働く意欲を持った高齢者の雇用促進のために企業は何をすべきか? (2016/11/5 JIJICO)
働く意欲を持った高齢者のため国がバックアップへ
労働市場が大きく変化しています。労働力人口が減り、若年者の労働に対する意欲が低下している一方で、働く意欲を持った高齢者がますます増えることは確実と言えます。
高齢者が長くやりがいを感じながら働き続けることができるよう、国としても法律で高齢者向けの職業訓練や職業紹介の実施を進めています。
国のバックアップはとても重要なことですが、たとえ訓練や職業紹介が充実したとしても、高齢者を受け入れる企業がなければ雇用は進みません。高齢者が働きやすい職場とはどんな職場なのでしょうか。
高齢者が働きやすい職場とはどのような職場?
大型ショッピングセンターなどで、高齢の人がショッピングカートや買い物かごの整理をしている姿を見かけたことがある人は多いと思います。多くの小売店では、カート・買い物かご回収の仕事を高齢者に任せています。
私が大手小売業の店舗で人事を担当していたとき、当初はこの仕事をシルバー人材センターに委託していました。それが諸事情で会社との直接採用に切り替えることになり、新聞の折り込み求人広告で、新規に募集をかけました。驚くことに、通常のパート従業員をはるかに超える応募があり、選考するのに非常に苦労をしました。応募者の大半が、名の知れた企業を定年退職した人たちです。中には、元公務員といった人もいました。
勤務時間は休憩をはさんで1日5時間、1カ月15日程度の早番遅番の交代制勤務で、土日祝日も交替で出勤、時給も一律で昇給は原則無しという勤務条件でしたが、何の問題もなく勤務に応じてくれる人ばかりでした。
応募者からは「家にいても、家内にうっとうしく思われ、行くところもそんなにない。週に3、4日でも体を動かせてお金ももらえて、こんなにいい仕事は他にない。」という声が多く聞かれました。勤務に就いてからも、仕事に対する意識が非常に高く、時には仕事仲間とお酒を飲んでカラオケに行ってと、とても楽しんでいるようでした。
高齢者に新たに職業能力を習得させたり、優先的に職業紹介を実施したりする施策も大切ですが、企業側にも高齢者に向けて新たな雇用を創出させる努力も必要ではないでしょうか。
高齢者の健康リスクなどを配慮して職場環境を整えることが必要に
一方で、高齢者は健康リスクも高いということを忘れてはいけません。私が人事管理をしていた高年齢従業員たちも、身体的に調子を崩す人は、一般の従業員よりも高い確率でいました。突然の病気、真夏の熱中症、関節痛・腰痛など、突然働けなくなることはよくあります。ある程度余裕をもった労働時間管理や休日の与え方、温度などの職場環境には、十分配慮する必要があります。
また、高齢者には他の従業員とのコミュニケーション力を備えてもらわなければなりませんし、若い従業員にもいつかは自分も高齢者になるということを意識して、高齢者に配慮した接し方をしてもうよう指導することも必要です。
企業と高齢者当人と周りの従業員の意識が一致して、初めて法律も生きてくるでしょう。
- 著者プロフィール
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小倉 越子/社会保険労務士
小倉越子社会保険労務士事務所
大手小売業の店舗人事教育担当として、800人を超えるパートやアルバイトを管理。非正規労働者の戦力化や活用について現場で学び、社会保険労務士として独立後は同様の問題を抱える企業をサポートしている。
■学歴 昭和62年3月 東京外国語大学 外国部学部 ロシア語学科卒業 平成16年3月 産能大学大学院 経営学修士コース(MBA)修了
■職歴 昭和62年~平成3年 株式会社リクルート 部署名トル 勤務 平成4年~平成11年 ジャスコ株式会社(現イオンリテール)勤務 平成12年~平成17年 日本語学校 日本語教師 平成17年~平成24年 イオンリテール株式会社 勤務 平成24年4月 社会保険労務士として事務所開業
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