日本気象協会がドローンを用いた高層気象観測技術の実験結果を発表、京都大学防災研究所と共同で実施 (2016/5/18 DRONE BORG)
一般財団法人 日本気象協会はドローンを用いた高層気象観測技術の研究内容と実験結果を発表しました。こちらの活動は京都大学防災研究所と共同で実施したものとなります。
従来、高層(上空1,000メートル程度まで)における気温や風向風速を観測する手段としてはGPSゾンデ(気温センサーとGPSセンサーを搭載した計測器を、ヘリウムを充てんしたバルーンにつり下げて放球し、上空の気温や風を計測する観測手法)を用いた方法が主流でした。しかし、このゾンデ観測にはバルーンの落下リスクやヘリウム供給の問題、観測コスト、環境への負荷など様々な課題があります。
一方で、近年は技術革新によりドローンの利活用が様々な産業で進められています。ドローンは、再利用可能で環境負荷が少なく、自律飛行が可能でコントロールも容易なことからゾンデ観測が抱えている課題を解決できる新たな高層気象観測技術として期待が集まっています。
そのような背景から日本気象協会では2014年から上空の気象を観測するための新しい手段としてドローンの可能性を検証し
成果と課題が浮き彫りに
実験は京都大学防災研究所 境界層風洞にて2015年11月29日~30日にかけて行われました。機体は重量約3,800グラム、外形寸法950×950×400mm、積載重量約4,000グラム、6枚のローターを持つマルチコプターが使用され、姿勢データの取得のためにモーションセンサーユニットが搭載されていました。
実験の結果、使用したドローンの場合には最大風速で約15m/sの環境下でも観測可能なことがわかりました。また、弱風晴天時の場合には上空1,000メートルまでドローンによる気象観測データが取得することができることも判明しました。
一方で課題としては、遠隔測定器を利用してドローンからリアルタイムにデータを送信する場合に、ドローンのブレード・ローター部分の回転によって受信障害が発生する可能性があることがわかりました。そのため、ブレードの材質を変更することによってこの障害を回避することが可能であることもわかったとしています。
風向風速の測定のためには、ホバリング時の姿勢データが有効であることもわかりました。機体に搭載されているモーションセンサーユニットから、データを取得し、新たに開発された推計手法を利用することでホバリングしているその場の風向風速を推定することが可能です。
気象観測鉄塔との比較
また、別の実験として気象観測鉄塔による気温・風向風速の観測結果との比較実験も実施されました。ドローンと気象観測鉄塔の観測値を比較することで、ドローンによる観測がどれほどの精度があるのかを検証することが狙いです。
実験は2016年2月18日~19日にかけて京都大学防災研究所 宇治川オープンラボラトリーにて行われました。小型超音波風向風速計を搭載したドローンを飛行させ、基礎データを取得。レーザー測高器を利用してドローンの観測高度の精度の検証が行われました。
実験の結果、ドローンによって観測された気温・風速と気象観測鉄塔の観測結果は概ね一致していることがわかりました。また、ドローンによる観測高度の誤差についても十分に小さいことが明らかとなりました。
日本気象協会によると、ドローンの機体に対して観測する機器を追加・変更することにより、従来は実施できなかった上空の様々な観測やサンプリングが可能となるとしています。火山灰や火山ガス、大気汚染物質の観測やサンプリングなどにもドローンが有効活用できる可能性を示唆するもので、同法人では今後もドローンを活用した気象および環境調査技術の向上に務めていきたいとしています。
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