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【専門家LIVE】インターネット投票はどうすれば実現できるのか!? (2021/10/14 PoliPoli)

 PoliPoliでは7月14日、インターネット投票をテーマに、中谷一馬衆議院議員と有識者の方との対談イベントをTwitter ライブで開催しました。

 投票率が低い現代の日本社会。その解決策として、インターネットにおける投票を開放することで、投票に行かない若い世代、あるいはなんらかの理由で投票所へ赴き投票を行うことができない人々の「参政権」を実現させたい。そんな思いを持ち、実現に向けて何を行ってきたのか、またこれからの日本には何が必要なのかに関し、中谷さん、そしてインターネット投票において、技術方面でも意識改革の方面でも精通されている(株)VOTE FOR の代表取締役市ノ澤充さん、早稲田大学商学学術院教授の斉藤賢爾さんに、若い世代にもわかりやすく解説・議論していただきました(司会はPoliPoli伊藤和真、本文中敬称略)。

インターネット投票実現へ、これまでとこれから

【伊藤】 今日は、インターネット投票について、中谷議員と有識者の方々と、いろいろと議論します。よろしくお願いします。

【中谷】 よろしくお願いします。

【斉藤】 お願いします。

【市ノ澤】 お願いします。

【伊藤】 最初にまず、インターネット投票に対して取り組んでいることも含めて、中谷議員から、自己紹介をお願いします。

【中谷】  衆議院議員の中谷一馬です。インターネット投票の実現というテーマで、Twitterライブを開始させていただいています。本日は、私自身もとてもお世話になった、斉藤先生と市ノ澤さんと伊藤くんと、こういったライブを配信させていただくことになりました。私自身、若い頃から、なぜインターネットで投票ができないのかと素朴に思っていました。2005年、私がまだ学生の頃でしたが、その頃からエストニアという国ではインターネット投票が実践され、日本でもインターネットで投票できるようなればもっと投票率が上がるとシンプルに思ってました。

 前回の衆議院選挙では台風が直撃しましたが、今のコロナ禍も含めてこういう時には当然投票率は上がりません。でも、本当は憲法で参政権が保障されているのに、それが守られてない状態になっています。それをテクノロジーで解決できないのかというと、既にできる国があり、実装してるのにそれが動いていかないというのは、どうなのかなということを思いまして、私たちデジタルネイティブの世代が民主主義をアップデートさせていきたいなという想いで、インターネット投票の研究を始めまして、本国会でインターネット投票を推進する法案を、皆さんにご協力いただいて、提出をしました。

【伊藤】 法案を提出されたりして、かなり精力的に動かれてたので、個人として凄いなと思い、いろいろとお話を聞かせていただけるのは嬉しいと思います。

 続いて、VOTE FORの市ノ澤さんの自己紹介とインターネット投票について取り組んでいることを簡単にお話お願いします。

【市ノ澤】 はい、ありがとうございます。改めまして、よろしくお願いします。VOTE FORという社名に掲げた通りで、インターネット投票の実現にすべてをかけている会社を運営してます。研究の一部としての位置づけですが、最近だと、つくば市にある並木中等教育学校で生徒会の選挙をインターネットでやろうということで、いくつかのメディアで取り上げてもらいました。そんなところから裾野を広げていきながら、公職選挙におけるインターネット投票の実現を目指して、研究や実証をやっています。あとは、そこで得た知見をビジネスシーンで、いろいろな「総選挙」にフィードバックしていく形で、事業を展開しています。今日はよろしくお願いします。

【伊藤】 社名から分かる通り、本当にフルコミットしていますね。では斉藤先生、簡単に自己紹介とインターネット投票について取り組んでいることをお願いします。

【斉藤】 初めまして、こんにちは。斉藤賢爾と申します。今、早稲田大学の商学学術院の中にある大学院経営管理研究科 ビジネススクールの教員をしています。私は、もともとコンピューターサイエンティストで、1988年からソフトウェアやアカデミアにずっといます。インターネットと社会の研究を研究していて、ブロックチェーンもその中に含まれていますが、インターネット投票というのは、そのアプリケーションの一つという位置付けです。

 皆さんにお声がけ頂いたのが、インターネット投票に興味がある理由としてとても大きいですが、これは難しい問題なのです。

 確かにもう実行している国もあるわけですが、非常に困難で、まず対検閲性がとても大事で、投票ということの性質を考えるとそこに匿名性が絡んでくるということで、なかなか厳しいです。

