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強い産業創出へ、国交相と国家公安委員長に政策提言―日本青年会議所 (2017/12/21 公益社団法人 日本青年会議所)

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取り組みの背景

 2017年度の公益社団法人日本青年会議所、強い産業構造創出委員会では、「デフレからの完全脱却」が喫緊の課題と考えております。長期に渡り続くデフレの中、現在日本では規制緩和によって参入障壁が下がり、需要が増えないまま価格競争を引き起こし、さらにデフレが促進されるような政策がとられています。需要増が伴わない規制緩和は産業の競争力を削ぎ、業界が疲弊してしまうこともあります。

 様々な規制緩和が検討されている今こそ、生産性向上に繋がる規制緩和や制度改革が必要と考えます。当会議所が2017年度に策定し推し進めていく政策の中で、デフレ完全脱却へ繋がる政策を、私どもの委員会で各省庁・各大臣へ政策提言を行ってきました。現在大きなテーマとなっている物流運送業界の人手不足の問題についての取り組みをご紹介します。

政策提言 その1~国土交通大臣への提言

 近年では、インターネット通販の台頭により物流運送業の担う役割は非常に大きくなっております。しかし、人手不足、長時間労働、荷物増加などで疲弊し、労働基準監督署から是正勧告を受けている会社もあります。そこで、荷主への取引条件の改善・モーダルシフトの推進・自動車税の見直しなどを関係省庁に対して政策提言を行いました。

石井国土交通大臣への政策提言

石井国土交通大臣への政策提言

 平成29年4月21日、デフレ脱却に向けて生産性向上を促す取り組みの一環で、石井啓一国土交通大臣に提言書を手渡しました。提言内容は以下の通り。

(1)モーダルシフトの推進

提言「鉄道貨物量を増やした荷主に対し、減税措置をする」
モーダルシフトについて、トラック輸送から鉄道貨物や内航海運へのモーダルシフトは、環境への配慮だけではなく、物流事業者が直面する担い手不足を緩和する取組みとして注目されているところであり、今後、推進していくためにも、官民の連携による継続的な環境整備が欠かせません。モーダルシフトが推進されれば、トラック事業者の運転手担い手不足も緩和されます。

(2)自動車諸税の見直し

提言「物流・ライフラインを支える重量車課税の強化を見送る」
自動車諸税について、国際比較すると自動車関連諸税は高く、重量車の車体課税は乗用車に比べて軽減されているが、今後基準が厳しくなることがあれば、物流・ライフラインを支えるトラック・バス事業者への影響が大きいためです。

(3)運転手の人手不足解消へ向けた荷主への規制強化

提言「荷主に対する過剰サービスを防ぐため、取引条件の改善を推進する。荷主は運送以外のコスト負担を契約上明確化する」
荷主への規制強化について、トラックドライバーは長時間労働など、若者の就職先として不人気で、高齢化やドライバー不足が起きています。不足を既存のドライバーで乗り切ろうとして、さらに労働時間が長くなるという悪循環に陥っています。荷主に対する過剰サービスを防ぐことにより、運転手の人手不足が解消され、生産性の向上が見込めると考えます。

 石井啓一国土交通大臣は「物流業界で働くことを魅力あるものにするとともに、業務の効率を高める必要がある。モーダルシフトも一つの手法だ」と述べ、理解を示しました。物流業界の現状について、当会議所の青木照護会頭は「渋滞時間が長い。2015年の高速道路の総渋滞時間は2億時間で、年10万人の労働力に相当する。特に運送事業で利益を逸している。渋滞の緩和は生産性向上やデフレ脱却につながる」との考えを伝えました。

 その後、平成29年7月28日の閣議決定の「総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)の概要」の「物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現」の項目に、

  • 運送(運賃)と運送以外(料金)の区分の推進
  • 契約の書面化、多重下請構造の是正を通じた取引の透明化
  • トラック予約受付システム等の活用による荷待ち時間の短縮

