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女性の再婚禁止 100日に期間短縮 改正民法成立 (2016/6/9 JIJICO

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女性の再婚禁止期間が6カ月から100日に短縮されることに

平成28年6月1日、女性の再婚禁止期間を6か月から100日に短縮する民法733条1項の改正が、参議院本会議で可決され、成立しました。この女性のみに適用される再婚禁止期間の規定が見直されるのは、明治31年の民法施行以来初めてのこととなります。

女性

今回の改正は、平成27年12月、最高裁判所が、「女は、前婚の解消又は取消しの日から6か月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。」という民法733条1項の規定につき、女性の再婚禁止期間6か月のうち、100日を超える部分については憲法違反(憲法14条 法の下の平等)であるという判決を言い渡したことを受けた措置となります。つまり、女性の再婚禁止期間は、6か月間(約180日)から100日間に短縮されました。

女性の再婚禁止期間がもうけられたのは子の父親を確定するため

女性に再婚禁止期間がもうけられているのは、前婚と再婚の間が短いと、その女性が子を出産した場合に、子の父親が前婚または再婚のいずれの夫であるのか争いになる恐れが高いためとされています。

民法には、
・妻が婚姻中に妊娠した子は、夫の子と推定する。
・婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、婚姻中に妊娠したものと推定する。
・婚姻の解消又は取消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に妊娠したものと推定する。
という規定があります。

仮に、再婚禁止期間の定めがない場合、たとえば、女性が、A男と婚姻していたが離婚し、すぐにB男と再婚して、200日を経過した直後に子供が生まれたとすると、生まれた子は、B男との婚姻の成立の日から200日を経過した後に生まれているので、B男との婚姻中に妊娠したものと推定され、したがってB男の子と推定されるわけです。しかし、一方で、B男と再婚する直前にA男と離婚していることから、生まれた子は、A男と離婚してから300日以内に生まれたともいえ、A男の子という推定も及ぶことになります。

このように、父親を推定する規定だけでは、父の重複推定が起きてしまって混乱するため、離婚後の再婚を一定期間制限し、離婚後直ちに再婚することを禁ずることで、父子関係の推定に混乱が生じないようにしたのが、再婚禁止規定の目的であります。離婚後300日以内、再婚後200日以内、これらの推定期間の重複を避けるためには、計算上推定が重なる100日間だけを再婚禁止にすれば足りるわけですが、何しろ明治時代には、DNA鑑定はもとより、今ほど妊娠判定の技術も発達していなかったために、ぎりぎりの禁止ではなく、父子関係をめぐる紛争の回避のためにさらに幅をもたせる必要があるということに合理性が認められていました。

今回の民法改正は妊娠判定の信頼性向上などが背景に

しかし、今般、最高裁判所に、6か月の再婚禁止期間が憲法に違反するという争点でもって判断がゆだねられた結果、父の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぎ、父子関係を早期に確定させるという再婚禁止期間の定め自体には合理性があるとしつつ、その目的の観点からは、100日の制限で足り、これを超える6か月までの部分のみ憲法に反するという判断になりました。

これは、妊娠判定の技術等に対する信頼性といった時代背景に基づく部分もあるといえ、この最高裁判所判決の趣旨に鑑み、改正民法は、離婚時に妊娠していないことや離婚後の妊娠であることが医師の証明書で確認できる場合には、前婚終了後100日以内であっても、再婚を認めることとしています。

この点、DNA鑑定技術の進歩を踏まえるならば、そもそも再婚禁止期間をもうける必要さえ合理性がないという意見もあったのですが、前婚と再婚の期間が近接していてさらに妊娠しているケースでは、法的な父子の認定はすべてDNA鑑定といった科学的判定の結果をもって判断するという制度にした場合、法的に父を承認するための一定の手続をとるまでは、父を確定できない状態を発生させることになるため、子の利益の観点から、父の推定規定と、重複を回避する再婚禁止期間の定めという制度には合理性があるとされました。

提供:JIJICO

著者プロフィール
柳原 桑子/弁護士柳原 桑子/弁護士
柳原法律事務所
弁護士として、請負代金の請求や破産事件、建物の明け渡し請求など幅広い範囲でオールマイティーに仕事をするかたわら、離婚問題や相続に強みを発揮。2009年4月、「離婚手続きがよくわかる本」監修。また、2012年4月には「相続・贈与・遺言」を監修している。
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