 対検閲性自体はブロックチェーンでできるが、そこに匿名性を入れるのはなかなか困難で面白い課題として、取り組んでいます。

 今日は皆さんと改めてお話できるのを楽しみにしています。よろしくお願いします。

1.何でここまで、本気でインターネット投票取り組みだしたか、その理由をお聞きしたいです。

【中谷】 さっきの話にも少し関連するんですけど、素朴に疑問だったってことですね。いろんなことがインターネットでできるようになった中で、何で投票は紙でなくてはならないんだろうと。紙で投票することの必然性というか、それしか選択肢がないことに対する違和感があったと思います。ただそれは、行政事業のほとんどがそうで、なんで住民票を役所に取りに行かなきゃいけないんだろうと、年金の記録ってもっとわかりやすく見られないのかなとか。県議会議員になった10年前には、デジタル化が遅れてるなっていうことをすでに痛感しておりました、政治・行政の世界にのいろんなことを便利にしていくことがみんなの時間を作っていくことになるし、いろんな多様性を包括するような社会になるのではないかと思いました。

 そうした中で、インターネット投票は、今でも内閣官房がやっているデジタル改革アイディアボックスの人気投票ランキング1位なのに実装されてない。要するに、みんなが望んでるのに、それが進んでないっていうことに対して、これは挑戦しなきゃいけないという想いはすごくありました。だからこれはやったろう!と始めましたね。

【伊藤】 なるほど。結構難しいから行くってところはあったんですね。

【中谷】 そうですね。しかも解決できない課題じゃない。テクノロジーでも制度でもクリアできるという確信を持っていたので、みんなにちゃんと説明をしながら理解してもらえたらそれは社会で実現するできると思ったので、みんなの力を借りて進めました。

【伊藤】 若い友達に会うと、インターネット投票まだ?とみんな聞かれるんで、なんで進まないのかとかは後で議論できたらなとは思うんですけど。

【伊藤】 市ノ澤さんとか会社までやられているということはこれどういうきっかけだったんですか?

【市ノ澤】 もともとは国会議員の秘書と、あと政策系のコンサルの仕事を少ししていた時期があって。当時私の周りには中谷さんみたいな議員はいなくて結構ご高齢の議員さんたちとのお付き合いが多くて、その中で議員自身が変わっていくのも大事なんだろうなと思いながらも、やっぱり劇的に変えるには仕組み自体を変えなきゃ駄目だなと思ったのが一番のきっかけですね。

 実際に今の選挙制度でいくと5%投票率が上がると、小選挙区の結果の半分ぐらいひっくり返る可能性があるんですね。ネット投票が実現すると、少なく見積もっても7ポイントから10ポイントぐらい投票率上がるんですよ。そうするとこれまでの選挙制度で安定して受かってきた人たちが安定して受かれなくなってくる。決して落ちてほしいとかではなくて、安泰じゃないかもしれないっていう緊張感を持ってもらうことがすごく大事と思っていて、多分緊張感があると今の政治はもうちょっと良くなる。その仕組みを変えるっていうところにトライしようと。

 ひとりひとりの議員さんを応援するとか、自分が議員になるとか、さまざまな取り組みを頑張ってる人たちがいるのがわかりますが、その人たちの活躍の場とか可能性を広げられるような仕組みの転換にはまだ誰もトライしてなかったので、そこをトライしようというところでもうかれこれ10年ぐらいやってるっていう感じですね。

【伊藤】 今の人たちが変えるインセンティブがないみたいな声と結構繋がっていきますね。こういうビジョンでやっているのかと勉強になります。ありがとうございます。斉藤さんも理由だったりとか教えていただけると助かります。

【斉藤】 この面々の中で私が声掛けされたからやってきたというのはあるんですけど、でも大事なことだと思ってます。インターネット自体のガバナンスみたいなものも、技術の標準を決めていくみたいなこともやっぱり社会の秩序を決めるという意味でとても政治的なことです。インターネット投票といういい技術が選ばれるために私たちはずっとやってきているんですね。

 じゃあ紙の投票がダメかというと、そうではなくて、それをデジタル化するとより良い仕組みが作れるのではないかと。

 私、子どもたちのキャンプというのもやっているのですけど、そのキャンプの大事なメッセージが子どもたちに社会のビジターじゃなくて、メーカーになろうよと。社会を一緒に作っていこうよということを今子どもたちに伝える。で、その社会のメーカーになる私たち一般市民ができることの出発点が今のこの社会では投票だし、投票というのは、例えば、いわゆるデジタルトランスフォーメーションみたいなことでしっかりやりたいなっていう思いです。

【伊藤】 やっぱ若い人が投票行きやすくなるっていう意味で、意思決定に参加できるみたいというのはこれすごい大事だなとは個人的にも思います。

2.インターネット投票なぜできないのか

【市ノ澤】 まず、大きくその課題を三つあげると、法律面の課題と、運用面の課題と、あと技術面の課題と、三つあるかなと思っていて。技術面に関しては私たちも実証を重ねてきててほぼ解決の道が見えてるかなと思ってるんです。