として明記され、強い産業構造創出委員会の提言が反映されました。

政策提言 その2~国家公安委員長への提言

 平成29年11月17日、小此木八郎国家公安委員長へ「生産性向上へ向けた道路交通法関連制度改革提言」を手渡しました。物流運送業関連の生産性向上を目指すには、道路交通法の制度改革は一体として捉えなければならないと考え政策提言を行いました。提言内容は以下の通り。

(1)免許制度の改正

提言「普通自動車免許を取得するときに、貨物輸送科目を設け普通自動車免許で、8トン車までの車両を扱えるようにする」
免許が細分化することにより、物流業界の人材不足を加速させていると考えています。普通自動車免許を取得するときに、貨物輸送科目を設け普通自動車免許で、8トン車までの車両を扱えるようにすることを提言しました。これにより、物流業界の人材不足が解消され、生産性の向上が見込めると考えます。

(2)郵便物配送の駐停車禁止の見直し

提言「配送に関する駐停車禁止の見直し」
駐停車禁止の除外を受けるためには、法令等に基づき公安委員会の許可を得る必要があり、郵便法に定める通常郵便物の集配は認められるが、その他の郵便物は認められない。民間企業の配送と日本郵政の配送に不平等が生じていると考えます。配送に関する駐停車禁止の見直しについて提言しました。これにより、配送にかかわる企業の公平性を担保することで、サービスの品質(価格含む)向上が期待され、それにより生産性の向上に繋がると考えます。

(3)高齢者の運転免許の規制強化

提言「75歳以上の運転免許の更新を厳格化する。また、高齢者の自主的な免許の返納を促すため、交通インフラ整備を促す」
免許返還の年齢が法で定められてなく、高齢者による事故が多発しています。高齢者の事故減少を目的として、75歳以上の運転免許の更新を厳格化する。また、高齢者の自主的な免許の返納を促すため、交通インフラ整備を促すことを提言しました。これにより、事故の減少と、インフラ整備を加速させることにより、付随する産業の発展が見込めると考えます。

(4)一般道路の速度規制の緩和

提言「渋滞緩和と、生産性向上のため、一定の条件をクリアできる一般道路に関しては速度規制の上限を緩和する」
渋滞により、物流業界をはじめ、生産性の向上の足かせとなっています。一方、車の性能・安全性が向上する中、速度改正が進んでいない現状があります。そこで、渋滞緩和と、生産性向上のため、一定の条件をクリアできる一般道路に関しては速度規制の上限の緩和を加速させていくことを提言しました。これにより、物流をはじめ、利用車両の多くが走行時間の短縮ができ、生産性が向上すると考えます。

小此木国家公安委員長への政策提言

小此木国家公安委員長への政策提言

 免許制度の改正や一般道路の速度規制の緩和など、小此木委員長との考え方も一致しており、「安全第一が大前提で、細かい判断は各地の事情により地元の警察に委ねるかたちになるが、生産性向上も重要。検討していく」と前向きな発言をいただきました。

今後について

 「業界団体などによる営利を目的とした陳情が溢れる昨今、青年会議所として公益的な立場で本年度、政策提言することの大切さを痛感しました。人口構造の変化で人手不足が深刻化するのは確実です。生産性向上への取り組みは企業だけでなく、国として制度を見直す事も重要です。本年の取り組みが“強い産業”を創出することに繋がればと思います」(強い産業構造創出委員会 福光太一郎委員長)。

公益社団法人 日本青年会議所とは

 20歳から40歳の約35,000人のメンバーが在籍しております。青年会議所の会員は、OBも含め各界で社会に貢献しています。たとえば、国会議員をはじめ、知事、市長、地方議員などの多くの人材を輩出しており、日本のリーダーとして各地で活躍しています。本年度は「世のため人のためが自分のため」という未来への投資を基軸として、「教育再生と経済再生による誰もが夢を描ける日本への回帰」を基本理念として運動を展開しています。

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