企業別労働組合は労働者の代表か (2015/12/11 企業法務ナビ)
従来企業別労働組合は労働者の代弁者として企業と交渉を行ってきました。しかし労働組合の組織率は4年連続で低下し、2015年度の6月時点で17.5%となっています。これは40年以上前と比べると組織率は半分以下にまで落ち込んでいます。労働組合はもはや必要とされていないのでしょうか。
1 そもそも労働組合とは
労働組合とは労働者が団結して賃金や労働時間などの労働条件の改善を図るために活動する団体です。労働者が団結し、使用者と団体交渉、ストライキ等の団体行動をする権利は憲法第28条で保障される権利です。
この権利を具体化するために制定された労働組合法は強力な権能を労働組合に認めています。具体的には(1)労働組合に対し使用者との間で労使双方の基本的労働条件たる労働協約を締結する権能を認めています。また(2)使用者が労働組合員に対して組合員であることを理由とした不当解雇など、不利益な取扱いをすることを不当労働行為として労働委員会に救済を求める権能を認めています。
2 組織率低下の原因
(1)非正規労働者の増加・正社員数の減少
労働組合の7割近くは非正規労働者の労働組合への加入を認めていません。にもかかわらず、全労働者に占める非正規労働者の割合は14年11月時点で38%に達し年々増加しています。一方で労働組合の主体となる正社員は7年連続で減少しています。
労働組合が非正規労働者の加入を認めない理由として、労働組合への関心が薄いことや雇用の流動性から組合費の設定・徴収が困難、組織化を進める執行部側の人的・財政的余裕がないことが挙げられます。
(2)労働組合へのネガティブなイメージ
労働者の地位向上のために存在する組織であるにもかかわらず、政治色の強い活動を行う労働組合が多いことが挙げられます。そこから労働組合というだけで何にでも反対するというイメージや先入観から労働組合に加入することを避ける人が多いと思われます。
(3)労働組合の御用組合化
いわば会社の言いなりと化した有名無実の労働組合のことです。例えば労働条件の変更が労働者にとって不利な内容でも経営者サイドに交渉を申し入れず、組合費だけとられる労働組合が多数存在します。
3 最近の傾向
(1)労使協議の多様化
近年は労働組合による団体交渉という形をとらなくても労使協議機関や職場懇談会が置かれ、使用者と労働者とのコミュニケーションを円滑にする仕組みが設けられていることが考えられます。労働者の意思や要望はこの協議や懇談会を通じて使用者に伝達され、労使コミニュケーションの多様化により、労働組合の代替する役割を担っています。
(2)合同労働組合という選択肢
所属企業や職種・産業の枠にこだわらず、個人単位でも加入できる合同労働組合に加入する労働者が増えています。この労働組合はとりわけ企業の労働組合に加入できない非正規労働者を中心に加入者を増やしています。
4 小括
企業別労働組合の組織率低下は労働環境の変化・多様化に伴い、労働組合が労働者の意思を集約できなくなったことを表しているといえます。
このことは経営における労務リスクを管理し、紛争を事前に予防すべき重要性が増大していることを意味しています。法務部員としては法律相談や社員からのヒアリングを通じて労働者の意思・要望を把握しそれを就業規則などの制度の整備に反映させたり、セミナーの開催・労使コミニュケーションの促進などの役割を担うことが求められているのではないでしょうか。
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