 そしてより改善していくこともできると思っていて、やっぱり運用面の課題が一番大きいかなと思います。運用面に関しては具体的には現場で選挙に携わる人たちの理解と、さらにそのプロジェクトに実際に投票する人たちの理解、ネット投票に対して、もちろん大きな期待もある反面、やっぱり漠然とした不安をみんな持っていると思うんですよね。

 その人たちに対して、少しずつ身近なところから慣れてもらうとか触れてもらうとかっていうのをやっぱり積み上げていくっていうことが一番大事かなと思っています。そこの部分も実証実験とかの中でやっていく必要があるかなと思ってます。実証参加する人ってごくごく一部なので、数百人とか、千人単位なのでそういう人たちの裾野をどう広げていくかっていうところでは、もっと大きな仕掛けが必要かなと思っています。するとやっぱり、政治の取り組みというのが必要かなと思っているので。

 まだ本格的な法案がきちんと国会で議論されているというふうには思えないので、そこをこれから急ピッチでやっていかないと、来年の参院選とかにはとても間に合わないのかなと思っています。

【中谷】 市ノ澤さんがおっしゃってくださったことがほぼ骨格で、少し深掘りして喋っていくと、やっぱりネット投票を導入することっていうのは、多くの国民は望んでいるんだけども、それによって選ばれる人たちにとってはゲームルールが大きく変わっていくから、やっぱりそれに対して抵抗感を感じてすぐにはできないというのは要因としてあります。

 もう一つは、テクノロジーの技術的な理解はその時代の方じゃないと専門的な研究をしている以外の方にとってはとても難しくて、しかも立法府や行政府の方は特にそういう知識を持っていない方が多いので、法案を進めるとなると、民主主義の根幹に関わる選挙ですから、失敗もできないというプレッシャーも強くあるんじゃないかと思います。

 その中で、今回のインターネット投票を推進する法案を野党から提出できたっていうのは結構大きなインパクトじゃないかなと自分的には思っています。与党が何かをすすめるときは与党内で調節できればパパッと進んでいくこともありますが、そうじゃないものは、野党から先に対案となる法案を出した方が、与党が選挙の争点を消したいという本能的な思惑も相俟って政策が前に進むということが、与野党の攻防の中ではよくある話しです。

 そういうパワーバランスがある中で、選挙のまさに民主主義の根幹となる仕組みを変えるということを国会の議論として投げかけ、しかも5年後の実装を想定している内容になっているので、国民の皆様の中でも野党はやっているのに与党はなぜやっていないのか、という話にもなりかねません。そうなればいやでも、与党は、議論の準備を始めていかなければならなくなりますから、国民目線でいえばとってもいい流れだと思います。

 みんなできてないし何かセキュリティに問題あるんじゃないかっていう漠然とした不安がある中で、投票システムも市ノ澤さんたちが作ったシステムなどを含めて、すでにできていて、それを実際に使ってと体験できるのはとっても良いことです。既にエストニアでも実装されていて日本でも、システムとしてはできていて、その他の諸外国でもシステムに触れる機会が相当進んでいるねっていうことがみんなに認知がされていって、それをじゃあ自分たちも使ってみようかということで進みだすとよりイメージが共有ができてきますので、インターネット投票に関しては、近い将来必ず日本でも当たり前に使われるようにるんじゃないかなと思うんです。

 与党内で争点っていうか議論がありすぎたからこそあんまり与党の中からは表に出てなかったけど、野党から突っついていくことが大事という理解で大丈夫ですね?

【中谷】 アプローチの方法が違うってことですね。与党の中で意思決定は固まっていないことで国民ニーズがあるものは、むしろ野党の方に言ってくれれば、僕らがそれを対案として提出して、世の中にこれが必要だと伝えていくことによって、与党の中でも野党がこう言ってるからと議論しやすくなる。

【中谷】 インターネット投票に関しては、若手を中心とした多くが賛成派だと思います。総務大臣やデジタル担当大臣など、国会でも議論するんですけど、ネガティブな表現をされる方はいらっしゃらない。だからみんなやったらいいと思ってるし、漠然とやりたいと思ってるんだけども、もっと上の意思決定権者のところで止まっている、もしくはやりたいとみんな思っているんだけど、そのシステムの中身まで詰め切るほどのスペックが足りてない可能性があります。

【伊藤】 では野党内ではどういう風な印象ですか?

