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“ルールメーカー”トランプ・アメリカとの共生の探求(後編) (2017/4/4 松下政経塾36期生 深作光輝ヘスス)

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日米首脳の蜜月は何を意味するのか

 ドイツのメルケル首相がホワイトハウスを訪れ、トランプ氏に握手を断られた映像は特にヨーロッパにおけるトランプ氏への不信を強めるきっかけになったのではないか。トランプ大統領就任から2カ月が経ち、メキシコとの関係悪化に始まり、ヨーロッパでもアメリカに対して険悪な空気が広がっている。選挙戦当初から、もしトランプ氏が当選したらアメリカは自国の利益のみに専念し、多くの国と険悪な状況になるのではないかと心配されていた。現在のヨーロッパでは残念ながらその心配が現実のものとなっている。他方で、日米は大方の予想に反し、良好な関係を築けている。

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 2泊3日、大統領専用機、18ホール+ハーフのゴルフ、2度の夕食と異例尽くしの日米首脳会談は首脳同士の良好な関係を示し、両国の結束を内外に示すことに大きく貢献した。

 日本国民も70%以上が日米首脳会談を評価すると回答し、帰国後の安倍総理の支持率は前月より2.1ポイント増え、一時的に61.7%となった。今後世界各地で行われる国際会議では必ず首脳会談を行うという約束も取り付け、日本のアメリカに対する影響力が今まで以上に大きくなる事が予想される。

アメリカ連邦議会議事堂

仲介にとどまらず積極的に役割を果たすべき

 日米関係が良い状況にあるということは、今後も世界的に大きな影響力を持つアメリカと各国の仲介役として日本が一役買う環境が整いはじめたことを意味している。日米関係が良好であることはアメリカとの関係に摩擦を抱えている、または抱える可能性のある案件に関し、日本を介することで円滑に事を進めたいとする国が出てくることは想像に難しくない。

 現にヨーロッパを歴訪した安倍首相は日独首脳会談において日米欧の経済連携の必要性について言及するとともに、メルケル首相との共同記者会見の場において「アメリカのリーダーシップを期待する」と発言し、米独間の緩衝の役割を果たし始めている。

 欧州内ではこれまで対米関係を重要視してきたイギリスのメイ首相はどの国よりも早くワシントンを訪問したが、同国はブレグジットによる欧州内のプレゼンス低下により、欧州と米国間の架け橋になることが難しくなっている。

 また、アジア太平洋地域に目を移すと、オーストラリアのマルコム首相とトランプ氏の電話会談が険悪な雰囲気となり関係が悪化、また韓国についても大統領が罷免され国内政治が混乱している状況下で北朝鮮の挑発的なミサイル発射が続き、ミサイル迎撃システム配備により対中関係も悪化。対中、対露関係に加えて北朝鮮、米豪の不和、韓国の空白と地域の不安定要素が高まる中でアジア太平洋地域に大きな影響をもつ米国との良好な関係を築けている国は日本以外にない状況となった。

 そのような中においても、国内政治は国有地売却問題に終始しているように見える。日本の役割、そして地域における責任が高まった今だからこそ、政治や報道で扱われる内容のバランスをしっかりと考えなければいけない時期なのではないか。

 またアメリカにおいても今回の選挙において得票数ではクリントン氏が勝っていたように、トランプ的思考と主流派アメリカ思考(選挙で負けている以上主流という言葉は正しくないかもしれないが)の両者が拮抗しており、必ずしも安定しているとは言うことはできない。このような状況だからこそ、今まで以上に日本が積極的に国際社会における役割を自覚し、自国そして地域の安定を考えなければならないのではないか。

<筆者プロフィール> 深作光輝ヘスス(松下政経塾第36期生)
深作光輝ヘスス

1985年ペルー、リマ出身。成蹊大学経済学部経済学科卒。2009年から2012年、民主党政権下の日米関係が大きく揺れる中、ワシントンD.C.の日本国大使館で在外公館派遣員として3年間勤務。大使に同行し、オバマ大統領、クリントン国務長官(いずれも当時)等米側閣僚との会談にも同席。盤石な外交基盤を作るには長期的国家ビジョンを掲げた上で外交に携わる必要性を強く感じ松下政経塾に入塾。

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