中国で商標トラブル「IPHONE」アップル敗訴が意味するものとは? (2016/8/22 JIJICO)
中国で多発している冒認出願によるトラブル
いわゆる商標権は、「指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を占有する。」というものであり、その商標を登録することによって初めて権利として認められるものですが、企業や商品などの商標を第三者がいつの間にか出願・登録してしまうことを冒認出願といい、中国ではこの問題が多発していると言われています。
冒認出願された商標権を侵害したとして訴えられた場合には、訴えられた側は、当該商標権者が商標登録出願する前からその商標を継続使用していたことと、自分の商標であることが需要者の間に広く認識されるに至っていることを証明することにより、継続使用が認められますし、そのような商標を不正な手段により登録したことを理由として商標取消請求をすることも可能です。
しかしながら、いずれの対抗手段を執る場合でも、立証には多大な労力を要するため、最終的な解決までに多くの時間と費用を要することは間違いありません。
著名な商標であっても中国では権利が保護されないケースが多い
また、前記のとおり、商標権は特定の商品やサービスについて商標を独占的に使用する権利であるため、第三者がそれ以外の商品やサービスについて同一又は類似の商標を使用したとしても、基本的には文句が言えません。
しかしながら、その商標が著名になってくると、登録された特定の商品やサービス以外に使用された場合であっても、同一の商標権者が提供する商品やサービスであると誤解される可能性が出てきます。
第三者がこのような誤解に乗じて商売をすることは、著名な商標がそれまでに蓄積してきた信用にフリーライド(ただ乗り)することになりますし、逆に、商標権者の信用を落としめることにも繋がりかねません。
このようなことから、著名な商標につき、登録された特定の商品やサービス以外にも保護の範囲を広げるために、日本では防護標章登録の制度が設けられていますが、中国では、日本のような防護標章登録の制度はなく、これに代わるものとして、馳名(ちめい)商標の保護の制度が設けられています。
この制度は、平成26年5月から施行されるようになったものですが、日本のような独立の登録制度ではなく、あくまでも「需要者間に熟知された商標の所有者が、自己の権利を侵害されたと考える場合」といった個別案件ごとに馳名(ちめい)商標の認定が行われるに過ぎないため、権利保護の制度としては脆弱なものとなっています。
中国に進出するときは商標についての事前の調査や対策が不可欠
結局のところ、日本を含めた海外企業が中国に進出してこのような問題に遭遇しないようにするするためは、事前の調査や対策が不可欠となっており、特に、冒認出願を防ぐためには、中国で事業展開する予定のある商品やサービスのみならず、それ以外の商品やサービスについても商標出願をして権利化を図っておくことも十分検討しなければなりません。
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