【中谷】 野党の中でも賛否がかなりわかれて、立憲民主党の中でも30回ぐらい議論したんですが、その中にはやっぱり不正投票、二重投票、なりすましの問題などをどうやって防いでいくのか、こういうことに対する課題は相当示されました。

 それを制度的には、例えばやり直しをできるようにして課題をクリアしていくとか、どうやって安全性が守られるのかという課題については、ブロックチェーンに関する説明を、市ノ澤さんや斉藤先生に手伝ってもらいながら、インフォグラフィックにして、とにかくみんなにわかりやすく伝えられるようにして説明を心がけた結果、ここまで煮詰まっているのならじゃあやろうかと決めていただいたという背景があります。

 それこそ、市ノ澤さんロビーを通してどんな感じだったのか教えてもらってもいいですか?

【市ノ澤】 全体としてはやっぱり若手の中の理解は深まりつつあるっていうところと、その意思決定層の中では優先度の高い課題としてはまだ認識されるに至っていないっていうところがあると思いますね。

 特に与党内に関してはそこから出てきてしまうと、もはや本格的に進めていかざるを得ないので、党内の中での議論に費やすべき時間っていうのはかなりあると思うんですね。なので、立憲の中でも中谷さんにすごく苦労していただきましたけど、多分自民内でそれをやろうとするとさらに多くの人とパワーが必要になるのかなというところで、なので野党側からそういう刺激的な法案が出たっていうことに関してはすごくプラスだったんじゃないかなと思いますね。

 これまでも維新が出してきましたけど、「インターネット投票実現を目指す」っていう趣旨のシンプルな法案なので、その条文だけ出されても多分議論し始めようがないと思うんですけど、立憲の法案に関しては、たぶん僕は与党からその法案作り手伝ってくれって言われてもあれ以上のものを作るのは難しいんじゃないかなと思います。

 今回の法案は与党内でも、ちょっとアプローチを変えて障害者の方に向けた投票環境の向上とか、いろんな切り口で伝えられる要素があると思うので、そういうところを伝えていって協力者を増やしていくっていうのが今の状態かなと思うんですね。

【伊藤】 実際にこれ、政治的にもう本当に3年かかって、結構かなり進んできた感じはなんとなくしてるんですけど、今後どんな感じで進むのか市ノ澤さんはどう思われているのかなと

【市ノ澤】 やっぱり議員さんたちの世代交代的なところは要素として大きいのかなと思っていますし、誤解を恐れずに言うと次の衆院選で、大きな出来事が起きれば一気に加速するかもしれないし、逆にもう完全にこれから20年ないよねっていう状態になるかもしれないし、ぜひ次の衆院選では、それを掲げて戦ってくれる政党があるといいなと思ってます。

【中谷】 頑張ります。よく野党の先輩議員に総理大臣とか内閣の人が厳しく追求されているっていう構図が予算委員会などでもよくあると思うんですけど、あの厳しい追及を3年間先輩たちからいただきながら練り上げてきた法案です。長妻昭先生の鋭すぎるご提言や後藤祐一先輩の頭良すぎるご示唆など、ごもっともすぎる意見のラッシュに対して、みんなに知恵を貸してもらって、一つ一つの疑念点を埋めました。

 その上で、ここまで煮詰まっているならということでご協力をいただいて出した法案なので、そういう意味では、さっき皆様が褒めてくださってましたけど、私たちも自信を持って、むしろこの論点ちゃんと全部埋めれたら社会で実装できると確信しています。

 だからこそ、しっかりと進めていけるように与党にもアプローチをしていきたいし、もちろんマニフェストにも掲げてほしいなと強く思っています。党のデジタル政策PTの提言でもマニフェストに入れるべき重点事項として、トップにインターネット投票の実現を盛り込みました。

【伊藤】 逆に技術的で現実的な課題というところを結構深堀りできたらなと思うんですけども、ここ特に斎藤先生とかはこれまでの議論で、インターネット投票の技術的な課題だなみたいなところを教えていただいてもよろしいでしょうか?

【斉藤】 はい。一番最初に言ってしまうと技術だけで解決できる話ではないっていうことだと思うんですね。先ほど市ノ澤さんも技術的課題、法的課題、運用的課題というふうにおっしゃってましたけどまさにその通りで、技術っていうのはどんな技術であれ、前提となる条件が揃っている限りにおいて正しく動作するっていうものなわけなんですね。

 その条件を揃えていくというところで法律であったり、運用であったりが大事になってくるということだと思います。

 あと、今回インターネット投票について検討していく中で、実は採用できる技術の幅があるんですね。それで法案に対しても技術をできるだけ限定しないようにみたいなこともコメントとしてはさせていただいたんですけれども、これからどんどん技術の発展しうる可能性があります。

