いかに解決するか?子育て世代の教育資金問題 (2016/3/18 JIJICO)
子育て世代の多くが悩む教育費
多くの子育て世代が悩んでいる、教育費について解説いたします。教育費への不安は、同じ年齢の子をもつ保護者の方々ではよく話題になるようです。
しかし実際の各家庭の台所事情を具体的に話す機会は少なく、昔も今もお金に関する悩みをなかなか口に出すことができないのが国民性でもあります。そこである意識調査の結果から、将来への準備と心構えまでをお話ししていきます。
若い人ほど生活設計に対する意識は高い
20歳代~70歳以上を対象とする、家計の金融行動に関する世論調査「二人以上世帯」
(2015)の結果より
「生活設計をたてている」と回答した人が全体の35.1%
「現在生活設計を立ててはいないが、今後立てるつもりである」は38.7%
「現在生活設計を立てていないし、今後も立てるつもりはない」が24.3%
「無回答」が1.8%となりました。
つまり「何らかの形で生活設計を立てている、もしくは立てるつもりである」の回答がおよそ7割超であったことが分かります。多くの家庭では、生活設計つまりライフプランを意識しているといえます。
次に、「生活設計を立てている、もしくは立てるつもりである」の回答の年齢別分析では「20歳代」が90.9%、「30歳代」89%、「40歳代」85.3%、「50歳代」83.7%、「60歳代」69%「70歳以上」51.5%となりました。より若い世代において、生活設計に対しての意識が高いことがうかがえます。
教育費の必要な期間まで準備されていない生活設計
ここまでの結果では、教育資金等を計画的に準備しているようにも思えますが、「生活設計を立てている」という回答の示す期間がどのくらいであるかというデータをみてみましょう。一番多い回答は「10年先まで」34.9%、次いで「3~5年先まで」25.2%、三番目が「20年先まで」18.0%といったところです。
回答のトップである「10年先まで」について考えてみると、教育費の必要な期間と合致しません。仮に大学進学を視野に入れて考えるのであれば22年間という期間となります。ひとりでなく二人三人といった子を持つ場合の教育資金計画は軽く20年を超えてしまいます。
従って、回答第1位の「10年先まで」の期間では、教育費について想像がつきにくいものだといえます。
時系列的に、生活設計、つまりライフプランを作り、予算立てしていかなくては見えてこないものなのです。見えてこないことが不安感につながっています。
年々高騰していく教育費に対しては備えが必要
過去の教育費がどう推移してきたかを国立大学の費用で紹介します。
国立大学と私立大学授業料と入学金の推移より(文部科学省の調べ)
1975年(S50)の国立大学授業料50000円、2015年は約540000円、40年ほどで10倍超という結果です。
関心の高い近年の教育費は(H24年度文部科学省調べ)
国立大学、初年度納入金 約82万、 私立大学、初年度納入金 約130万となっています。子の成長とともに教育費が増大していくこと、その上昇率に見合う準備額を把握しづらいということなのかもしれませんね。
そこで、家計において教育資金を不安なく残していくポイントを2つお話しします。
教育資金を不安なく残す2つのポイント
まず1つ目が、意識改革とお金の勉強です。これから第一子を育てるという方は世代的にも物価上昇の経験があまりないともいえます。前述の内容からも分かるように物価上昇を意識に入れてみましょう。物価が上がる=物の値段が上がる、ですから、相対的に見て物価上昇するとお金の価値が下がるということを理解しましょう。
例えば100万円の車が、1年後に2%物価上昇した場合、102万円のお金がないと購入できません。5年後でしたら約110万円。10年後でしたら約122万円。20年後でしたら約149万円がないと購入できなくなります。
では目の前に、変わらぬ100万円があったとしたらどうでしょう。物理的には100万円の札束なのですが、この場合、約67万のものしか購入できなくなってしまいます。つまり貨幣価値が減少したということです。それが物価上昇による、お金の価値下落という意味なのです。
ですから、時間的にゆとりがあるうちに教育資金データをより多くみてください。そして、その記入してある金額がそのままではないのではないか、お子さんが将来、進学を希望する時期にはインフレ率を考慮しておく必要があるのではないか、といったところをライフプランの予算として、落とし込んでいってほしいということなのです。
2つ目のポイント 適切な金融商品を選択することの重要性
マイナス金利による預金等の預け入れ金利が0.001%という時代です。100万円を1年間預け入れした場合1年間で受取利息10円(税引き前)です。定期預金や保険商品等で、今の利率や予定利率を期間終了まで約束してしまうもの、つまり低い利率で固定されてしまうタイプであればインフレに弱いといえます。
ではどういったものが好ましいのかというと、ある一定期間で利率を更改するもの、予定利率が高めの外貨建ての商品、変額タイプなどがあります。ほかに、時間をかけて運用していく投資性商品などは、経済成長に関わるメリットを享受できる可能性もあります。
何しろ、リスクとリターン・許容度・投資可能期間をしっかりと理解、納得したうえで導入そのものが、ご家庭に馴染むのかをご家族で相談してみてください。
ジュニアNISAということばだけでは、想像しづらいものです。市場が下落している時期に教育資金を必要とする場合が一致してしまうことがないともいえません。いずれにしても、教育資金だけが不安材料なのではなく、リタイア後までも暮らしていけるライフプランを前提にご家庭に合う形を選択していきましょう。
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