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公務員のNPO?再び、執拗に地方議会を解き明かす (2022/11/17 6時の公共)

 地方議会・地方議員の実態に迫った「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション」。2018年11月、NPO法人6時の公共が千葉市内で開催してから、はや4年が経過した。

 6時の公共は、千葉の有志の地方公務員が中心となり2017年に設立したNPO法人で、文字通り「アフターシックス」の時間帯から、まちづくりを自分事化して考えるための学習会の運営を行ったり、2019年からはまちづくり学習・主権者教育に使えるボードゲーム教材を開発し、2020年にリリース、その普及に取り組んだりと、ボランタリーで活動を継続中である。

 前回パネルディスカッションでは、議会をサポートする議会事務局のベテラン職員や、県議会・市議会議員をパネリストに迎え、主に行政という執行部と議員・議会との関係性について、際どい質問を繰り返しながらつまびらかにしていった。

 参加した市民や行政職員、議員志望の方などからは「堅苦しくて遠いイメージだった議会が身近に感じられた」「一見、行政のやっていることを「追認」しているようにしか見えない議会も、水面下では様々なドラマが繰り広げられていることを知った」「会派、議員としての立ち位置の決め方の参考になった」といった、さまざまな学びの反響が寄せられた。

 議場のやり取りはなかなか丁々発止とはなりにくいため、仮にぱっと見「おもしろくはない」としても、住民にとって「役に立つ」議会であれば、との議論が展開されたところである。今回、統一地方選も近づく折、「また続きを!」との声もあり、4年の歳月を経て、第2弾を2022年11月22日、懲りもせず? 開催しようとしている。

※2018年11月開催のイベント経緯や開催後レポートは以下からご覧いただけます。
・公務員がNPO?触媒となり地方議会を解き明かす
・地方議会はおもしろくなくてよい!?「6時の公共」みんなの学習会

前回(2018年11月)開催時の様子

前回(2018年11月)開催時の様子

低い投票率、特に地方議会議員選挙で顕著

 ところで、皆さんは知っているだろうか。地方議会議員選挙の投票率がどれくらいかを。

 ちなみに、2022年に行われた参院選で約52%、筆者が活動の拠点とするここ千葉県では、2021年3月に行われた千葉県知事選、熊谷俊人氏が過去最多の140万票を得票して当選した選挙だが、それでも39%程度の低水準に留まっている。

 これら数字から地方議会議員選挙の投票率を予測するとどうだろうか。

 たとえば、2019年に行われた千葉県議選の投票率は「36%」。極めて低い数字と言わざるを得ない。このような超低投票率の状況は、何も千葉県だけに限ったことではなく、残念ながらこの時、33の道府県議選で過去最低を記録したとのことである。

 なぜここまで、地方議会への関心は薄いのだろうか。

 本来ならば、地方議会は住民に身近な存在としてもっと関心が集まってしかるべき存在なのではなかろうか。世の中の情勢を見渡してみれば、団塊の世代が75歳以上に達する2025年以降の医療や介護福祉の問題、予断を許さないコロナ対策、昨今の世界情勢から来る円安や物価高の問題など、様々な私たちの生活を脅かす事象と、住民と直接的な接点が強い地方議会こそが、まさに対峙していかなければならない。こうした問題が山積しているなかで地方議会が果たすべき役割は大きい。

 それにも関わらず現在では地方議会に注目が集まりにくい状況であるわけだが、国政選挙と同等、いや、それ以上の投票率を獲得できる日はやってくるのだろうか。

2019年千葉県議会議員選挙 年代別投票率

千葉県選挙管理委員会ホームページ公開資料より作成

教育の価値

 注目したいのは、18歳選挙権後の10代の投票率である。若者の投票率が低いということが問題視されるが、実のところその内情を見てみると、20代の学生や社会人等の投票率よりも高いということがわかっている。学校教育の場で主権者教育が行われるようになったことの影響は少なくないだろうし、今後、2022年度から高校で必履修科目「公共」が始まったことなどの影響によって、地域に開かれた教育課程という学習指導要領で掲げるところの効果が発揮され、地域への関心のバロメータのひとつともいえる投票率にも、徐々に反映されていくことを期待したい。

 一方で、今の20代以上は、学校教育の中で政治教育というものをほとんど受けてこなかった世代である。しかし、大人の学び直しというのは、今からでも決して遅くない。子どもたちに、「地域に関心を持とう、選挙に行こう」と高らかに呼びかけるのであれば、教育者のみならず、大人全体が背中を見せていかなければならないだろう。私たち「6時の公共」も、細々ながらも、公務員の背景を持つNPOという存在の独特の目線からあぶりだす、地方議会、地方議員の姿を、1人でも多くの方にお見せすることで、こうした大人の学び直しに貢献できればと考えている。

卵が先か鶏が先か

 地方議会選挙の投票に行かない理由としては、「投票しても何も変わらない」「投票したい候補者がいない(誰に投票してよいかわからない)」「地方自治に関心がない」などの意見をよく耳にする。これらを解消し、「選挙に行きたい、行かねば」と思わせるには、一義的には地方議会議員や地方議会自体が努力しなければならないのだろう。

 広報紙や議会報告会・意見交換会の開催、議会のネット中継やアーカイブ配信、議会や議員個人のものも含めたSNSの活用…あらゆる広報媒体を活用して市民との接点を増やしていくことはもちろん、議会や議員活動そのものの質の向上に向けた取組も欠かせない。