 またさっきの技術的に、前提が満たされていないとっていう例でいうと、例えばデジタル署名は、秘密の鍵を自分が持っていて、秘密鍵は明かさずに、公開鍵と秘密鍵っていうペアとなる鍵があって、公開鍵は公開されてて、それが例えば自治体によって本人のものであるよみたいなことが証明されるっていう状態が保たれていると、その人がデジタル署名した内容は本当にその人がやったもので、内容が変わっていないっていうことも証明できるっていうのが電子署名なんですけども。

 じゃあ秘密鍵は本当に秘密なのかみたいなところですね。秘密鍵が秘密に保たれている、かつ、その人が使える状態にあるのか、失くしちゃいましたみたいなことは当然起きてくることなんで、そのときに、例えばインターネット投票にその仕組みを使うとすると、匿名であるので、デジタル署名を使おうとするとその公開鍵を明らかにできない。

 じゃあどうやって秘密鍵をなくした人は、その新しい鍵を作るんだって話になるんですね。

 そういうところで、運用面であるとか法律面での手当がどうしても必要になるというようなことですね。

 逆に言うと、そういう運用面、法律面でのサポートがあるのであれば、技術的にはできることだっていうふうに認識をしています。

【伊藤】 なるほど。技術的だけではなくてすべてのことに絡んでるみたいな話なんですね。では具体的に中谷さん市ノ澤さん視点からもこれからここ問題になるだろうなみたいなのがあれば聞いてみたいと思うんですけど。

【市ノ澤】 一つは今の法律では実施できないっていうところで、上書き投票とか再投票みたいな仕組み。例えば本人が強要されて投票された場合に、その自由意志みたいなものをどう担保しますかという時に技術だけではやっぱり限界があって。

 ただ斎藤先生おっしゃった通り、例えば一定期間、その後は投票再投票をやり直し投票が可能ですよというふうにしてあげるとか、またはその後端末を取り上げられたとしても最悪投票所で受けられるとか受け皿を用意してあげるという、これは本当に技術的に、運用的に組みあわせる三位一体の取り組みなのかなと思っていて。今回並木中等教育学校というところでネット投票をやった時も生徒会の選挙管理委員会の方に、管理者用のIDとパスワードを渡して、その人にパスワードも自分で設定してもらって管理画面渡して集計してもらったんですね。

 この集計が正しいって僕らどう確認できるんですかって言われて、もうそれはシステム信じてくれとしかそのときは言えないっていう状態なんですよ。

 今回の実証はそこまで踏み込んでないんですけど、そこでその生徒たちにもわかるように、この票の由来というか、元はここから来てるんですよっていうのを証明してあげるっていうのを技術的に担保するっていうのは次の実証で実はしたいなと思う。それは秋頃に議論できるかなと思ってます。

【伊藤】 投票の安全性はある程度制度設計で解決するんじゃないかということですね。

3.投票の安全性の確保についてまた、現行制度の危険性について

【中谷】 理論上はもうできる。なぜならば既にできている国があるから。あとはそれをどう日本やその他の国のシステムの中に技術力として落とし込んでいくことと、決裁権者の理解が及ぶかというこの二つの課題になっていると思います。

 秘密投票は、もうご存知の通り、郵便投票でも二重封筒方式というのがあって、その二重封筒方式は外封筒には自分の名前書くんですが、その中には、内封筒が入っていて、誰が入れたかはわからない状態になっています。また、これを開ける人は開票立会人が立ち合いをしているところで開けなくてならず、投票と開票が切り分けられて、開票するということになります。、それをインターネット投票では、技術的にはブロックチェーンを活用してやる方法だったり、暗号キーを複数の人が持って、それが一致しないと開けられない仕組みにしようとか、そういったことは、十分にできます。また、なりすましでやろうとした人がいたときには、そもそもなりすましは、犯罪なので、それをインターネット投票の画面で犯罪ですよと警告する案内が出てくる仕様にすれば、強要してる側もされている側も反応するはず。

 しかも、なりすまし投票は、現在も2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられますから重たい刑になるんだってことがわかってるだけでも全然違うんじゃないかと思いますし、それでもまだ立法事実が積み重なって、もっと対策しなきゃいけないみたいなことがになれば、刑罰を重たくするなどの対応することが可能です。
 ただ、そもそもインターネット投票でなりすましが現実的に起こった事例は、とても少ないのが、実情です。

【伊藤】 海外の事例で言うと、エストニアの話ですかね

【中谷】 そうですね、エストニアもそうですし、アメリカも実は州ごとにインターネット投票が導入されている地域があり、ノルウェー、フランス、スイスなどでも州ごとだったり、在外のインターネット投票が試行されていて、日本でも海外の人の投票率が2%しかないという事態になっているので、在外邦人向けにインターネット投票のシステムを総務省自体が作っています。

 ケースっていうのは結構あるっていうことですね。

【伊藤】 中谷さん海外で視察されてましたよね?

