ホンダの定年を65歳に引き上げた取り組みと労働力確保 (2015/12/1 企業法務ナビ)
1、少子高齢化への対応について
ホンダは、定年の現状を60歳から65歳に引き上げる方針を発表したと12月1日付け日本経済新聞速報が伝えた。
このホンダの定年の引き上げは、労働力確保に向けた取り組みであると考えられる。
2、労働力確保の取り組みについて
労働力確保の取り組みとして以下の方法が挙げられる。
(1)外国人労働者を受け入れる方法
この方法の背景には、急速な高齢化による労働力を確保するとともに社会的コストを負担する層を確保することにある。
もっとも、外国人労働者を受け入れる方法は、子供の教育等の必要から事実上生活基盤を日本に移す外国人がおり将来的には社会的費用が増加するおそれがある。社会的費用負担の先送りでしかない。
(2)女性を労働市場へ参加させる方法
安倍政権の政策の目玉の一つは女性の社会進出である。女性の社会進出を図るには、育休や産休などの制度の充実が必要不可欠である。
しかしながら、現実は、結婚や出産を理由に退職が強いられるケースがある。また、違法に辞職させられても女性側で訴えないというケースもある。
まだまだ、女性の社会の進出が難しい環境にあるといえる。
(3)高齢者を労働市場へ参加させる方法
定年延長を導入したりシニアを登用する方法である。フルタイムではなく希望に沿った日数・時間で働きたいというシニアのニーズは多い。ホンダの取り組みは、このようなシニアのニーズの応えた方法といえる。
3、ホンダの取り組みについて
定年を60歳から65歳に引き上げるほか、60歳~65歳の間に自分で定年時期を決める選択定年制を導入する。さらに、家族手当を止めて育児・介護手当てに転換する。また、在宅勤務や育児のための短時間勤務や半日の有給休暇も導入する方針である。そして、給与体系も見直し、給与や賞与を成果に応じて支払う方針だ。
4、ホンダの狙いについて
ホンダは、これまで定年後の社員を1年契約で再雇用する制度を導入していた。
この制度は賃金が定年直前の半分に落ち込むことから、制度の活用者はその対象者の約50%にとどまっていた。
今回、ホンダは、定年の延長によって賃金を定年直前の80%程度にすることで再雇用制度で失敗した人材確保につなげたい考えだ。
定年の延長が大企業の一部にとどまっている中でホンダのこうした取り組みは、企業の人材不足に対応するのみならず無年金期間をなくすことにつながる。
ホンダの取り組みは、人材確保という企業のメリットばかりでなく労働者の経済力確保というメリットをも併せ持つことができるといえる。
もっとも、定年延長による退職金の増大、病気や怪我のリスクに対応するため職場環境の整備費用が増大するリスクもある。また、定年の延長は、労使協定の締結のみならず、退職金規定の変更、就業時間の変更により就業規則の改定も必要である。
定年の延長の手続に手間がかかるために定年の延長にまで踏み込む大企業が一部にとどまっていると思われる。
今後のホンダの定年延長の取り組みが他の企業にも影響を与えると考えられる。
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