 卵が先か鶏が先か、ではないが、市民の関心が上がっていくためには、議会や議員自らが議会の本質的なところをつまびらかに見せていき、実は市民生活の大事なところで「役に立っている」議会や議員活動の姿を感じ取ってもらう、たゆみない工夫や努力の積み重ねが必要だ。

そもそもどんな「役に」立っているのか―目の付け所を養うために

 一方で、市民の関心にフックしていくには、議会側だけの努力では限界もある。市民側が忙しい日常の中でも、積極的に、健全な主権者として、地域社会を発展させていくために、しっかり「働いて」いただく議員を選び、議会を育てていく、目の付け所を培っていかなければならない。

 統一地方選は、県議会と政令市の議会選挙が同日となるケースを除いては、4月第2日曜の県議会議員選挙、第4日曜の市町村議会議員選挙と、2回も投票に時間を割くことになるわけだが、そもそも、県議会議員と市議会議員の差、すなわち、県政と市政の差がよくわからないという人も少なくないのではないか。

 分かりやすいところでは、コロナ対応で大忙しな保健所行政は(政令市等を除き)県政が担っている。身近な市政と、より広域的な県政において、それぞれが違った役割を果たしており、ときにはそれらの連携によって達成する事柄もある。こうした県政、市政における役割の違いや実体について具体に紐解いていくことは、各々の議員がどんな政治的関心や立ち位置で地方自治に向き合っているのか知る切り口を提供するものと考える。

 また、前回のイベントでは「年齢」を切り口とした議員の多様性や無投票選挙区の問題を取り上げたが、今回はさらに、ジェンダー(女性議員の少なさ)などの問題についても取り上げ、市民の属性を代表する仕組みや多様性が議会に与える影響などについても考えていきたい。

 さらには、これもなかなか外からは見えにくい、首長と議会・議員の関係性という切り口についても深掘って考えていきたい。地方議会は二元代表制という、首長と議員の両方を選挙で選ぶという性質をもっており、与党から首長を選出するわけではない。すなわち、地方議会には、国会のような与党・野党の関係性は存在しないことに「なっている」。しかし、実際には、首長も執行部も、予算案や条例案を作るなどの重要な決定事項を、過敏に「与党」に忖度して優先して相談するといった、「密室化」による事実上の意志決定が進んでしまっている自治体もあるのではないか。

 もちろん、選挙で選ばれた議員を差し置いて、毎回市民に直に問いかけるというわけにはいかないが、本来の二元代表制の考え方に立ち返れば、いつもその指標として立ち返る先は、「市民・県民」であることは間違いない。適切な、市民・県民、議会・議員、行政(首長や執行部)との3者のバランスのとり方について、実際にどのような工夫がなされていくべきなのか考えていくことを通して、議会の政策決定に関する役割についてもあらためて考えていきたい。

学習会は間もなく

 「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション《ラウンド2》」は、今回もベテラン議会事務局職員、県議会議員、市議会議員をゲストに迎え、ちょうど来年2023年4月の統一地方選から逆算して半年前に開催する。選挙期間中の選挙公報からだけではなかなか判断がつかない、地方議会・地方議員について考える上での素地となる目の付け所について、リアルでorオンラインで、共に学ぶことができたら幸いだ。

 

◇イベントのお知らせ
6時の公共 みんなの学習会
6時の公共 みんなの学習会
「そぉだったのか!地方議会・地方議員パネルディスカッション《ラウンド2》」
【日時】2022年11月22日(火)[祝前日夜] 19時~20時45分
【会場】千葉市生涯学習センター(千葉市中央区弁天3丁目7-7。JR千葉駅より徒歩8分)
【参加費】会場参加、後日のオンライン動画視聴ともに500円
【登壇者】岩﨑弘宜氏/取手市議会事務局、近藤美保氏/流山市議会議員、田中幸太郎氏/千葉県議会議員
【内容】
2018年、地方議会や地方議員について、行政との関係を中心にその姿を紐解いていき、好評を得た本企画。4年越しに開催する今回の「ラウンド2」では、新たに別の切り口から、地方の民主主義のサイクルを回す地方議会・地方議員の実態に迫っていきます。

登壇者には、「議会愛」でお馴染みベテラン議会事務局職員さん、県下の先進自治体で活躍する市議会議員さん、市議から県議に転向した県議会議員さんをお招きします。

2023年4月にやってくる統一地方選を前に、県政・市政の目の付け所、議会改革の最前線や多様性、市民への開かれ度など、皆さんが住み、関わる自治体をより良い地域に磨き上げていくための地方議会・地方議員の機能をチェックしていく「目の付け所」を、共に確認していきましょう。

【詳細・申込み】「6時の公共」ホームページから
https://pm6lp.org/archives/2287

特定非営利活動法人 6時の公共
6時の公共千葉県内の有志の自治体職員による2年間の任意活動を経て、2017年12月にNPO法人として誕生した学習会コミュニティ。「自分たちのまちは自分たちでつくる」社会の実現を目指し、市民、学生、ビジネスパーソン、自治体職員、地方議会議員など、誰でも参加できる平日夜の学習会開催や、まちづくり学習教材の作成、まちをつくる意識の啓発活動などに取り組んでいる。
NPO法人「6時の公共」ホームページ:http://pm6lp.org/

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