2016年、東大もAO入試を実施 (2016/3/16 JIJICO)
2016年、東大もAO入試を実施
2016年、東大がAO入試を実施し話題になっています。AO入試自体は1990年に慶応義塾大学の総合政策・環境情報学部が実施したのが始まりですが、2000年以降急増し、現在では多くの大学が導入しています。
AO入試は「学力だけでは測れない意欲・能力を評価する」という選抜方法で、一見すると生徒側にもチャンスが増え、良いように見えるのですが、実際には問題点も多く現実は甘くないようです。
学力不足で退学率の高いAO入試合格者
近年、問題視されているのは、AO入試合格者の退学率です。発表されたデータによると、15%(6人に1人)にものぼり、一般受験合格者に比べ2倍以上と言われています。原因は、学力不足。
AO入試は、出願者の人物像を重視する入試ですが、そのためか、一般受験合格者との入学後の学力面での開きも大きく、入学後ついていけない生徒が続出しているのです。
そもそも、大学受験を通して学ぶ事は決して少なくありません。よく、「数学の公式なんて使わない」「単語なんて忘れる」等と言われますが、重要なのは、それらの知識そのものではないのです。
公式を覚えそれを問題に当てはめて答えを導き出すという「論理的思考力」をはじめ、物事を効率よく覚える「暗記力」、最終的な大学受験合格という大きな目標に向けて、日々コツコツ積み重ねるという「習慣」、物事を「理解する力」、「情報収集力」等など、受験を通して学ぶ事は数多くあります。
それらを学ぶことなく入学しているのですから、大学入学後に苦労することになるのは、ある意味当然です。一方で、AO入試はそもそも学力では測れない部分を評価しているのだから、仕方ないという意見も聞こえていきます。しかしながら、学ぶ力・習慣・理解力・論理的思考力など土台となる力が不足している現状で、その後に支障が出てきているというのはどうなのでしょうか。
AO入試が問題になるのは大学にも原因が
では、AO入試の問題点として制度自体が悪いのか?というと、決してそうではありません。もともとAO入試というのは、アメリカの入試制度を真似たもので「大学側が求める学生像をしっかりと設定し、それに合った生徒を合格させる制度」になります。
しかし、現実には、多くの大学では単なる自己推薦入試と変わらず、特に少子化の影響もあって、大学側が早い時期に生徒を獲得する事だけが目標となり、本来の「合格基準」・「大学側が求める学生像」などが軽視されているのです。結果的に、学力面の基準にみたない生徒が合格するという状況に陥っています。実際に、AO入試の本来の目的に沿った「学力だけでは測れない意欲・能力を評価する」という生徒を取ることが出来ているのは、ごく一部の大学に限られていると言えます。
AO入試のもともとの目的はどこにあるのか?それをしっかりと捉え直し実施していくことが求められています。そして、本来のAO入試で求められている「しっかりとした土台を持ち、その上で大学側が求める学生像にしっかりと沿った生徒」が選ばれる事、それが必要とされているのです。もちろん、生徒側にとっても、安易に「合格しやすさ」に飛びつくと自分が後々苦労するという点、「苦あれば楽あり」という点を考え、道を選択して欲しいと思います。