にも負けない! 企業の人種差別反対キャンペーン (2016/11/8 EcoNetworks)
米国では、“Black lives matter”(黒人の命だって大切だ)という運動が
社会現象になっています。
この運動は2012年に17歳のアフリカ系アメリカ人が
射殺された事件を発端に始まったもので
アフリカ系アメリカ人に対する“Institutional Racism” (制度に組み込まれた差別)や
警察による過度な権力行使に反対するデモです。
ワシントンポストによると2016年に警察官に殺されたアフリカ系アメリカ人は127人、
白人が239人と白人の方が多いですが
米国における白人人口は62%でアフリカ系アメリカ人は13%です。
2015~16年に米国で警官によるアフリカ系アメリカ人の射殺が相次いたことで
運動が広がっており
これに参加するひとりが警察を狙撃する事件も起こりました。
そんななか、10月に、米国のアイスクリームショップ“Ben&Jerry’s”(B&J)が
“Black lives matter”への賛同を示したことが話題になっています。
B&Jは、米国が制度的な人種差別や偏見を克服するには
まずそれが存在することを一人ひとりが認め、行動を起こす必要がある
と呼びかけています。
ウェブサイトでは
収入、教育、検挙率などにおいて人種差別が存在することを
わかりやすいビジュアルとともに示すことで
多くの人に課題を認識してもらえるよう取り組んでいます。
B&Jのツイッターページはこのコメントが発生された直後
賛同コメントが集まりましたが
このキャンペーンが
警察への報復を助長することを批判する声もあり、
B&JとUnileverに対する不買運動を呼びかける声も上がっています。
これに対してB&Jは、
まず弱い立場にある人々の命を守ることが
すべての命を大切することにつながるとしています。
B&Jはこれまでにも
英国で同性婚の合法化を応援するために一部の商品名を変えたり、
米国の大統領予備選の際にバーニー・サンダースを応援する限定フレーバーを発売するなど
さまざまな政治的課題について立ち位置を明確にしてきました。
B&Jは、自分たちのことを
「社会を変えたいという究極のゴールを持った活動家ブランド」としており
「さ社会課題に明確な主張をすることで社会の反応は分かれるが、
愛される反面、嫌われることも恐れない」という明確な姿勢をとっています。
2015年にはスターバックスも
類似のキャンペーンを行っています。
人種問題を巡る緊張が高まるなか
人種について少しでも多くの人に議論してもらいたいという想いから
カップに人種の共存を意味する”Race together”の文字を書き込むというものでした。
しかし
「スタバの経営陣は白人ばかりで、店員の多くはマイノリティだ」
「出勤前の至福の時間にはそぐわない話題」
など批判が炎上し、中止に追い込まれています。
これに対してCEOのハワード・シュルツは、株主総会で
「他の人たちがコストやリスク、行き詰まり状態と見ることに
機会を見つけることが会社の役割・責任である」とした上で
「このような社会課題について企業として指導的役割を果たすべき」
という主張をしており
人種差別に対する取り組みをこれからも続けていく姿勢を見せています。
スタバではこのキャンペーンのほかにも
従業員同士がこの問題について議論するフォーラムや
一部地域で警官や住民らとの公開討論会を開催しています。
政治に関わる立ち位置の表明はリスクが伴うことですが
B&Jやスタバ以外でも
たとえば2013年の米国の同性婚判決の際に約380社が支持を表明しました。
米国では社会課題解決意識の高いミレニアルズ世代が
今後主な労働者・消費者となっていくなかで
批判を恐れず社会課題解決をリードしていく姿勢を示す企業が増えていくかもしれません。
<参照>
・Ben and Jerry’sのBlack lives matter
・StarbucksのRace together
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