主要都市に波及した地価上昇、まだバブルがはじけないたった一つの理由 (2016/10/6 JIJICO)
バブルがいつはじけるのか?
平成28年の基準地価が公表されました。これによれば、商業地の全国平均の地価は9年ぶりに上昇しました。デフレから脱却する兆しが見える一方、大都市ではマンションの販売不振も伝えられます。次の興味はズバリ「いつバブルがはじけるか?」ではないでしょうか?
そもそも「基準地価」のしくみは?
基準地価とは、いわば「不動産価格の定点観測」、1年に1回公表されます。日本にはこの定点観測ポイントが2グループあって、各グループで1年に1回ずつ観測して、半年おきに交互に価格を公表します。そして3月に公表されるものが「公示地価」、今回10月に公表されたのが「基準地価」。名前は違いますが、同じルールで計算されていますので、「地価が上がった」「地価が下がった」という話が半年ごとに出てくるわけです。
上がりきった東京、伸び盛りの政令指定都市、これからの地方都市
そうやって出てきた上昇率は、個別地点の観測結果とともに、2つの軸で総括されます。一つは、住宅地、商業地、工業地の用途別、もう一つは、三大都市、地方都市という地域別です。
注目すべきは地域別で、三大都市(東京、大阪、名古屋)の地価上昇率が鈍り、これらに次ぐ政令市(札幌、仙台、福岡、広島)の伸びが上回っています。しかし、地方都市までは値上がりが波及していません。
・東京など大都市の地価は上昇しきった
・地方の政令市に不動産投資資金が流れている
・小さな地方都市までは波及していない
過去のバブルの例と同様、大都市ではもう高くて買えない、だからその次の政令市レベルに不動産投資資金が移っているのです。
買う人が少ないだけではバブルは弾けない
次に、「もうバブルがはじけるか?」という指摘があります。爆買いも下火、東京のマンションは売れ残っているらしい、もうそろそろ地価が暴落する?という疑問です。
しかし、それは当分ありません。単にマンションが売れ残るだけではバブルがはじけることになりません。バブルが崩壊するとは、「土地を売らないと資金繰りが続かない、しかし不動産を売りたくても誰も買ってくれない」そんな状況のことをいいます。
その昔、日本のバブル景気の頃は、銀行はカネをどんどん貸し、企業は不動産を買い、不動産を買えばあれよあれよと値上がりして、売り抜けてまた不動産を買いました。不動産は利用するために買うのではなく、金儲けの道具として使われたのです。
バブル崩壊は金融引き締めまでない
いまがバブルかどうかは後の歴史が証明しますが、仮にバブルだとして、バブルが崩壊するためには、まず金融の引き締めが必要です。当局が金融引き締め政策をとり、それに従って銀行が貸したカネを回収し、企業は返済のために不動産を急ぐ・・・そんな状況でないと、バブル崩壊とは言えません。リーマンショックの時も同様でした。
現在の日本の金融政策は、絶賛・異次元の緩和政策です。一説には昔のバブル景気の頂点の時よりも貨幣流通量が増えたとか、マンション単価がバブル期を超えたといっていますが、それは馬耳東風。日銀の金融緩和政策が続く限り、バブルの崩壊は始まらないのです。そして、日銀は平均物価上昇率が2%を超える状況が続くまで、日々貨幣を市中に供給すると言っています。
バブルがはじけないたった一つの理由、それは現在、「金融緩和真っ只中だから」なのです。
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