介護現場に巣食う闇 (2016/8/2 クオリティ埼玉)
痛ましい大量殺人事件が、社会的弱者である障害者支援施設で起きてしまった。被疑者はその施設で働いていた元職員である。
障害者を排除するという偏った考え方を持ち、国、世間にダメージを与え、自身の不満を今回の被害者である障害者にぶつけている。
薬物常用者が法で裁かれず自ら保身する事を熟知したような悪意を感じずにはいられない。
このような施設で働く若者たちだが、本当に好きで職を選んだのか、仕方なく仕事についているのかは定かでない。実際、就職に躓き施設に拾ってもらったと語る他地域の若者もいる。
介護の現場ではほとんどのスタッフが不満や不安を感じながら働いている。離職率も高い。
障害者、高齢者を取り巻く環境、とりわけその介護に従事するスタッフへの待遇処遇は低賃金、過労働、正規採用ではない契約雇用などによる将来への不安不満が渦巻き、大きなマイナスエネルギーを生んでいる。このマイナスエネルギーの矛先はどこにあるのだろう。
利用者への暴力は氷山の一角で、日常で起きているのだ。大きく問題にしない、誤魔化してしまうようなこともあるように聞く。
施設では低賃金とは裏腹に一部の経営上層部者は高級マンションの最上階に居住している現実、年間億単位の施設に対する補助金の行方は一般職員には知らされていない事実など不満と不安が大きく渦巻く深い闇がある。
問題はなかったのか。
一般的に介護施設は外部に甘く、内部に厳しい。
通常、セキュリティの厳しいマンションなどは外部進入者に対し内部から確認後でないとドアの鍵は開錠されない。しかし介護施設の多くは外から来る客などの訪問者は日中ならば余程のことがない限りチェックされずに入館が可能だ。施設によっては夜間も外からの訪問者に対して自動ドアは開く。入所者や利用者が館外へ出ないように内部からは開かない。施設側の操作によって開けてくれるのが一般的だ。このセキュリティシステムに大きな問題があるのではないか。
加えて現場の内部事情に詳しい元スタッフならば犯行はスムーズに行えたはずだ。
今回の事件が引き金となり、介護に従事するスタッフへの雇用条件、処遇の改善と賃金アップ、そして施設セキュリティの見直し等、今後の介護現場での犯罪防止につながる解決策が検討され実施されることを願う。
多田 清成
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