【中谷】 エストニアに行ってきました。システムも見てきましたし、選挙事務を行う方のトップの人にも話を聞いてきました。あとは韓国も実はもうブロックチェーンを活用したインターネット投表のシステム自体はできています。ただ日本と同様に、あんまり政府が信頼されてなくて、インターネット投票をして大丈夫かみたいな懸念があるようで、韓国もまさに理解を深めてもらおうと、町内会の選挙など、様々な選挙にシステムの貸し出しを行っていると言っていました。

【伊藤】 なるほど、エストニアでは、実際やってみて、実はこういうとこ良かったみたいなところがあったら教えていただきたいし、逆にこういう問題点がありそうだな、と言うのがあれば教えていただきたいなと思います。

【中谷】 いいところはシンプルに投票率が上がったっていうことじゃないかなと思います。ネット投票は、よくあの若者のためのものだって勘違いされがちなんですけど、実はそうじゃなくて、高齢者の投票率が相対的に一番上がったっていう現実があります。

 移動が大変な方のハードルをさげ、どこに行っても24時間ネットで投票できるっていう環境っていうのは、投票率を上げる要因になったんじゃないかなと思いますね。

 紙とネットのシステムが併存することによって、長期的にはやっぱりコストもどんどん安くなっていきますしね。

【伊藤】 他にも海外事例や実証実験等あれば

【市ノ澤】 やっぱり結局は運用とセットになるのかなと思っていて、例えばアメリカの事例で面白いのは電子機器を投票所内で使うってのはもうほとんどの州でやっていて、オンラインで投票するってのは本当にウェストバージニアとか一部の州で、しかも一部の人向けの体制だなって感じてるんですけど、ただ、どういう事件というか事故が起きるかっていうとデータが入った電子機器ごと盗まれるみたいな、そういうことがあるんですよね。

 そこに備えるのってもはや技術の問題とかじゃないじゃないですか。物理的に物ごとを持って帰るみたいな。そういう事態への備えも考える必要があります。

 あと日本では、実際投票箱の搬送とかってかなりリスキーなことやってるんですよね。

 選挙終わったらよくハイヤーで投票所に運んだりとかしてますけど、それ自体もリスキーだし、コストを担保できないところは自治体職員が眠い目こすって夜中運転して開票所に運んでいったりとかしてるんですよね。

 なので、やっぱりそういうのも全部ひっくるめてコストを総算出して比較しようとしたときにはネット投票の方が良くて、今その事例をたくさん集めようとしています。

【伊藤】 投票箱が失われるケースはあるのですか?

【市ノ澤】 ロストバゲージみたいなもので、航空機とかでは荷物として扱われるので、そのときに数があわないとかってのあったみたい。あとは、到着が遅れるとか。

【斉藤】 紙の危うさってありますよね。ぜひぜひそういうところをデジタルにすることで改善するのをやっていければいいと思う。

 あと、こう言う議論に参加させていただいてびっくりしたのが、最終的には紙の投票を有効にしてくださいみたいな要求があって、それでさらに課題として面白くなったんですけども、そういう最終的なバックアップみたいなところまでしっかり考えてるっていうのはやっぱり、我々よくやったなっていうふうに思います。

【伊藤】 結局紙とかアナログもデジタルもやっぱりリスクがあってそこら辺はどう考慮していくかですよね。でも中谷さん多分党内でそういう議論ってあったと思うんすよね。想定のリスクについてのロジックを使って説明ってできないものなんですかね。

【中谷】 それは相当説明しました。起こり得る問題はデジタル特有で起こってる問題じゃないですよっていうのは相当ありました。

 だから紙の制度を大事にしつつ、プラスアルファのサービスを作るから、こっちの方が利便性も上がるし、セキュリティ的にもより強固になる可能性がありますよという説明は相当しましたね。

【伊藤】 なるほど。今いろいろと課題出たんですけど、市ノ澤さんはいろいろ実証実験をやられたと思うんですけど、強迫の問題だったりとか、そう言ったのに対して対策というか、どういう解決策があったか、実現に向けて教えていただけますか。

【市ノ澤】 はい、なりすましのところに関しては、本人確認についてマイナンバーカードで実施をするとか、あとマイナンバーカードを持っていることだけじゃなくて署名用のパスワードは誰も使ったことのない桁数のパスワード使うっていう実証もして、あとはマイナンバーカードには実は顔画像データも入っていって、その顔画像データと投票所に来た人の顔画像と、照合して本人であることを確認するっていうのはNECの顔認証システムと連携して実施をしたりとかっていうのもやりました。

