シェアリング・エコノミーでの差別にどう対応? 注目されるAirbnbの対応 (2016/10/6 EcoNetworks)
明らかにアフリカ系とわかる名前の人は、
白人系とわかる名前の人に比べて16%も予約拒否をされる確率が高い-
ハーバード大学でのある調査で、
Airbnb(エアービアンドビー、エアービエヌビー)を利用する際、
名前がアフリカ系であると利用しにくい実態が明らかとなりました。
こうしたホスト(部屋の貸し手)による差別は以前から問題になっていました。
●あるアフリカ系の女子留学生は、宿泊を拒否された上、
ホストから多数の差別的なメッセージを送られ中傷された。
被害者の友人がTwitterに画面を投稿したことで事件が発覚。
それを見つけたAirbnbは、ホストのサービスの利用を禁止した。
●ある黒人男性は、宿泊可能となっている日程で予約をし、
必要な情報と写真をホストに提供した。
すると返事があり、貸そうと思っていた場所が使えなくなってしまったとのこと。
違う日程で再度問い合わせたところ、返事が来なくなってしまった。
そこで白人の友だちに同じ内容で予約を頼んでみたところ、
予定が変わって利用できるようになったので宿泊OKと
すぐにメールが返ってきた。
こうした問題に対し、Airbnbは今年の春先頃から
本腰を入れて対策の検討を始めます。
そして先日、外部有識者をトップに据えて取りまとめた報告書が発表されました。
Airbnb’s Work to Fight Discrimination and Build Inclusion
http://blog.airbnb.com/wp-content/uploads/2016/09/REPORT_Airbnbs-Work-to-Fight-Discrimination-and-Build-Inclusion.pdf?3c10be
そこでは、差別の実態を踏まえた上で、
8つの対策が打ち出されています。
たとえばそのうちの一つが、
the Airbnb Community Commitmentの遵守。
今後、Airbnbを利用する上で(コミュニティに参加する上で)
ホストもゲストも宣言の遵守が必要になります。
そこには以下のような文言があります。
“We believe that no matter who you are, where you are from, or where you
travel, you should be able to belong in the Airbnb community. By joining this
community, you commit to treat all fellow members of this community,
regardless of race, religion, national origin, disability, sex, gender identity,
sexual orientation or age, with respect, and without judgment or bias.”
その他にも、専門のチームを設立し、
差別があったとの報告を受けた場合には迅速に調査を行い、
利用停止や代わりの宿泊施設の提供などの対処を行うこと。
ホストによる排除の余地を減らすために
予約決定における写真の比重を下げる取り組みや、
空いていれば即座に予約が成立するシステムの拡大、
また自社の多様性を高め、
マイノリティに属する人々や事業者に
Airbnbへの参加や事業機会の提供を拡大していくことにも取り組みます。
オンライン・トレーニングの提供も検討しているそうで、
受講したホストには認証が与えられ、
ゲスト側も安心して利用することができるようになります。
米国では、ほんの50年前まで、法律で
不動産屋や宿泊施設における差別が認められていました。
シェアリング・エコノミーの急速な進展により、
古くて新しいこの問題に改めて光が当てられ、改善に向けた取り組みが講じられようとしています。
AirbnbのCEO Brian Cheskyは、
創業時には想定もしていなかった問題とコメントしています。
問題の存在と対処の難しさを認めた上で、
ステークホルダーの声を聞きながら対応していく。
Airbnbの対応のプロセスも、発表された方針も、いずれも参考になるものです。
- 著者プロフィール
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野澤 健 Takeshi Nozawa
代表取締役/CEO。調査分析/エンゲージメント部門を担っています。
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