【市ノ澤】 多分、入り口の部分では、今後生体認証をはじめ、さらに精緻なものができるかなと思ってます。というところと、やっぱり投票の結果がどう安全に扱われるかっていうところに関してはまだ検証が足りてないところもありますけど、一応(イーサリアムとハイパーレジャーファブリック)の2種類のブロックチェーンを使って書き込みましょうっていうこと。で、本人は自分の投票内容が確認できますよ、というのを部分的に体験してもらったりとか、ただそれを客観的に証明するところまでまだ及んでいなかったりとかっていうのがあるので、そこは実際管理者側からはわからないよっていうことをロジックの部分できっちり見せていくっていうところは課題なのかなとおもいます。

 あとは単純にデバイスの問題をどう解決するか。ブラウザやスマートフォンによっては文字化けとか思わぬ挙動をするとかいうトラブルはたくさん種類が出ていて、そういうものをやっぱり数多く実証してもっと洗い出していって、それに備えて準備しておくのが必要かなと思います。

4.コストについて

【伊藤】 どのぐらいのコストが最初かかるのかは結構議論あると思うんで、実証でも大変そうですが実際どのぐらい予算がかかるのかとかそれが現実的なのかみたいなところどう考えられていますか?

【市ノ澤】 そうですねざっくりいくと、ユーザーインターフェース的な部分のところは、もう正直これはお金かければかけるだけいいものも作れるし多分きりがないと思うので、デザインとか挙動に関してシンプルなものを想定したとして、今の国勢調査のWeb回答システム、前々回から稼働してかなり好評でやってる、あれとほぼ同じ規模で、全世帯が回答するっていう形なので、多分国勢調査と同じ規模のインフラが整えられれば、ネット投票のインフラ規模はいけるかと。

 その国勢調査のインフラの部分の基幹システムは20~30億円ぐらいですね。

 なので、基幹システムに関わるものが20~30億ぐらいだとそのユーザーインターフェースにかかる部分とか、どれだけリッチに作り込んだとしても多分その倍ぐらいに収まる。

 50、60億で収まると、今の衆院選1回600億円かかってるので、システム周りは十分の一で収まるというのが概算です。

 ただ国勢調査もいまだにあの、毎回600億円かかっていて、それは答えをサポートする人とか、電話対応などの人員のための費用です。

【伊藤】 最初はサポート陣営が必要?

【市ノ澤】 最初はいると思います。けどそれは100年単位で安くなると?

【市ノ澤】 30年くらいで十分の一になるのでは?

5.まとめ~これからのインターネット投票実現に向けて

【伊藤】 残りあと10分ぐらいなんでビジョンみたいな話が最後できたらなと思うんですけれども、市ノ澤さん、インターネット投票のこれからについてお話しいただけますか?

【市ノ澤】 スーパーシティとかスマートシティとかの文脈で地方自治体の中でネット投票を突っ込んで実装していくっていうところにトライしていきたいなと思っているのが一つと、あとやっぱりその大きな意義としてはこのネット投票のことを考える中で選挙権のあり方とか選挙のあり方とか、そういうことを考えるきっかけになるかなと思っていて、だいたい国民の99%は選ぶ側なんですよね。だからその選ぶ側のリテラシーを上げていくことの方がやっぱり重要なんじゃないかなと思っています。

 選挙に関しては、立候補する人たちが確かに主役なんだけれども、でも実際には選ぶ側のリテラシーがはるかに大事で、ネット投票になることを通じてそういう人たちがこの選び方で本当にいいのか、この選んだ人が今後もちゃんとやってくれるのか。4年前と比べてどうなのか、みたいなのを考えてもらうきっかけになるっていうのが、今回のネット投票の大きな仕組みだと思っているのでそこにトライしていきたいなと思っています。インターネット投票で国会の景色はかなり変わると思います。

【伊藤】 斎藤さんから今後インターネット投票について考えてることだったりとか本当に個人的な興味とかでもいいんですけど何かあったらぜひお伺いしてもいいでしょうか?

【斉藤】 はい。コンピュータサイエンティストとして、一つアルゴリズムの探求みたいのはあるとは思ってるんですね。ぜひやりたい、やっていきたいことでよりセキュアにより運用しやすいと技術っていうのを考えていきたい。

 あと大学人としては実は投票っていうのは身近な意思決定の手段で大学人もその教授会で投票するとかあるいはその博士号を出すみたいなときにやっぱり同じように投票して決めたりとかしてるわけなんで、そういうところにも導入していく。実際に自分たちが考える技術を自分で使ってその上にのっとっていろんなレベルでの民主主義を実現していくっていうことをぜひやっていきたい。それから、投票によらない秩序の形成みたいなことも非常に興味があるところなので、引き続き考えていきたいと思っています。

【伊藤】 確かにそれこそ国民に説明する時に、こういうロジックなんです、これアルゴリズムなんですとわかってもらえないとなかなか厳しいですよね。

【伊藤】 最後に、中谷さんいろいろ法案提出されたりとかなり動かれていたと思うんですけど、これから取り組まれてるようなことだったりとか本当具体的なスケジュール感ぐらいまでもしあったらいただきたいなと思います。

【中谷】 理想としては今の投票制度に不自由を感じているすべての人たちの不自由を解決をしようということで、インターネットの法案を考えました。その中で、今回の法案は5年後の参議院選挙を見据えて、そこで実装させるぞと。ただ、その前に段階的にもうコロナ禍だから、そもそも総務省のシステムは、ほぼできているし、それを使って先にやるならそれもいいよねと。あとは地方自治体の中でもうちが率先してやりたいってとこがあったらそれを試してみるとか、

 あとは在外投票。今東京ー新潟間ぐらいの距離があるところ、在外公館に行って投票しなければならない人っていうのは現実的にいて、要するにその票を投じるのに飛行機のチケット取って乗って帰ってくるっていう。

 それじゃ投票率上がらないだろうということは容易に想像がつくので、現実的な地域的な問題を抱えてる人たちの参政権をしっかり守っていくことは、5年待たずとも現実的にできる可能性があるということを思っています。

 私たち衆議院選挙がもう間もなくありまして、満期が大体10月になるんですけど次回の選挙で当選して、私自身がもし国会へ帰って来られたら、党派を超えて、インターネット投票の推進を一緒にやりたいと思ってくれている仲間たちがいると思うので、野党からも法案出したよ、与党の議論も大変だと思うけど、むしろそこは力を合わせて一緒にやろうよっていう感じで、超党派でみんなに声をかけながら、共に作っていけたらいいなということを思っています。

 オードリー・タンが、「青銀共創」だと言ってました。何のこと言ってんだろうなと思ったら、台湾の「ことわざ」らしくて、青年世代もシルバー世代も共に作る。デジタルは、一部のわかってる人たちが進めようと思っても進まなくて、世代を超えて、相手の立場に立って、みんなで一緒に進めていくっていうのが、DXを進める最大の秘訣だと。

 台湾も、蔡英文さんみたいに理解のある人ばっかりじゃなくて、非常にデジタルにネガティブな人もいらっしゃったんだけど、彼は相手の立場に立って、相手が何に悩んで、何に不安でどう解決すればそれが社会実装していくんだろうということを模索した結果、民主主義をアップデートさせることに成功した事例だと思ってるんで、こうした例を参考にしながら、自分自身も進めていけたらいいなと思っています。

【伊藤】 なるほど超党派だったりとかいろんな人を巻き込んで、具体的にまずはアクセス悪い人に、インターネット投票の利益を享受してもらって5年後ですかね、参議院選挙に本格的に導入するみたいなところですかね。では、僕ら議員さんでない人たちがどういうふうにインターネット投票の実現に向けて協力できますか?

【市ノ澤】 私から一つ。特定の政党ということではないですけどインターネット投票を推進しようとする政党を応援するっていうのが一つシンプルで一番わかりやすいところではあります。

 あとはいろんな実証を今、あちこちでやらせてもらってるんですけど、自分の身の回りでもそういうことができないかというところでトライしてもらう。その相談にはいくらでも応じたいと思います。

【中谷】 今ちょうどコメントでも、みんなにわかりやすいパンフレットを作って、配布したらいいんじゃないかという意見をいただいているんだけど、こういう着眼点も大事だと思いますので、わかりやすく冊子にをまとめたらいいなと思います。

 知らないところに対してもみんな理解いくかっていうのを自分たちが提供できることからやると、で、一緒に視察に行ったりとか、視察に行った動画だったりとか、その説明の配信をしたりすることで、情報共有をていねいにし、知らないことに対する恐怖心の緩和ができればと思います。

【伊藤】 なるほどわかります。ありがとうございます今日はそうですね1時間ぐらいインターネット投票についていろいろ議論させていただきました。中谷さんのTwitterなどもインターネット投票について発信しているのでぜひフォローしてみてもらえたら嬉しいなと思います。今日はありがとうございました。

?Twitterライブイベントのアーカイブ動画(2021年7月14日)
https://www.pscp.tv/w/1nAKELYkmlvxL

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